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76 ホムンクルス強襲

 死にそうになっていたホムンクルスの千景は、信とティア、ポポのおかげで助かった。まだ目覚めてはいないが、容体は安定した。しばらくは様子を見て、自然に回復するのを待つだけだ。


信たちは寝ずの作業を行っていたので、今は疲れ果てて寝ていた。ベッドの上で、スライムたちと一緒に寝ていたのだ。


 ポポは信の枕元で鼻ちょうちんを膨らませて寝ている。ティアは信の下腹部にのしかかり、微振動している。若干、信はティアのせいでうなされていたようだが、すぐに気持ちよくなって熟睡状態になった。今はスライムたちと仲良く寝ていた。


 信たちが疲れて寝ている中、幸太郎は妻の香奈を守る為、在宅で仕事をしていた。キッチンの方で、ノートパソコン作業をしていたのだ。パソコンの画面には一戸建て住宅の設計図が3D描画されていた。幸太郎はその図面と睨めっこしながら、キッチンで作業する妻の後姿を見ていた。


「あなた、カレンさんたち大丈夫かしらね?」


「大丈夫ですよ。ユージーンさんがいますから。それに、カレンさんはダンジョンハンターです。ダンジョンでの探索はお手の物でしょう」


「だといいんだけど」


 ユージーン、カレンとクロマルは、ダンジョンでの探索をしていた。きっとダンジョンのどこかに、魔族のアジトがあるからだ。当然、簡単に見つかるわけがないが、どこかに手がかりがあるかもしれないと情報収集を続けている。


 幸太郎がキッチンでパソコンをいじり、香奈が夕食の仕込みをしていると、クッキーが突然出窓の外に降り立って騒いだ。


 植木家では、流しの前に、光を取り入れる大きめの出窓がある。レースのカーテンで外からは見えないようになっているが、キッチンからはクッキーの姿が良く見えた。


 クッキーはキッチンにある出窓の外で、「クエ! クエ!」と騒いでいる。


 何事かと、香奈が出窓を開けてクッキーを中に入れると、クッキーは怪我をしていた。翼の方から血が出ている。


 その怪我を見て、香奈がびっくりする。


「え!? クッキーちゃん!?」


 白い翼に赤い血が流れている。香奈は大怪我だと思い、すぐに傷に効くポーションを取りに走った。


 良く見ると、クッキーの怪我は大したことはなく、擦り傷程度だ。血は出ているが、まだまだ元気なクッキーは、幸太郎に異変を知らせに来た。


「クエーーーーッピ!」


 クッキーは翼を広げてダンスを踊る。前回のホムンクルスが襲ってきた時と、同じダンスだ。そのダンスを見て、幸太郎は表情を険しくする。


「クッキー。まさか。この短期間でまた攻めてきたんですか?」


「クエ!」


 クッキーはそうだと頷く。首振り人形のようにぶんぶん振っている。


「クッキーが怪我をしていることから、それなりの対策はしてきたんでしょうが、私の力を見て、なおも攻めてくるとは……。敵は一体何を考えているんでしょうか?」


 なにか策でもあるのかと幸太郎は思ったが、それは違った。幸太郎はいつも通り気配察知の魔法を飛ばして確認したら、相手に策などはなかった。


 物量で攻めてきた。


「家が完全に取り囲まれている。この数は、ホムンクルス100体はいますね」


 家の周りでクッキーが10体近く倒したようだが、物量で押し切られたようだ。クッキーは一時的に家に逃げ込んできたのだ。


「仕方ない。クッキーは傷の手当てをして、香奈の護衛についてください。カレンさんとクロマルには連絡しますが、多分間に合わないでしょう。ここは私と信たちで相手をします」


 幸太郎は言うと、全身に魔力をみなぎらせる。体中から火花が出るくらいに、魔力がほとばしっている。昔の血が騒ぐのか、幸太郎は不気味な笑みを浮かべる。


「烏合の衆が何人集まろうと、私は倒せませんよ」


 にやりと笑う幸太郎は、魔王のようだ。一体、どっちが敵なのか、分からなくなる顔だった。


★★★


「信君!! 起きて!!」


 信とポポがグースカ寝ていると、ティアにたたき起こされた。触手でバシバシ頬を叩かれて、起こされた。ポポに至っては、鼻ちょうちんを割られて飛び起きた。


「信君! 敵だよ! 敵が来た!」


 ティアがベッドの上で跳ねている。寝ぼけている信は、何が何だかよく分からない。いろいろと突然すぎて分からないが、とりあえず頑張って起きる。


「ティア? 一体何が?」


 信が目をこすっていると、一階で幸太郎が魔術式を起動した。庭を含む家全体に、不可視の結界が張り巡らされる。


「え!? 結界が発動した!?」


 庭を含む家全体に、街と隔絶する結界が張られる。どんなに暴れても外からは普通の家に見える結界だ。幸太郎が家を建築した時に構築した、大魔法である。地下に魔法発動用のエンジンがあり、そこから魔力が供給されて結界が作動している。


 この魔法は、信の祖父と幸太郎が大ゲンカした時に張られた。かなり前の話で、10年以上起動されていなかった。


「な!? なにごとだ!?」


 信が慌てふためくと、ティアが飛び跳ねた。


「だから敵だってば!! すでに庭やガレージに入り込んでるよ!!」


「え!?」


 信は驚くが、寝起きで頭が回転しない。えらいこっちゃ、えらいこっちゃと、グルグルその場を回る。


「突然現れたから、転移してきたんだと思う。座標をこの家に集中させて、短距離転移してきたんだ。とにかく、もう敷地内に入り込んでるから、倒してくる」


「ちょ! ちょっと待って! 寝起きで何も装備してないんだ! ティア!」


「焦らないで大丈夫。ボクは強いからね。信君はゆっくり準備してて」


 ティアはベランダに出ると、数十体のホムンクルスを視認した。すでに庭の外には幸太郎がいて、雷魔法を収束させた電磁砲レールガンを撃ちまくっている。発射している弾はミスリルの銀弾で、車椅子の下にストックしていたようだ。


 幸太郎はその銀弾を空中に浮遊させ、マシンガンのように電磁砲レールガンを連射している。ひどい暴れっぷりだ。次々に家の壁やガラスが破壊されていく。もちろん、それと同時にホムンクルス達はバタバタと倒れていく。外と中を遮断する結界が家に張られていなかったら、テロだと騒がれて大問題になっただろう。もはや機動隊が出動するレベルに、家が破壊されている。


「うわぁ。なにあれ。ボクの出番必要?」


 ティアはベランダから幸太郎の無双状態を見ている。放たれるレールガンの一発一発が、すべてを消し飛ばす破壊光線だ。ホムンクルス達はひとたまりもない。穴だらけにされて倒れていく。


 普通の家が戦場になり、ティアはどこに攻撃をしかけようかとみていると、幸太郎から声がかかった。


「ティア。ベランダにいるのですか? いるのなら、裏口に侵入した敵を始末してください。信たちには、保護したホムンクルスを守るように伝えてください」


 幸太郎は大きな声で、ティアに伝えると、庭やガレージで暴れ続ける。


「怖ぁ。やばいよあの人。温厚そうな顔してて、実は過激な人だったんだね」


 ティアは幸太郎に「了解」と返事をすると、信たちに伝え、裏口へ向かった。


 裏口は、キッチンがある方に設置されている。ティアはすぐに向かう。裏口に到着すると、すでにクッキーが戦っており、何体かのホムンクルスが死んでいた。クッキーは出来るだけ被害を大きくしないように、水を圧縮した刃を放って応戦していた。ホムンクルス達は真っ二つになって倒れている。以前、幸太郎を襲ってきたホムンクルスに似ているタイプだ。


「クエ! クエ!」


 水の刀を発射してホムンクルスを切り裂く。クッキーの周りには美しい水の刃が乱舞しており、まったく敵を寄せ付けない。時々敵の反撃を食らう時もあるが、それでも強すぎる。


「クエーーーッピ!」


 クッキーは出来る子であった。並みの従魔では到底たどり着けない強さだった。


 香奈はと言うと、キッチンのテーブル下に隠れていて、ブルブルと震えている。


「な、何が起きたの!? せ、戦争!? 戦争が始まったの!?」


 香奈は怯えているが、一番安全なのは、実は彼女だ。幸太郎も、香奈の安全性については抜かりがない。クッキーがミスをして倒れたことも考えて、香奈には自動で反撃する魔装具をいくつも装備させている。テーブル下で震えているが、彼女に危害を加えられるホムンクルスは今のところいない。


 ティアはその状態を見て、すぐに攻撃。裏口とキッチンに入り込んだホムンクルスをすべて触手で消し飛ばす。数本の触手を伸ばすと、弾丸のような速度で飛んだのだ。その触手はホムンクルスの頭部や、胸を貫くと、振動、蒸発、爆散。一撃で塵になった。


「ティ、ティアちゃん!? ティアちゃんなの!?」


 香奈がテーブルの下で叫んだ。裏口付近に、水色のスライムを発見した香奈は、ティアだと思って叫んだのだ。


「うん。ティアだよ。ボクが来たからにはもう大丈夫だよ。ていうか、クッキーがいたから心配いらなかったみたいだね」 

 

「クエ!」

 

 クッキーは胸を張る。香奈を守り切ったと、胸を張っている。この鳥は、少し有能すぎる気がする。オカメインコ風のとぼけた鳥なのに、強さが並ではない。


「まだまだいるし、敵の親玉がどこにいるか分からない。とりあえず、全員地下室に避難しよう。信たちもそこに行ったからね」


「わ、分かったわ」 


 香奈は震えながら、テーブルの下からヨタヨタと這い出してきた。


「それじゃ、クッキー、援護よろしくね!」


「クエ!」


★★★


 幸太郎やティアが戦っている頃、信とポポは地下室にいた。ホムンクルスの千景を守る為、地下室に向かったのだ。しかし、地下室こそが一番の戦場だった。


 信とポポが地下の研究室に到着した時には、すでに吸血鬼のクロードがいたからだ。


「ま、魔族!? まさか、いつの間に!?」


「おや? もう来たのか? ホムンクルス達は時間稼ぎにもならなかったのか?」


 クロードの周りには数体のホムンクルス。千景を取り囲んで、何かをしている。


「ポポ! 問答無用で戦闘態勢だ! 奴を倒す!」


 シュバッ!! ←ポポが触手を上げた音。


「ほう? やれるものならやってみろ」


 信とポポ、吸血鬼クロードの戦いが始まった。

いろいろと失敗した結果、投稿が遅くなりました。展開が急でないか不安ですが、楽しんでいただけると信じて投稿しました。

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