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87 脱出へ向けて動き出す

遅くなりました。

 信とポポが転移してきた部屋に、突如ホムンクルスが侵入してきた。数で言えば10体前後。全員きっちりと武装しているが、持っている武器は、お世辞にも良いものとは言えない。錆びた剣や槍を握っている。


 ホムンクルスたちはなだれ込むように部屋に侵入すると、信とポポを見つけた。信とポポをジッと見るが、彼らの瞳に、理性の光はない。


「ポポ。こいつら、敵だよな?」


 シュバッ!! ←ポポが触手を上げて返事をした音。


「そうか。敵か。なら仕方ない。とりあえずこいつらを倒して逃げよう。ポポは左の5体を頼む」


 シュバババッ!! ←ポポが触手を何回も上げて返事をした音。ポポはやる気に満ちている。


 信はシャドウボクシングのように触手を伸び縮みさせているポポを見て、苦笑する。どんな危機的状況でも、ポポの癒し効果は絶大だ。この子がいれば何でも出来そうな気がしてくる。


 信はクスっと笑いつつも、愛菜が作ってくれたファクターを起動。緑色の光を発して、コアの魔石が駆動する。ファクターに内蔵された、魔石冷却用のファンが激しく回転し、魔術式を高速で処理し始めた。


 信は空いた手でファクターを操作し、魔法をいつでも発動可能状態にする。セットした魔法は『エアハンマー』。巨大な風の衝撃波を浴びせる技だ。集団戦にはもってこいの魔法である。


「大丈夫だ! 魔法が不得意な俺でも、やれる! 行くぞポポ!」


 らじゃー!


 ホムンクルスの動きは鈍い。映画に出てくるゾンビのよう感じだ。彼らは人間の形をしているが、顔や体は溶けて崩れている。分厚い筋肉で盛られた、太い腕に太い足。攻撃力はありそうだが、防御力は低そうだ。


 信とポポは、なだれ込んできたホムンクルスめがけ、魔法と触手攻撃を浴びせる。


 ポポの十八番の触手突きが、炸裂し、信のエアハンマーも負けじと敵を吹き飛ばす。この一発で勝敗が決するとは思ない。信は次々に魔法をセットしていくが、それは杞憂で終わる。


 ホムンクルスたちは思いのほか脆かったのだ。一撃喰らっただけで、体がバラバラに吹き飛んだ。


「うわ! バラバラにはじけ飛んだ!」


 血と臓物をまき散らして、ホムンクルスたちは絶命した。ひどく弱いホムンクルスだった。見掛け倒しである。


 しかし、最初の10体を倒しても、次々にホムンクルスが送り込まれてくる。数で押しつぶすつもりのようだ。誰が指示しているか不明だが、このままでは消耗戦になる。


 今いる部屋は研究室のような感じで、狭い。自由に動き回れない。このままではホムンクルスの死体だらけになって身動きも取れなくなる。極寒の環境というのもよくない。常にシールドを張っていて、魔力を消費し続けている。


「ポポ! 強行突破する!!」


 OK牧場!


 ポポは触手を上げて飛び跳ねた。なぜポポが『OK牧場』という言葉を知っていたかは、この場では突っ込まないでおいた。


「あそこが入口だ!」


 唯一の出入り口が、ホムンクルスの集団でふさがれている。いわゆる、肉の壁だ。


 入口にいられては邪魔なので、信はエアハンマーでホムンクルスを吹き飛ばす。押し合いへし合いのホムンクルスたちは、ボーリングで吹き飛ばされたピンのように倒れていく。


「行くぞポポ! 俺の魔法で吹き飛ばなかった、残りの敵を頼む!」


 信はポポを胸に抱きかかえる。ポポは信に抱かれたまま、触手を四方八方に伸ばし、近寄るホムンクルスの眉間を射抜く。


 亜音速で飛ぶポポの触手攻撃を受け、ホムンクルスたちの頭はスイカを割ったようにはじけ飛ぶ。血と脳ミソがまき散らされ、非常にグロテスクだ。


「うぅ。相変わらずひどい光景だ。スプラッターは苦手なのに、ポポは容赦ないな」


 信はポポを抱きかかえたまま、ホムンクルスの脳みそを踏みつぶして、通路を走りぬけた。



★★★



 一方そのころ、カレンたちは。


「どうしようティア!! 信君が連れていかれちゃった!!」

 

 カレンはその場でグルグル回る。カレンの豊満なおっぱいがブルンブルン揺れている。


 クロマルも一緒に慌て始めて、カレンと一緒にグルグル走り回る。


「落ち着いて二人とも。あの子たちは強いから、簡単に死なないヨ」


 ティアはスライム体のまま、どっしりと構えている。信とポポが強いことは分かっている。信は魔力過多症で魔法がうまく使えないというが、嘘だ。本気を出せば、彼は誰よりも強い。今すぐ彼らが死ぬことはないと思い、ティアは念話でユージーンと連絡。その後、転移魔法の逆探知を開始。


「ティア! いくら強くても、信君は人間だよ!?」


「彼には神から遣わされた、妖精がついてる。間違っても死ぬことはないよ」


「妖精ってポポちゃんのこと?」


「さてね。ボクにも詳しいことは分からないけどね」


 ティアは意味深なセリフを吐いて、それ以上喋らない。


 ベテランハンターらしくないが、カレンが「はわわ、はわわ」と言って慌てていると、使用人の弥生が現れた。


「こちらでも最善を尽くしています。必ず探し出します」


 弥生はカレンに頭を下げるが、そんなことをされてもどうしようもない。とにかく信を探し出さないことには始まらない。


「ジーク! ギルドに行くよ!」


 ジークとはクロマルのことだ。


「ギルドの力を借りよう!」


 了解!!


 触手を上げて返事をすると、クロマルはカレンのおっぱいの谷間に飛び込んだ。


「えぇ? ギルドに行くの? ちょっとまってよ。まだ逆探知の最中なんだからさぁ。まったく。この子たちは落ち着きがないなぁ」


 ティアはカレンたちのあわってぷりに苦笑していた。カレンは誰かを守りながら戦うと強いが、守る相手がいなくなると、途端に弱くなる。そんなタイプの女だった。


 


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