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インプランタの魔女  作者: 透坂雨音
第四部

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第30話 監獄からの脱出



 してやられた方……小さな姉妹の姉が、口を尖らせながらもフェネリーに向かって確認の意味をこめてある事を尋ねる。


「フェネリー……。分かっているんでしょうね。ここを出たらもう普通の日常には戻れなくなるわ、本当に良いのかしら」

「うん、だってボクはクゥ様を助けに来たんだもん、ここまで来てボク達だけで帰るなんて考えられないよ」

「しょう……」


 けれど、もうすぐ辛い場所から出られると言うのにクゥの顔は暗い。


「ここを出たらきっと追手が探しに来るわ。橋のとこにいた怖い奴が、何体も探しにくるかもしれない。どこに逃げてもきっと永遠にじゅっと追いかけてくるの。しょれでも良いの?」

「うん、それでも。だって、ボク、クゥ様の事が大事だから。初めてできた友達なんだもん」

「分かったわ……」


 そう、その言葉だけはフェネリーにはっきりと言えた。

 ふぇねりーにとってクゥと言う存在は、他と代える事ができないかけがえのないもの。


 フェネリーの一番の存在で、無くすことなど考えられなかったのだ。


 その決意表明に、小さな魔女はそっと口を開いた。


「……あ、ありがとう」


 ポツリと呟かれた言葉にフェネリーは、一瞬空耳かと思った。

 さらに、耳を疑いそうにも。


 だが、聞き間違えなどではなかった事を証明する様にスフィアが嬉しそうにしている。


「姉様ったら、相変わらず素直じゃないんですから」


 小さな言葉だが、それはクゥのものだった。

 クゥががお礼を言ったのだ。


「クゥ様……」

「い、行くわよぼしゃっとしてないで、さっさとここから出ましょう」

「うん!」


 そんな二人を離れた所で見つめるフェネリーは何やら娘の成長を見守る母親の様な声音で「姉様、あんなに良い友達ができて」と感慨にふけっていた。

 それは、フェネリーの姉ユーリィが妹を思うそれにとまったく同じ感じだった。


 ややあって、何事もなく門の所に辿り着く。


「けれど、妙だわ」

「妙ですね」


 しかしクゥとスフィアは、何のトラブルもなくここまで来れたと言う事を、今の状況を不審に思っているようだった。


 二人は小声で何やらフェネリーには理解できない事を話し続けている。


「聖霊が出て行こうとしているのに、こんなにあっさり上手く行くはずが無いのよ。ゲートが機能しているなら、どこかでひっかかってもおかしくわなかったわ。だって私今まで一度しか脱走できてないのよ?」

「そうですね、ここの狩人さん達である聖霊なら魔女である姉様があの結界から出て来たらすぐに追いかけてくると思ったんですけど……、ゲートの機能が停止している? 結界が……一体どうしてでしょう」


 フェネリーが聞けば、監獄には内部から出ていく聖霊だけを外に出さないためのもの……ゲートという、透明な力の壁の様なものがあるらしいのだが、それが機能していないらしいのだ。


 原因は不明。

 スフィアやクゥにも推測できないと言う事だ。


 そんな風に話し込んでいると、ふいに周囲が慌ただしくなった。


 まさか自分達が見つかったのかと、フェネリーは慌てるのだが周囲の様子をみるに、どうもそういう事ではないようだった。


 動いている者達、声を張りえげる者達は、ここにはいない誰かの事で騒がしくしているようだった。


「リリアンミジェットが、反逆者が逃げたぞ」「逃がすな」「追え!」


 彼らは口々にそのような事を言いながら施設の中を駆けまわっているようだった。

 内部からは、戦闘が行われていると思わしき音も聞こえてくる。


 やり取りを聞いていると、どうにもリコットが何かをしている様にしか思えない騒ぎだった。


「監獄の機能を停止させられた」「ほかの囚人達が逃げるかもしれん」「警戒しろ」


 慌ただしく動く兵士達の間で、その場にいる三人は顔を見合わせる。

 戦闘音はやむ事が無く、それどころか時間を追うごとに激しくなって、フェネリー達の方へと近づいてきているようだった。


「リコット先生が反逆? 一体どうして」

「一体、どういう事でしょう……?」

「あの馬鹿、騙されたわ」


 何も分からないフェネリーやよく知らないスフィアに変わって、クゥはその行動の意味が分かるようだった。


「最初から、私達を逃がす為に囮になるつもりだったのよ」

「そんなっ!」


 フェネリーには信じられなかった。

 つい先ほど見たリコットの態度は、面倒事には巻き込まれたくないとしか思えないものだったからだ。


「門の方に逃げたぞ!」


 やがて、大勢の人の足音と声、そして戦闘音が近づいてくる。

 遠くに見慣れた姿が見えた。それはリコットだ。


「リコット先生を助けなきゃ」

「やめなしゃい。あの馬鹿の苦労を無駄にしゅるつもり。リコットは、扉を開けて私達を無事に逃がす為に、追われながらもここまで来たのよ」


 クゥの言葉に、スフィアが得心の言ったように声を上げる。


「あ、そうです。この扉聞いた事があります。確か、人の出入りを制限しているから、一日に一回以上出入りできないんです」

「えぇぇっ!」


 そこまで言われて気が付く。


 普通にしていて門が開くのを待っていたら明日までかかるという事を。


「そんな事になったら、いくらなんでも魔法がとけちゃうよ」

「しょうよ。だからリコットは、二回門を開けて私達だけを逃がす為に、騒ぎを起こしたの。あいつの思いを無駄にしたくないのなら大人しくしてなしゃい」

「そ、そんな……」




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