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第9話 レベル屋



拓海たくみ一向はマヒロー村のはずれにあるレベル屋へ来ていた。

レベル屋といってはいるが見た目は普通の民家で、それらしい看板なども建っていなかった。



「ごめんくださーい!」



アリスが元気よくレベル屋のドアを開くとそこにはカウンターのようなものがあり、一人の少女が暇そうに店番をしていた。


「にゃにゃ?お客さんにゃ?いらっしゃいませにゃ」


少女の口調も変だったが、よくよく見ると頭に猫耳をつけていた。


「・・・コスプレ?」


拓海はつい思ったことが口に出てしまった。


「にゃ・・・そのこすぷれっていうのがなんにゃのかわからにゃいけど、にゃんだか馬鹿にされたってのはわかるにゃ!」


「レベル屋、俺とこいつの溜まった経験値を振り分けてほしいんだ」


キングがそう申し付ける。


「にゃ。かしこまりですにゃん」


すると少女は後ろを何やらがさごそと漁ったかと思うと、ツボみたいなものをカウンターの上に出してきた。


「私は外で待ってるねーん」


とアリスは店から出てしまった。



「ささっ、つっこむにゃ」



「俺からやるから見とけよ。レベル屋でこのツボに手を突っ込むんだ、そうすると」


といいながら目の前で実際にやってみせてくれるキング。そうすると何やらツボの中が光り始めた。


「おおー、ちょうどレベルひとつ分の経験値にゃ。レベルアップおめでとうにゃ」


すると、キングの頭上にあった数字が55から56に変わったのが分かった。

ここで気づいたのだが、いつも数字が見えてるわけではなく、拓海がその人のレベルを意識して『知りたい』と思うと出てくるのだとここにきてようやく分かった。

まあ普段から人の頭の上に数字が出っぱなしだったらそれはそれで気が散って仕方ないだろう。

そういえばアリスのレベルを見ていなかったな・・・と気づいた拓海だったが、「ほら次はお前さんの番だ」とのキングの言葉に慌ててツボに近付く。



「むむむ・・・!こ、これは・・・!」


と、レベル屋猫娘(拓海命名)の表情が驚きに染まる。


「えっと・・・」


どういうことだろう、と思っていると拓海の手がキングのときより遥かに強い光を放ち始めたのだ。


「おっ!きたか!?」


「えっ、きたって何がきたんですか!?ちょっと、光おさまんないんですけどっ!?」


そしてより一層強い光を放った後、しばらくして光が収まった。



「にゃ!スキルポイントがもらえたみたいなのにゃ。ちょっと待つにゃす」



そういってまた後ろをガサゴソ漁りだす猫女。

そして何やら分厚い本のようなものを取りだしてきた。


「狩人は・・・あったにゃ。ほら、ここの中から好きなのがえらべるにゃん。ちなみにおまえのスキルポイントは2にゃ」



「レベルアップすると超低確率なんだが、スキルポイントっつーのがもらえんだ。条件は良くわからねえがレベルがまだすくねえ最初らへんのがもらえる確率がたけえみたいだな。

んで簡単に言えばそいつを使えば俺の前に言っていた奥義だったり・・・あとはアビリティっつーんだが特殊能力的なもんをもらえる。ただまあ奥義を覚える場合にはスキルポイント1つじゃあ足りねえんだが」


「なるほど・・・そういうのもあるんですね・・・」


またしてもゲーム的な要素だった。


拓海は本の中をざっと眺める。

アビリティ系から、『夜眼』『薬草知識』『観察眼』など続いていく。眼ばっかだな、これ。

他にも後ろの方に進んでいくとさきほどキングの言っていた奥義が載っていた。5つの奥義で、それぞれスキルポイント消費が5となっていた。

拓海が今スキルポイント2だと猫が言っていたので奥義だと少し足りないだろう。

スキルポイントをためて奥義を習得するのもありってことなのだろうが、なにせスキルポイントがもらえるのは完全なる運のようだし、早く強くなりたい拓海としては少しでも実戦向きのものをスキルポイント消費の少ないもので早く習得するのが好ましい。

そう考えて吟味していく。


「迷ってるよーだが先輩狩人から一つ、アドバイスだ。

狩人っつーのはとにかく矢を買うのに金がかかるっつー話をしたな?アビリティのスカベンジャーっつーのを取れば倒した魔物から撃った矢を回収できるっつーのがあるぞ。消費1だったと思うから取っておけばどうだ?」


「キングさんもそのアビリティ持ってるんですか?」


「いや・・・俺の場合は、スキルポイントは全部奥義に使っちまったからな・・・」


「・・・把握」


ただでさえ旅にはお金が入用だろう。

そう考えればスカベンジャーというアビリティはかなり魅力的に映った。

実際のとこ、拓海が矢を購入したことはないため、一本当たりどのくらいの値段になるのかもわからないが、これだけ金がかかる金がかかると言われてはそういうものなんだろうと拓海でもわかる。


「じゃあ一つはこれで・・・」


「はいにゃ。それじゃあ500ギルカ、寄越すのにゃ」


「え・・・お金とるんですか・・・?」


「当たり前にゃ。うちだって商売なのにゃす。銭がもらえにゃいのに働いてたらただ働きにゃ」



それもそうか、と思いとりあえずお金を持っていないのでキングが出してくれた。



「ほらよ」


「にゃ、確かに。それじゃあこっちへ来るにゃ」



言われた通りに前へ出ると猫娘が拓海の頭にぽんと手を乗せた。



「ほい、スカベンジャー習得にゃ」


「え、もう終わったんですか?」


「これがレベル屋にしかできねえ『スキルポイントふりわけ』っつー奥義なんだよ」


「なるほど、これも奥義なんですね・・・」


レベル上げるのまではお金を取られないが、スキルポイントを振り分けるのはお金がとられる、と。


「残り1ポイントあるにゃすけど、どうするにゃ?」


そこは拓海も悩むところだったが、ここはやはり先人であるキングのアドバイスを仰ぐ方が良いだろう。

そう思いキングに聞こうとしたのだが・・・と、先ほどのスキルポイントの本の中に何やら魅力的な文字が目に入った。


「これ・・・『ボンバーキック』っていうのにします」


「それは相手に距離を詰めよられた時に放つ必殺の回し蹴りにゃ。

蹴った相手が爆発して吹っ飛んでくにゃ。

ただ爆発の見た目の派手さの割に威力がないにゃ。完全に距離を離す用だとおもったほうが良いかにゃ」


必殺というのに威力は低い、という矛盾。



「お前さんおもしれえの選ぶな」



「だめでしたかね?」



「いんや、いいと思うぜ。最初の内に詰められたときの対処技を覚えるっつーのもセオリーとしてはありだな。

ただまあ距離取るだけならほかにも色々技はあるんだが・・・お前さんがそおれがいいっつーんならそれでいいだろう」


「それじゃあそうします、猫さん、これにします」


「はいにゃ。それじゃあこっちきてにゃ」


言われた通りまた猫娘にぽんっと頭に手を乗っけてもらった。

今気づいたが肉球のようなものがあってぷにぷにしてて気持ちよかった。

あと頭に手をのせられるのなんて久しくなかったためなんとなく小さい頃のことを思いだしてしまった。



「それじゃあお代をいただくにゃす。ちなみにおまえのレベルは6まであがったにゃ。またのお越しをお待ちしてますにゃ」


キングが残りのお金を払い、それじゃあ行くか、と店を出る。

店を出たところにアリスが暇そうに待っていた。


「あっ、終わったー? なになに、レベルどのくらいになったの?」


「お待たせ。レベル6になったみたい」


「そっかー。そいじゃあ早くたくみんの服買いにいこーぜ!」


「わわっ、ちょっと、アリスさん!」



そのまま元気よく拓海の腕を引っ張るアリス。待っている間よほど暇だったのだろう。

ふと、そういえばアリスのレベルっていくつくらいなんだろうと気になっていたのを思いだし、レベルがみたい!と強く念じた。



(えっ・・・!?)



すると____アリスの頭上にはLV80という文字が出ていた。

しかし、拓海が驚いたのはそれだけではなかった。



(占い師だって言ってたけど・・・これ、職業が・・・)



そう、いつかキングのレベルを見たときにも『狩人LV55』と出ていたのを思いだす。

拓海は人のレベルだけでなく職業も見れるのだ。





アリスの頭上にはこう出ていた。





『暗殺者 LV80』




(思いっきし嘘つかれてる!?!?)




頭上に暗殺者と浮かべている少女は拓海の気も知らずに楽しそうに拓海の腕を引いて村へ駆けていく。





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