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僕と女騎士さまの物語  作者: アンジェロ
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20/20

20話(終) 「僕と女騎士さまの平穏な日常」

 年を取ると月日が流れるのが早く感じる。誰かがそう言っていた。最近僕はその言葉の意味が分かってきたような気がする。部屋の掃除をしていたらいつの間にか日が沈みそうになっていたり、街に出かけるだけであっという間に一日が終わる。こんなにも時間が短いものだと思うと、人々が時間にうるさいのもうなずける。

 もちろん、僕が伝えたいことはそんなことではない。アウロラに告白された日から、僕たちの過ごし方は少し変わった。例えば、寝るときはアウロラと添い寝するようになったり、彼女の仕事を微力ながらも手伝ったり、今まで以上にアウロラと過ごす時間が多くなった。周りからも「いつも2人一緒だね」と言われるほど、僕たちの関係は密接なものになっていた。僕が行くところへはアウロラも行き、アウロラが行くところには僕も行く。まるで2人が1つになったような、深い関係だった。

 


 「アウロラ。暇だから散歩にでも行こうよ。」

 自分の部屋で退屈そうに窓を眺めていた僕は、机で剣の手入れをしていたアウロラに声をかけた。

 「王子とあろう者が暇と言っていいのか?」

 アウロラは手を休めず、剣に目線を向けたまま話した。

 「そんなこと言わないでさぁ。だって無理するなって言ったのはアウロラだよ?」

 「それはそうだが……。」

 アウロラは手を止め、ため息をついた。

 「分かった。近くなら付き合ってやる。」

 「わーい!」

 僕はわざとらしく喜んだ。

 「ふんっ、まるで幼い子供だな。」

 アウロラは剣を鞘に納め、椅子から立ち上がった。立ち上がってすぐに僕はアウロラの手を引っ張る。

 「おい、急に引っ張るな。誰も逃げたりはしないから。」

 「分かってるよ。アウロラがもたもたしてるのが悪いんだぞ。」

 「……なんでこいつを好きになったのか分からなくなってきたぞ。」

 しかし彼女の表情は嫌々としたものではなかった。むしろ楽しみにしているようだった。引っ張られながらも抵抗する素振りを見せなかった彼女は、やはり本心では僕を受け入れてくれていた。



 アウロラと出かけるのは楽しい。ただ景色を眺めるだけでなく、好きな人と一緒にいるということが何よりも大きい。僕はアウロラと手を繋ぎながら森の中をゆっくり歩いていた。

 「お前は最近私へのスキンシップが多いな。あまりベタベタくっつかれるのはいささか落ち着かないぞ。」

 確かに僕は彼女へのスキンシップが多くなっている。訳もなく抱いたり、彼女の腹をさすったりとまるでおもちゃのようにしている。ただ、何故かつい触ってしまいたくなる。これも彼女の魅力のせいなのかもしれない。

 「そんなこと言ったって、アウロラの身体触るの楽しいんだもん。」

 「……全く最近の子供はどうしてこうもスケベばかりなんだ?」

 アウロラは呆れていて、諦めたのかされるがままに大人しくしていた。

 「分かっているとは思うが私以外には自重しろよ。特にあの胡散臭いメス豚にはな。」

 「はーい。」

 エリスのことを言っているんだろうとすぐに分かったが、アウロラはいつ彼女のことを名前で呼ぶのかは少し楽しみだった。だが、僕はこっそりエリスとのスキンシップを受け入れていることは、アウロラに話すつもりはなかった。

 それからしばらく歩いていると、見覚えのある人物が見えた。

 「あれは……。」

 僕の目線の先には、老婆と薪木を集めている女の子がいた。あの大事なものが見えそうなくらい薄着の格好をした溌剌な女の子。サラだった。

 「おーい!サラー!!」

 僕は大声で彼女を呼ぶと、サラはこちらを振り向き、大きく手を振った。

 「あーっ、ヴィトじゃーん!!久しぶりー!!」

 僕とアウロラはサラの元へ早歩きした。

 「久しぶり!仕事してるの?」

 「うん、おばあちゃんと薪を集めてるの。もうすぐ寒くなるからね。」

 サラは薪を持ち上げ、僕に見せた。

 「そういうヴィトは何してるの?まさか、デート?」

 「まぁそんなところかな?」

 僕は照れ笑いをしながら答えた。

 「へぇー。しかも年上の美人。ヴィトってもしかして尻に敷かれたいタイプ?」

 サラはにやにやしながら話していると、アウロラも話に入ってきた。

 「私のことは忘れてしまったのか?」

 サラは一瞬驚き、わざとらしく飛び跳ねた。

 「い、いいいえ、忘れてませんよ!?ヴィトの護衛の方ですよね。確か、アウロラさん、でしたっけ?」

 「おお。覚えてくれていてうれしいぞ、サラ。それとこいつは尻に敷かれるどころか、私の馬になってくれるそうだ。」

 「ちょっと、アウロラ!!いくら何でもそこまでではないでしょ!?」

 僕たち3人は大笑いした。

 「サラ、この人たちはお友達かい?」

 サラのおばあちゃんがたくさんの薪を抱えてこちらへ寄ってきた。

 「うん、ヴィトと、アウロラさん。」

 「そうかい。孫がいつもお世話になってます。」

 おばあちゃんは僕とアウロラにお辞儀した。

 「いえいえそんな。僕なんかサラに助けてもらいましたから、こちらこそお世話になってます。」

 僕は申し訳なさそうにたじたじしながら頭を下げた。

 「あ、おばあちゃんまたそんなにいっぱい持って。後で私が小屋に運ぶからおばあちゃんは先に家に戻ってゆっくりしてていいよ。」

 サラはおばあちゃんから薪を受け取った。

 「悪いね。じゃあ先に戻ってるから、お友達とゆっくりしていきなさい。」

 そう言ってよたよた歩いて行った。

 「さて、ここで立ち話も難だし、近くに草原があるからそこに行きましょう?」

 「うん!ほらアウロラも!」

 「あ、ああ……。」

 僕はアウロラの手を引っ張りサラに付いていった。



辺り一面は緑に囲まれていた。こんなところに草原があるなんてこの辺りは不思議な場所だ。僕たち3人は適当に座り、そこで仲良くおしゃべりをしていた。

 「へぇー、告白したのはアウロラさんからなんだ。」

 僕とアウロラのプロポーズをサラに話し、しかし彼女はあまり驚いたような表情ではなかった。

 「あれ?意外じゃなかったの!?」

 「うん。だってヴィトはヘタレなところがあるし……。」

 まだ一度しか会っていないはずなのに、サラも僕のことをよく分かっていた。僕はもしかしたら考えていることが顔に出るタイプなのかもしれないと思った。

 「それは確かに言えてるな。一番面白いのはいやらしいことを考えているときのこいつのマヌケ面だ。」

 「アウロラ!そういうこと言わないでよ!!」

 「ふふふっ、見てみたーい!ヴィトのアホ面!!」

 「ちょっと、サラまで!!」

 この3人の中で僕は完全にいじられ役となっていたが、2人が楽しそうなので、嫌ではなかった。それに、今までは「生」が付くほどマジメちゃんだったアウロラも、冗談やおかしな話などをするようになり、少しずつ朗らかさも出てきた。もちろん、根の部分は変わらずしっかりとした凛々しい女性なのは間違いない。

 「こうしてみると、ホントにヴィトとアウロラさんってお似合いだよね。将来おしどり夫婦になりそう。」

 「いやぁ、そんな。照れちゃうよ。」

 僕は恥ずかしくて、顔をうつむけ後頭部を軽く撫でた。

 「ほら。ふざけた顔になってるぞ。」

 アウロラが面白おかしく僕を見た。そしてサラも僕の顔を覗き込んだ。

 「え!?ホントだ、アハハハハ!!」

 「ちょっ、2人とも笑わないでよ!失礼だなぁ。」

 そんな2人が笑っているのをよそに、突然何かに目を塞がれたように僕の視界が真っ暗になった。

 「だ~れだ?」

 そして僕の頭は引っ張られ、2つのボールのようなものの間に挟まれた。

 「うわぁ!!」

 慌てて僕は手足をじたばたさせ、振り切った。後ろを向くと何とも妖しく見た目だけなら誘い込まれそうな危険な女がいた。

 「あらやだ。せっかくお姉ちゃんが気持ちいいコトさせてあげようと思ったのに、残念。」

 現れたのは、魔女のエリスだった。

 「貴様、いつの間に!?」

 アウロラは立ち上がり、腰に携えていた剣を構える。

 「あらアウロラちゃん久しぶり!随分たくましい鼠蹊部ね。私も欲しいわぁ~。」

 「え!?この人誰?」

 サラはアウロラに尋ねる。

 「気を付けろ。このメス豚は突然ヴィトのような少年に襲い掛かる最低な痴女だ。」

 アウロラはサラを庇いながらエリスに剣を向ける。

 「うふふ。相変わらず辛辣なのねアウロラちゃんは。それと後ろのかわいいお姫さまは初めて会うわね。私は魔女のエリス。ボク君とはうふふな関係なの~。よろしくね♡」

 エリスはウィンクしてサラの方を見た。

 「うわ、怖い。」

 サラは思わず小声で本音が漏れた。ちなみに僕は無防備で今にも襲われそうだった。

 「さて、私はボク君とキャッキャウフフでもしようかしらぁ~?」

 「あ、やめて、エリス!」

 エリスは躊躇なく僕に飛びつき、首やら頬やらにキスをした。すると突然彼女はじっと固まった。

 「アウロラちゃんとデキた?」

 エリスが僕の耳元で囁く。変な表現をしていたが、言いたいことは分かっていた。

 「うん。エリスのおかげで。ありがとう。」

 僕もひそひそとエリスに教えた。

 「そう、よかったわ。じゃあ今度はお姉ちゃんと……。」

 エリスの話を遮り、僕は彼女の唇にキスをした。

 「もうこれで、エリスは僕のこと好きにできるね。」

 しかし彼女は少し残念そうに鼻から大きく息を吐いた。

 「もう、私からちゅーしようと思ったのにぃ。ボク君のバカぁ♡」

 そう言うとエリスは僕の唇に獣のようにキスを返してきた。あまりに激しくて息ができなかった。

 「っんう、エリス、息ができない!」

 僕はじたばたしてエリスに離れるように伝えた。しかし彼女は一向にやめない。そんな中、エリスの背後から強烈な殺意をまとったアウロラが近づいてきた。まるでこの草原一帯を燃やし尽くすかのようなオーラは彼女がどれほど怒っているのかを物語っていた。

 「貴様。今ここで私たちのご馳走になりたいか?」

 エリスはアウロラの方を向き、ようやく我に返った。

 「あ、アウロラちゃん。その……。」

 アウロラは鞘から剣を抜き、エリスの首元に刃を向けた。

 「安心しろ。もしそうであるならば、楽に屍にしてやろう。貴様には世話になったからな。」

 「ひぃーーーっ!?」

 するとサラもこちらによって来た。

 「アウロラさん。まさか本気じゃないでしょうね?」

 しかしアウロラはサラの方を見てニコッと返すだけだった。

 「ま、魔女さん。本気で謝ったほうがいいですよ?この人正気じゃないです……。」

 エリスは完全に動揺していた。

 「ご、ごめんなさい!お詫びに皆に私のお股を慰めてるところ見せてあげるから……。」

 そしてアウロラは左手でエリスの頭頂部に手刀を浴びせる。

 「貴様の自慰など誰も見たくない。そんな汚らわしいことをするより、さっさとヴィトから離れろ。」

 エリスは頭頂部を押さえ、大人しく僕をアウロラに渡した。

 「むぅー、アウロラちゃんの意地悪ぅ。」

 「ふざけるな。当人の目の前で愛人を寝取る馬鹿がいるか?」

 エリスはふて腐れていた。

 「いるわよ。」

 「ああ!?」

 アウロラは柄にもなくエリスを怒鳴りつけた。その迫力に僕もサラもつい驚いてしまった。

 「ゴホン。すまない。つい力が入ってしまった。」

 そう言うと彼女はエリスに手を差し伸べた。

 「それに、あいつも合意していたのは私も知っている。だが、せめて私の目の前でさかり始めるのはやめてくれ。」

 エリスは少し涙目になりながらも、アウロラの手を取った。

 「うん、分かったわ。ホントにごめんなさい。私性欲が強いから……。」

 「それも知っている。そういう意味ではお前の方が相性がいいかもな。」

 「ふふふ、やっぱりアウロラちゃんやさしい……。」

 2人は立ち上がり、アウロラは僕の方を見た。

 「ヴィト。こいつが男の性欲をそそるのは分かるが、はめをはずし過ぎれば後々取り返しのつかないことになるぞ。」

 「うん。ごめん。アウロラ。それにエリスもごめんね。僕が悪いのに……。」

 「ううん、ボク君は何も悪くないわ。また今度ね。」

 「うん!」

 その一方でサラも少し安心していた。

 「よかったー。初めはどうなるかと思ったけど。やっぱりヴィトってアウロラさんには頭が上がらないんだね。」

 「まぁ、確かにね。」

 するとエリスも話に入ってきた。

 「ボク君はアウロラちゃんが大好きだからね。それにこんなにかわいい女の子たちからモテモテになっちゃって、ボク君も罪な男よね?」

 するとアウロラも話に入ってきた。

 「だが、皆気を付けろよ。こいつは突然抱きついて来たり欲情したり、救いようのない変態だぞ。」

 「もう!またアウロラはそうやって僕をからかう!僕は思春期真っ只中の男子だよ!!女性のことを意識するなって言われてもとてもじゃないけど無理だよぉ~……。」

 僕はアウロラやエリス、サラから笑われながらもじもじしていた。彼女たち3人はいつの間にか息の合う仲良しになっていた。確かにアウロラの言う通り、僕は恥ずかしながらもこの3人に欲情してしまっている。それは3人にそれぞれ異なる魅力があるからだ。アウロラは天使のような美しさと威厳をも感じる凛々しさ。エリスは男を虜にしてしまう肢体と彼女自身の妖麗さ。サラは健康的で年相応の体つきと元気はつらつな性格。それぞれに一度でも僕は恋をした。けれども、僕はアウロラと出会っていなければ、エリスやサラにも出会っていなかったのかもしれない。アウロラと出会い、そしてそれまで僕には無縁だった「恋」というものを知った。平穏な日常の中での出会い。実は何か悪いことが起こりそうだと心配していた部分もあるが、こうして何もなく元気に楽しく暮らしている。これこそが僕の本当の幸せなのだ。この幸せの中僕はこれから大人になっていき、皆もまたそれぞれ変わっていく時が来るだろう。それでも、その時まで僕の大好きな人達と暮らして行けるなら、僕は何も怖くない。

 「ヴィト、どうした?黙り込んで。」

 ふと考え事をしていると、アウロラが心配そうに僕の顔を覗き込む。

 「疲れたのならば、少し休むか?」

 「ううん、平気だよ。」

 僕は3人それぞれに目を向けた。しかし何を言おうか分からなかった。

 「皆と出会えて本当に良かった。これからも、その、僕と一緒に遊んでくれる?」

 恥ずかしくてつい口をすぼめてしまったが、3人はにっこり笑っていた。

 「もちろん!これからもよろしくね、ヴィト!」

 サラが言う。

 「うふふ、ボク君ってばカワイイんだから。お姉ちゃんもボク君とイッパイ遊んでアゲルからね♡」

 エリスも言う。

 「ああ、もちろん。お前を守り、そしてお前の傍にいる。私はずっとお前と一緒だ。」

 最後にアウロラが言うと、彼女は僕を抱きしめた。とても温かくて、優しかった。

 「ありがとう。アウロラ、大好き。エリスもサラも、みんな大好き。ずっと一緒だよ……。」

 それからも僕たちは仲良く、充実したひと時を過ごした。時間を忘れて、楽しく……。




 草花が生い茂る草原を、まるで馬のように風が駆け抜けていった。そのすぐ近くには小川があり、稚魚が元気に泳いでいる。行きかう旅人たちは、新たなる天地を求め歩んでいた。それぞれに命があり、その命を懸命に輝かせようと生きている。僕もそのうちの1人だ。かつては無味乾燥とした人生に悲しみ、この命を投げ捨てようとしていた時期もあった。けれども、僕はある人と出会い、その人から大切なことを学んでいった。まるで天使のような美しさで、あらゆる困難にも立ち向かい、乗り越えていく無敵の女騎士。彼女は僕にとって希望の光だった。そのすべてに憧れ、そのすべてに恋をした。僕が最も大切にしたいと思える人物。アウロラは僕に生きる理由を教えてくれた。彼女が守ってくれたこの命。僕はこれからも懸命に振り絞って、そしていつか僕が彼女を守れるように強くなりたい。それが今の僕の大きな夢だ。



 僕と女騎士さまの平穏な日常は、今日も僕たちを見守るかのように明るく照らしていた。




 ご覧いただきありがとうございます。ついにこの作品も無事に完結いたしました。初めは突拍子もない思い付きから始めたこの作品ですが、描いていくうちに私自身作品に没入してしまい、後半からは恥ずかしながら童貞丸出しな拙い文があちこち出てしまいました。もしそういったものを求めていなかったという読者がいましたら、申し訳ありません。しかしながら、こんな作品でも、多くの方に見ていただけたのは大変光栄に思います。こういったものは初めての試みだったので、数人に見ていただけるだけでも十分と考えていましたが、これまでの総数で数千回見ていただけているんだと知り、驚きました。ここまで来れたのは読者の皆様のおかげです。ただ少し心残りなのは、できれば皆さまからのアドバイス等直接あれば、この作品もより良いものに出来たのかなと思います。もちろん、見ていただけるだけでも十分に有り難いです。

 今後の活動についてはまだ未定ですが、気が向いたら短編などをちょくちょく投稿したり、また時期が来たら新しい連載ものに挑戦しようかなと思います。もしかしたらこれで終わりかもしれませんので、あまり過度な期待はしないでください。

 最後になりましたが、この「僕と女騎士さまの物語」を読んでいただき本当にありがとうございました。もしまた何かありましたら、その際はまたお付き合いいただけると幸いです。ではこれにて……。

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