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第10話 ありすん



結論から言うと、拓海の服選びは速攻終わった。

というのも、キングの服装を見れば分かるように狩人というのは戦士や剣士等とちがって重装備ではない為、鎧を買ったりだとかする手間がなく、とても軽装なのであとは拓海の好みで普通の洋服にズボンと下着を買っておしまいだった。

この村のお店には一通りの装備が売っており、あまり人口数の少ないとされる狩人用の装備だったりもあり、アリスが辺鄙な村だのなんだのいうが物は結構そろっているみたいだった。

ちなみに拓海の下着はブリーフ派だった。



「レベル屋も行ったし服も買った、さて次はどうするのかしら?」



と、これからの方針を聞いてくるアリス。

一方の拓海はさきほど確認した事実___目の前の占い師を名乗る少女が実は占い師ではなくて暗殺者(しかもすげえ高レベル)なのだという事実に打ちひしがれて・・・というか結構ビビッていた。

暗殺者が妹を探している、それもアリスの父を殺した犯人を知っている可能性が高いからだというのだ。

ここ、マヒロー村へ来たのは妹の手がかりがあるからと占いで出たから、と言っていた。

だがアリスは占い師ではないではないのだからこれは嘘だということになる。

少なくとも自分で占ったわけではないだろう。それかそういう占いをできるアイテムか何かがあったりとか。

どこからどこまでが嘘でどこまで本当なのか、見極める必要がある。

だがここで馬鹿正直に「あなた、暗殺者なんですね」などと言えるわけでもなく。

当然この事実はキングに相談すべき事柄ではある。だがタイミングが掴めないでいた。


それに___やはり、というか、普通人のレベルや職業というのはわからないものなのだろう。

現にアリスは平気で占い師だと名乗ったし、キングはそれについて何も言わなかった。

拓海だけはなぜか知りたいと思うと頭上にレベルや職業が表示される謎仕様の為にアリスの嘘に気づいたのだ。

当面、アリスには拓海が人のレベルと職業が分かる、ということを伏せておく必要があるだろう。

と、そこまで決めて拓海はアリスに返答した。



「とりあえず、僕と一緒に少なくとも他に30人近く僕のいた世界からこちらへ転移させられたはずなんです。この村で一緒に転移させられた人たちのことも調べておきたいなと思います」



「ふーん、りょうかーい。っていうかなんで急に敬語なの?さっきと同じでふつーでいいよ普通で」



「えっと・・・うん、そう、だね」



思わず敬語喋りになってしまっていた。

当たり前だ、相手は超絶高レベルの暗殺者なのだから。緊張するにきまっていた。

それに元来、拓海は隠し事の類がものすごく苦手だった。



「キングさんもそれでいいですか?」


とりあえずキングへも同意確認をする。



「おう、このパーティーのリーダーはお前さんだ。方針も好きに決めな。俺はお前さんが行きてえ所へついてってやるよ、少なくともお前さんが一人前になるまでは、な」


とのことだった。



「ありがとうございます。それじゃあ村の人へ聞き込みをしましょう」



拓海は正直なところ一緒に転移されたクラスメイトのうち半分は___というか、ほとんど話したことのない人間ばかりだったりする。

それこそ普段から会話するのは菱形修治ひしがたしゅうじと、小田部龍翔おたべりゅうとくらいなものである。

その二人とも向こうから話しかけてくるだけで、拓海から話しかけるケースは少ない。

しかも修治にいたってはほとんどが体の良いパシリだったり拓海いじりだったりする。

龍翔のほうは・・・あれはよくわからないが。なんだかしらないが懐かれてしまった。

だが少なくともその二人の安否と___そして、島村悠那しまむらゆうなが無事かどうか。

それだけでも確認したかった。



「はーい。って私、思いだしたんだけど君を探してるときにそれらしい話聞いたかも」



「本当ですか? 誰が言ってたんですか?」


拓海が聞くとアリスは頬に人差し指を当て首をかしげて、人によってはぶりっこに取られかねないような仕草をした。


「うーんと・・・ああ、確かあの子!!」


と、ちょうど件の人物が近くにいたようだった。

そしてアリスが指をさした先にいたのは・・・。




「たあっ!!とおりゃあっ!ほおっ!!」



広場で先日と同じ姿で木刀を一心に振る、マオだった。





_________







「確かに3日前くらいにおにいさんと同じ格好をした男の人二人がこの村に来たよ」


意外とあっさりと転移させられたクラスメイトの最初の手がかりが見つかった。



「二人・・・その二人はどんな人だった?」


拓海が聞くと、



「えっと、一人が金髪で後ろの毛が長くって、あとネックレスつけてたかな?もう一人はなんか暗い男の人だったよ」



マオはさっきまで素振りをしていたので汗が滴り息も少しあがっていてどことなく艶っぽい感じで答えてくれた。

男の子のような恰好のマオだが列記とした女の子なのだと強く感じさせられる。

身長差で胸元の服の隙間から健康的な小麦色の肌とは対照の焼けていない肌が覗き、素晴らしいコントラストだった。

拓海は少し、いやかなり内心ドキッとした。



「金髪で髪の毛が長い男・・・」



「なんだ、お前さん心当たりがあるのか?」



「はい・・・というか多分、僕と一緒に転移させられた人です。もう一人の暗い人ってのはわからないですけど・・・」



暗い男の人というからには少なくとも修治の属していたウェーイ系のグループの輩じゃないだろう。

クラスのすみっこグループのだれかだろう。



「その人たちがどこへ行ったかは分かる?」


拓海が聞くと、マオは顔を曇らせた。



「えっと・・・その人たちは・・・北の森に行っちゃった」



「ええっ!?北の森って・・・」



「ゴブリンキングの根城のある森だ・・・」



キングが代わりに答える。



「皆止めたんだけどね、なんかどーしても北の森を超えた先に用があるんだって言って・・・。

北の森に行くのならボクも連れてってってお願いしたんだ。

だけど断られちゃった。北の森を通るならかならずゴブリンキングに見つかるよって教えてあげたんだけど、『俺たち二人だけなら見つからずに森を抜ける方法があるんだ』って言ってたんだ」



「北の森を超えた先・・・何があるんですか?」



例のごとくキングに聞く拓海。



「森を超えた先にゃ確かハウリカっつー今は廃墟になってる街の跡があるはずだ。今は人っ子一人住んじゃいねえはずだ」


「廃墟・・・」



「あそこは十数年前に流行り病で街丸ごと滅んだって聞いたことがあるわ。行ったことはないけれど、そんなところへ向かってどうする気なのかしら?」



アリスがキングに補足する。

それにしても魔物に流行り病に魔王がいたり絶賛戦争中だったりと、なかなかこの世界も大変である。



「ハウリカの北には記憶を奪う魔物が暴れてるっつー噂のヘスティ砂漠があるだけだな。砂漠を北へ行くとヘスティランドの最北端のはずだ」



「つまりここより北へ進んでもその廃墟か砂漠しか広がってないんですね・・・」



記憶を奪う魔物っていうのは草原でキングに最初に会ったときに言っていたやつか。

修治はだとしたら本当に何の用事があってそんなところへ向かっているのだろうか?



「会ったのが3日前だっていうならもう森を抜けていてもおかしくないわね。で、どうする?たくみん」


ありすんが拓海へ聞いてきた。拓海は自分があだ名で呼ばれるのがすごく久しぶりだったので浮足立ってしまった。

そんなそぶりを出さないように表向きは冷静な振り。



「・・・そうですね」



確かにクラスメイトの情報は得られた。

マオの話から、彼らも何の目的もなしに森を抜けたとは考えづらい。

そうなると、例えば他のクラスメイトが北にいるという情報を掴んで森を抜けた、というのが一番現実的だろうか。

彼らも魔王を倒せと召喚されたはずだ。その目的のためにというならまずは魔王のいる大陸へ近づこうと東へ向かおうとするものではないだろうか?

やっぱり魔王がどうとかとは別の目的の気がする。



「ゴブリンキングに見つからない方法ってのも気になるな。そいつらは噂に聞く『ニンジャ』なのか?」



「忍者なんて職業もあるんですか?」



拓海が気になって聞くと、キングはうなずいた。



「フリュースルに伝わる職業だ。今でもフリュースルから流れたごく少数が奴らの見込んだ者にだけ職と技を伝授してるって話だ」



「なるほど・・・」



またフリュースルか。

風呂の次は忍者・・・滅んでさえいなければ行ってみたかったのにと思った。


それにしてもよりにもよってキングさえ戦うのは避けたいという相手のいる森を通過したというのか。

見つからない自信というのは十中八九、女神からもらったであろう『能力ギフト』であろう。

どんな能力なのかはわからないが、拓海が貰ったのだ、他の転移者だって貰ってると考えた方が良いだろう。

それをつかって森を抜けたのだろう。

・・・いや、実際のところ、森を抜ける前にゴブリンキングに見つかってしまって___ということだって考えられるのだ。



「・・・ちなみに、キングさんは、僕が森を超えたい、って言ったらどうしますか?」


悩んだ末、判断がつかなかった拓海は、キングに率直に意見を求めた。


「どうするってお前さん、そらあ・・・」


キングは困ったような顔をした後、髪の毛を自分の手でくしゃくしゃーっとした。


「あー、まああれだ、お前さんのお仲間がそっちに行ったっつうんだ。で、お前さんもそいつらを追いたい、そうなんだろう?」


「ええ・・・できれば」


「かあー!わーったよ!!行きたきゃ行きな。さっきも言ったがお前さんがリーダーだ。行き先を決めるのはお前さんだ」


観念したとでもいうような感じで言うキングだったがそのあとただし、と言葉を続けた。



「ゴブリンキングに遭遇したら、一目散に逃げるぞ。無理して森を抜けようとせずに、駄目そうなら引き返す。それは約束しろ」



「分かりました」



それは拓海も望むところだった。拓海だって死にたくはない。



「ありすんもそれでいい?」



「いいわよー。ってありすんってなに?」



これで決まった。

こうして拓海達一行は森を抜け、修治たちのあとを追うことにしたのだった。



勝手に脳内でアリスのCVは後藤麻衣さんで再生しています。永遠の萌えボイスだと思います。



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