御伽噺のようなプロローグ
昔々ある所に……1人の少年が居ました。少年の名前は『レイジ・スギヤ』。とある世界『シェーン』では珍しい黒髪黒目、そして義手と義足を持つ事以外は特に目立たない少年でした。
その傍らに寄りそうのは、輝く銀色の髪を持つ1人のメイドです。彼女は少年のメイドとして、多彩な魔法を使い少年を支えていました。
ある時、少年は『守護神獣』と呼ばれる、街を護る獣の姿をした神と出会います。守護神獣の言葉にメイドは少年の傍を離れてしまいましたが、少年は必死に追いかけ命を懸けてメイドに想いを伝えました。
こうして少年とメイドは結ばれたのです。彼と彼女の絆はとても深く、並大抵の物では裂けない物となりました。
少年は4柱全ての守護神獣と出会い、勇者としての資格を得ました。けれど、少年自身は勇者として大切な物を守り抜く実力は無いと思っています。悩んだ勇者は過酷な環境と、尊敬する先代勇者が修行してもらったという師がいる場所へと赴きました。
様々な試練を乗り越え、少年は大切な物を護る為の実力を手に入れました。その間に少年とメイドの間には愛の結晶と言える、1人の子供『ユウキ・スギヤ』を授かっていました。
ある日、彼が住む街に勇者と反対の存在『魔王』が、軍を派遣して攻撃を仕掛けました。少年は先代の勇者や街の騎士達の力を借りて、何とか軍を退けました。
これ以上大切な存在の傍で戦いたくない少年は、メイドと2人で魔王城向かいました。魔王の部下である四天王を倒し、魔王の元へ辿り着いた少年。待ち受けていたのはハッピーエンド……ではありませんでした。
最愛のメイドの体は魔王に奪われ、少年を逃がす為に先代勇者は行方不明になり、何とか魔王城を脱出した少年。守護神獣に頼ろうとしましたが、彼らは世界の平和の為に……魔王をメイドの体ごと消す事しか考えていませんでした。
どうしても最愛のメイドを救いたかった少年は、勇者の地位を捨て、守護神獣を敵に回し、思い出の街を離れ……何もかもを捨てて、メイドを救う方法を探す旅に出ました。
これが15年前に存在したという勇者の御伽噺……彼は歴代の勇者の中で、この世界の創造神『シェーン』様を裏切った唯一の勇者とされています。そんな勇者を臆病者と忌み嫌う者は居ますが、それ程にメイドを愛している愛深き勇者と慕う者も少なくはありません。
「何が愛深き勇者だ……俺と義母さんを捨てた癖に……!」