どんな過去でも語ってやろう
7月1日、ほんの7時間ほど前まで6月だったってのに既に暦の上ではJulyとなっていた。
昨日は結局のところ中二病全開で妹に付き合ってしまい寝たのはすでに今日のことだ、だが安定して春澤家の朝は早くまったくもって寝れていない。
ビリビリと六月のカレンダーを破り捨てる音がする、見れば彩葉が家中のカレンダーを破り捨てていた、何故か家には大量のカレンダーがあるのだがその中にはスポーツ選手やアニメキャラが乗っているようなものは一切なくよく見る365日分の日めくりカレンダーと場所を食う月巡りカレンダーだけだ
そいえば昨日は帰ってきてから妹が自分の部屋のカレンダーに何やら7月の予定を書いていたようだったがあまり知りたくはない、どうせ知ったところでまた悲しみに打ちひしがられるしかないのだ
「おい、朝ごはん食べないのか?」
目の前には俺が用意した朝ごはんが1人分余っていた
「いいよ、昨日の夜から12時間の断食に入ってるから」
「いや、お腹減るだろ、食べてけよ」
いやほんとなんだよ、なんの意味があるんだよそれ、ていうかそれで授業中にお腹なったりしてバカにされたらどうするんだよ、その時はバカにしたやつを1人ずついじめていく
まてその前にだ、朝ごはんを俺が食べさせてないとかそんなことになりそうで怖い
「じゃあ先いくね、行ってきますお兄ちゃんも必ず帰ってきてね」
いやだからさ何故出ていくたんびにそれを言うのかな、俺はなんと言い返せばいいのかな
というか弁当は持っていくのかよ、まぁ今日は中学に行ってから鬼教師開田に怒られなくて済みそうなので安心した。
俺と違ってよく出来た妹は中学の中でも信頼されてるようで、生徒会に所属している、何故中二病で生徒会に入れたか知らないが嫌われていないという事実だけでもとてつもなく安心できる。
もし、強制的にいやな役を回されたのならば生徒会ごと呪い殺さねばならないので困る
結局余ってしまった朝飯は夜に俺が食べるとしよう、ラップをして冷蔵庫にいれてから自分の使った食器を洗うと俺は家を出た。
いつも電車はマスターと一緒になる、わざわざ混んだ朝の電車で近ずいて話をすることはない
電車を降りて学校へ向かうとすぐに川が見えてくる、憧れる都会の川とは違いこの街には河川敷など存在しない、ある意味ほんとに都会の川だ。橋を渡り無駄に待ち時間の長い信号を待っていると後ろからマスターが追いついてきた。
「憂人おはよう」
おはようと返事をし返すと何故かマスターは彩葉の話を始めた。
変わらないなと言われたがその通りだ
「にしても良樹のやつは何だったのかね」
「仕方もないだろ可愛いのだから、気おつけておいた方がいいぞ」
お前が言うな、マスターよとてつもなく犯罪者っぽいぞ
などと話してるうちに信号がやっと青になった、まっすぐ進むとちょっとした坂が見える、学校の前にはあってもなくても変わらないくらいの約20メートルくらいの坂がある。
下駄箱に靴を入れると教室の違うマスターは1年2組の教室へ向かっていった、俺は1年7組の教室へ向かうと隣からは選挙カーのようにうるさい那由他くんの声が聞こえる
「それでさ玉山高のやつがそいつに告ったらしいんだけどさ・・・」
と、近くにある男子高のやつがどうやら東欄の美少女に告ったという別になんの興味もない話をしていた。
教室に入るといつもクラスの半分より少しばかり少ないかというくらいの人間がいて、もちろんその中に良樹がいるのだ
「憂人1時間目」
何?という言葉すらをはぶいてきやがった、えっと1時間目は、何だったっけか、って数学か
数学だぞと答えてやると
「あーまぁーそうか」
と、ひとりでなにかに納得していた
おそらくこの高校の数学に関しても良樹からすればレベルが低く、しかしほかの教科よりかはましかとそう思ったのだろう(特に体育でなくて)
いつものごとく理解できない授業を受けていた、あとで良樹に教わろう
2時間目が終わったあたりにななみんが入ってきてこう尋ねた
「妹さんが学校に来てないらしいんだけど、今日は風邪かなにかでお休みなのかな?」
え!?俺は朝起きると別の世界にいたようなそんな表情をしていた。
確かに妹は、彩葉はいつものごとく家を出て学校へ向かった、はずだ
朝から断食がどうのと話していたのは間違いなく今日のことでその後玄関から出ていったのも間違いなく彩葉だった
と、なると学校へ向かう途中で何かあったか、あるいは何らかの理由で学校に行っていないかの二択だった
流石に彩葉でも中二病がどうのな理由で学校を休むわけがない、となると深刻な理由だと思えてくる
「風邪じゃないの?・・・それじゃ落し物でも拾って交番に行ったのかな?」
段々と深刻になっていく俺の表情を見てななみんは大丈夫だよといわんばかりにまだ残っている可能性を答えてくれる
でもだ、俺はたったひとりの兄としてここで黙っておくわけにはいかないのだ、もし俺の考えてるような事じゃなかったとしても多分行かないと後悔する気がした。
俺は生まれつき大人しい子供だった、幼稚園に入り少しばかり明るくなったのだが、弱々しくネガティブで内気な性格は変わらず小学校3年生にもなると物の見事にいじめられていた、友と信じていた人間すらもが自分を馬鹿にし、陰口を叩くのが聞こえてくる
今でも思うが別にそのままでも良かったのだそんな連中と仲良し小好しやる必要は無い、でも俺はその怖がりな性格ゆえに一人でいることに耐えきれなかったのだだからいつの間にか友達を作るために今のキャラクターを作っていた、すなわち今ここにいる自分は自分ではないのだ、でももうあの時の自分には戻らないだろうすでに今の自分が染み付き演技でもなんでもなくなっている、この計算し尽くされた馬鹿みたいなキャラクターはすでに俺自身に移り変わって人生を過ごしているのだ。
おかげで中学の時には友達もできたし今もこうやってマスターや良樹達と一緒にいるのだが、あれは小学校5年生の頃だったか
俺は陰湿ないじめくらいなら耐えきれるまでになっていたのだ、だがその日は宿泊学習のグループ分けの日だった。
俺は2日間もこんなヤツらと一緒に事実上の一人で過ごすのかと考えるととても嫌になった、だからその日は朝から家を出て学校へ向かわなかった。
俺は学校とは反対方向の公園に向かった、行く途中で気づいたのだが切り捨てて初めて気づける寂しさがあり再度孤独なことを実感した、過去を振り返ると思い出すたびに涙がこぼれてきたものだ、悲しかった、辛かった、孤独だった、もはや何もかもが嫌になった、
心なしかまだ秋の公園は肌寒かった、丁度選挙を行っていた、ONE FOR ALL ALL FOR ONE 選挙カーはそんなことを言っていた気がした、自分とは全くもって関係の無い言葉だった、みんなは自分のために何かをしてくれるわけもない助けの手など伸びてこない、なのに何故自分は誰かのためにならなければいけないのかなどと考えていて気づいたのだが、人は誰か1人を生贄に捧げて敵とみなすことでより強く結びつくのだ。
俺はみんなが友達でいるための生贄なのだと、それはもしかしたら 一人はみんなのために、なのかもしれない、とそうおもった
ブランコにひとりで乗っているといつしかまだ小さい頃には両親に背中を押してもらっていたことを思い出した、自分はすでにそんな年齢でもなくソレはすでに無くしてしまったものなのだと思った。
何時間たったか分からなかったが、ふと声が聞こえた、それは間違いなく自分の名前を口にしていた、普段は親と妹と先生ぐらいしか使わない名前だった、がしかし今それを呼ぶ声は大人や妹の声ではなかった
「憂人!!みんなーいたぞぉぉ」
と、そう俺の前に現れてみんなを呼んだのは同じクラスの男子だった、たちまちにみんなが集まってきた
それを見た瞬間に理解出来た、先生が親に連絡して俺が来ていない理由が不明確だったため皆が心配したのだと、そして遅れてきた先生は皆に来ちゃダメと言ったでしょとそういった、まるでドラマのような友情物語、
・・・ふざけるな、お前らはことごとく俺をいじめてきた人間だ、いってしまえば今俺がここにいる原因なのだ、何故そんな人間が俺のことを向かいに来る、
「さぁ帰ろうぜ」
と、ジャンプの主人公キャラのような明るい笑顔で手を差し伸べてくれたのはもちろん俺の敵で
俺は、もうこの世界がどれほどに酷いものかを理解した、俺の自由意志などないと理解した諦めたのではなく呆れた。
一気に悲しみは怒りに変わったとても腹立たしく目の前の笑顔を踏み潰したくなった、こんな世界は拒絶してやるとそうおもった、
が、しかし俺はそうしなかった、そう出来なかった、怖がりゆえにその差し伸べられた手を無視することが出来なかった、結局、何一つ自分の思うようには出来なかった。
そして、結果、俺はここにいる訳だ、とあるラノベの主人公を俺は尊敬している、多分だが、あの時別の決断をしていれば俺もあのようになれたのだろう
でもだ、妹が一人でいるのならば俺はそれを許さない、あのような孤独をもしも味わっているのならすぐさまに助け出してやる
「ちょっと探してきます」
俺はそう言うと教室を飛び出して言った、月が変わり一気に夏に近づいた今日はまだ梅雨だというのに快晴の天気だった。
クラスの奴らは何事かと驚いていたが良樹が大丈夫だといってくれた、しかし俺は大丈夫だと思わない、あいにく心の奥底に残ってる心配性の怖がりな自分が足を動かしていた。