表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

第1話

 本編は1960年代後半が基本的な舞台です。

 そのため、女主人公のサラは20代前半で、姉のアラナは30歳前後です。

 アラナ姉さんは、私と違い、よくも悪くもカサンドラ母さんの実子である。

 だから、カサンドラ母さんも、アラナ姉さんの子どもマリーへの支援等を(私にはそんなことはない、と否定はするものの)惜しむことはなかった。

 そして、カサンドラ母さんの支援から、アラナ姉さんはマリーをそれなりに上流階級の集まる幼稚園に入れることができた。

 そこで、起きた表面上はちょっとしたトラブルが、アラナ姉さんが壊れた発端だった。


 アラナ姉さんは、当時、自分から希望して、スペイン空軍から予備役に編入されており、スペイン空軍予備役中尉という現状にあった。

 そして、結婚前、アラナ姉さんは西サハラに軍人として派遣され、モロッコ等に支援された反政府ゲリラが跋扈しないようにと平和維持活動に励んでいた。


 旧式化した日本製のレシプロ戦闘爆撃機「雷電」を操縦して、アラナ姉さんは、何度も出撃して、西サハラにおいて反政府ゲリラに対する攻撃を加えた。

(その中で、ピエール兄さんとアラナ姉さんは出会い、愛を育んで、結婚に至るのだが。)

 優秀な戦闘爆撃機機乗りの一人として、アラナ姉さんは受勲されて、予備役軍人生活に入れた。


 でも、それは裏返せば、反政府ゲリラを大量に殺戮することで得られた勲章だった。

 アラナ姉さんは、西サハラの戦場にいた際には、この事について、余り良心を痛めなかったようだ。

 何しろ周囲は、そんな軍人ばかりなのだ。

(ちなみに、私が聞いた話だと、アラナ姉さんは少なくとも100人は殺したらしい。)


 だが、ピエール兄さんと結婚し、家庭生活に入ると、アラナ姉さんの周囲には、そんな軍人は基本的にいなくなってしまう。

 アラン父さんやピエール兄さんがいるのに、と私には思わなくもないが、やはり、陸軍と空軍の違い、更に男女の微妙な違いがある。

 そして、私から見れば、あからさまな差別だが、女性なのに戦場に赴いて、人を大量に殺すなんて、という色眼鏡で、アラナ姉さんは幼稚園で同じ園児の母親から見られてしまったらしい。


「あの人、西サハラで反政府ゲリラに対する鎮圧活動に参加していたそうだけど、殺したゲリラの中には女性や子どももいたそうよ」

「本当に怖い女性ね。大量に血に塗れ、人を殺した手で、よく子どもが抱けるものだわ」

 アラナ姉さんが近くにいるとは気づかずに、そんな陰口を言う人達がいて、その陰口がアラナ姉さんの耳に入ってしまった。


 アラナ姉さんが強くて、そんな陰口を無視できれば、良かったのかもしれない。

 だが、アラナ姉さん自身、戦場を離れて暫く経ち、自分の子どもを抱く際に、かつてのことを思い返しては、後悔していた。

 言った人達は軽い気持ちで言ったのだろうが、アラナ姉さんの心は深く傷ついた。


 更に悪いことに、ピエール兄さんは、当時、アフリカのナイジェリアか、コンゴかの平和維持活動で派遣されており、家にいなかった。

(この辺り、私の記憶も微妙になってくる。

 アフリカや中東各国での紛争鎮圧の平和維持活動は並行して幾つもあったからだ。

 ピエール兄さんが亡くなった今となっては、正確を期そうとすると、それこそ軍の機密資料を直接に当たるしかない。)


 幼稚園からマリーを連れて帰宅したアラナ姉さんは思わず、目に入ったワインを一気飲みした。

 最初はグラス1杯だったという。

 だが、それがアラナ姉さんの転落の始まりだった。


 悪いことに使用人が監視していれば良かったのだろうが、当時、アラナ姉さんは、子ども2人を育てるくらい、使用人無しでも大丈夫として、使用人もいなかった。

 確かに両親の家は近くだから、普通に考えれば大丈夫と言えば大丈夫だったのだが。

 そして、当時の私は海軍士官学校の寮に入っていた。

 ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ