1話 今から俺が主人公になってやろう
いつものように授業をして飯を食ってまた授業、午後の授業は実に眠い、てか数学は暇すぎていつでも寝てしまう、だって分からないんだもん
「はーやっと終わったァァ」
「はぁー本当簡単すぎてつまらんな」
授業が終わり腕を高くあげ全力で背伸びをする。それに対して良樹もため息を漏らすが俺とは意味がまるで真逆だ。
「どこが簡単なんだよ」
一応言っておくがここは県下トップクラスの進学校ですよ、それでも簡単ならお前を満足させられるのは東大やハーバード大ぐらいだよ。
長かった6校時目の数学が終わってからSHRが始まる間に俺はマスターや良樹に声をかけた、例の作戦を実行するためだ。
そして放課後
「ここが、俺の、俺の、、、、よっしゃ!」
俺は放課後すぐにB棟3階国数準備室の前にいた。
中に入って待っていると奴らがきた
「さぁ、座ってくれ、始めよう」
始まる、今から始める
「今ここに、我々の部活が誕生した!!」
そう、俺は部活を作ったのだ、
「よっしゃーーーー」
良樹とマスターがあっそ、はいはい、と面倒くさそうに答える中たった1人喜んで馬鹿みたいに叫んでるのが小野石那由他だ、
小野石那由他はとても良い顔立ちであるが、それを叩き壊すほどに他人の迷惑になるような声の大きさで喋り俺により一層の不快感を与える。
うるさい、何でこんなのが俺より勉強できるんだ、あ、勉強が出来るのと頭がいいのは違うからね、俺はこいつより頭はいいはずだ、じゃないと死にたくなる
第一なんだよ那由他ってナユタだよナユタ、ないわーないわー、ちょっとカッコいいけど
「大体さ、部活を作ってほんとに意味あるんですかねぇ」
那由他が騒がしく喜ぶ中で常識的なツッコミを入れてきたのが若杉京太郎だ、あだ名は太郎、もうあだ名でも何でもないしな、こいつは特になんもない普通だ、恐ろしい程に普通だ、あ、ちなみに同じクラス
若杉京太郎は那由他よりも2cmばかり高い身長でメガネをかけている、しかしそのメガネはあまり目立つことはなく頭がいいようにもスポーツができないようにも見えない。
「当たり前だろ、いるに決まってる、俺の人生というアニメが始まらない以上自分から掴みに行くしかないだろ」
そう俺は、全くもって変わらない、このつまらない日常を改変し、理想の高校生活を手に入れるために行動に出たのだ。そしてこの手のアニメでは主人公が必ずなんだかよく分からない部活に入ってるものだ、だから俺は自分で部活を作ることにしたのだ。
部活を作るのはアニメと違ってかなり難しいものだった、まず5人の最低人数を集めるお決まりパターンは現実でも変わらなかったが6月半ばに部員募集とか無理がある、みんなもう何らかのクラブに入っていて余った暇人の中から良い人材を見つけ出すのは難しいものだ、俺、良樹、マスター、太郎、そして仕方なく人数合わせのために入れた那由他を入れて5人。
活動場所の確保、部室を獲得なんてそんなことこの現実世界では出来るわけもなく放課後に自由に使える部屋を探すので手一杯だった色々頑張った結果この国数準備室を手に入れたのだ。
この異常なまでにも勉強熱心な県立西崎高校にはいろんな部屋がありその中の一つが生徒会室のすぐ上にあるこの部屋である、今のところ授業で使うことはない、なのに最初は「ここ使っていいですか?」「ダメ」と即答で断られていた、何でダメなのいいじゃんだってこの部屋使ってるのまじでみたことないよ
俺はてっきり生徒に見られては困る何かをここに隠しているのかと思っていたがそうでは無かったらしい、実際ちょっとした資料ぐらいが置いてあるだけの何の変哲もない部屋だった、残念、いや待て、まさか、俺が使うと決まってから学校側が隠蔽したんじゃ、
「ねぇー憂人ってばぁー早く活動しようぜ」
なお那由他は話しかけてくる。
「いいからお前は黙ってろ」
「いやてかさ、これ、なんの部活なの」
お、そうだったまだ言ってなかった、那由他がうるさいでついつい現実逃避をしてしまった。
「よく聞いてくれた太郎よ、この、我らの部活動の名前は」
一同が緊張した面持ちで俺を見る中、全力でカッコつけて俺は部活名を口に出した
「歴史同好会」
「...は?」
俺の言葉の後すぐに静まり返ったその場に言葉が戻るまで2秒、しかし出てきた言葉は四人が口を揃えて「は?」おい、ハモるな予定通りでも厳しい反応
「ですよねそうなりますよね、でもね、仕方が無いんです、この現実世界でほんのちょっと変な部活を作ろうものなら先生は全力で止めに来ますし、いやでもさ、このある意味頭がおかしい学校には怪しい部活あるじゃん、世界部族研究会だったか、その他に物理部や化学部、数学同好会とか、他にもたくさん、とにかく勉強熱心な部活が多く存在する中で新しく同好会作らせてくださいなんて言えるのは歴史同好会くらいだったんですよ」
まぁ名前なんてどうでもいい、いやでもせっかくならカッコいい名前がよかったかな、アルファベット三文字とかにしたかった、それともカッコいい漢字いくつか並べてもいいかも、でも残念、歴史同好会でした。
「とにかく、俺らの部活が出来たわけだ」
「・・・」
「・・・」
アレ?なんだっけ?なんて言おうとしたっけな?あ!あ、あ〜そうか、勢い余って興奮気味に喋ってて忘れてたけど、何も考えてないじゃん
「どうした?まさかこの先何も考えてないのか?」
「・・・」
良樹に言われてはぐうの音も出ない、
「なんも考えてないのかよ」
「うるさい、黙れ」
とりあえず那由他は腹が立つので殴り倒しといた、グはぁっとか言いながら倒れたから結構なダメージが期待できる。
嫌だってさぁ〜とりあえず作ればなんとかなると思ったんだもん、トリガー引いたら銃の弾は出るんだから、あ、これはトリガーじゃないのかな、あ〜なるほどね
「よし、今日は帰ろう、明日から本格的に活動を開始する、放課後集合」
結果、先延ばし
帰り道、俺は必死に考えた、が、しかし具体的に何をしたいかとかは別にないし、楽しむったってどうすればいいんだ?
結論、どうにかなるさ
結局、その日は家に帰っても特に何もせず、
次の日を迎えてしまった。
「憂人、おはよう」
「おはよう」
マスターの挨拶で平行世界の彼方に飛んでいた俺の意識が戻る、あ、また、この世界ですかもうほんと異世界行きたいわ、こんな日常嫌だ、よし今日こそ現実変えてやる
「憂人、今日1時間目何?」
「数学」
「そう」
教室に入ると恒例行事が開催された、良樹降臨ダンジョン、
反応それだけなら聞くなよ、体育だとキレて他のなら、そう、ってそれだけかよ。
太郎は朝は大抵寝ている、横のクラスではこんな時間からも那由他が騒いでいた。
なんも変わってねぇー、いや、そりゃそうだけどさ、今まで結構頑張ってきたんだよ、あの、歴史同好会作るために俺がどれだけ頑張ったことか、なのに、まだスタートラインになっただけ、いや、そこにもたどり着いていないのかもしれない、まだ何も始まっていない
はぁ〜
放課後、宣言通り全員集合、しかし特にすることは無かった、
「よし、今日は本部活動いや、本同好会について説明を行う」
「お、マジか、何かそれっぽいな」
「あ、なんだよ早く言えよ」
「考えてきたのか」
「おーお前にしては珍しいな」
那由他、特に無し
マスター、文脈だけ見るとヤンキー
太郎、普通
良樹、ひどくねそれ、俺だって頭使って色々考えてるんだよ
「本同好会は、通常、平日の放課後に活動を行い、テスト期間中は休みとする」
はい、何も考えていませんでした、内容っていうより活動時間だねこれ
「で、」
おっと良樹は先が気になるようだ、だが残念、続きはない。
「活動時間は基本敵には自由に過ごすものとする。」
ほらなんも考えてなくてもどうにかなったでしょ、俺は部員の自由を保証する素晴らしい部長もとい同好会長なのだ。
「おい待て、それ、意味なくね、俺帰っていいか?」
「ダメだ、太郎よ実に単純で短絡的な考え方だな」
マズい、ここで帰られてしまっては帰宅部かそこら辺のやる気のない同好会と何ら変わらなくなってしまう、俺の作った同好会はそんなんじゃない、もっとこう活気のあっていつも楽しい俺らの居場所的なものなのだ。
「活動をしないとは言っていない、まず、放課後この部屋にいるというそのこと自体にも意味がある、そしていつでも活動に入ることが出来る準備をしておかなければならないのだ。」
よし、適当なこと言えたぜ、適して当たると書いて適当、
結局、馬鹿みたいな討論が続いた結果、次の日から5人ともこの部室にいたのだった。
目的不明確な同好会は、毎日この国数準備室で何をするわけでもなく活動している、スマホでマスターはアイドルマスターやってるし太郎は本を読んでるし、良樹はどっかから持ってきたオセロで俺と戦ってる、那由多はそれを見ながら色々喋ってるけど一切耳には届かない。
はぁ〜おいおい待てよどうしよう何も思いつかないや、やべぇーこのままじゃ何も始まらない、俺の高校生活どうなるんだよ、3年間無駄にしない様に頑張りましょう、明日から。