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66 キメラ型ホムンクルス

 ティアとユージーンは、ギルドでの用事を済ませた。俊也との交渉は成功し、無事ハンターライセンスを発行してもらった。これにより、信の手伝いがしやすくなるし、ユージーンもポポに会う機会が増える。


 スライムマニアであるユージーンはポポとクロマルに興味がある。ティアは信とポポ、カレンにクロマルを守ろうと動いている。


「ティア。一つ聞くが、“啓示”はあったのか?」


「最近はないよ」


「本当にポポちゃんは妖精なのか? 確かに強いが、“知性あるスライム”なだけだろう? そのようなスライムは、深層にうじゃうじゃいるぞ。地上ではすでに絶滅しているがな」


「確かに、妖精っていう確証はないよ。オーギュストの情報だけじゃ分からない。でも、会ってみて分かった。たとえ間違っていても、彼らは守るべき存在だよ」


「そうか。ならば言うまい。それにカレンさんは私と同じような境遇だ。きっと力になれるさ」


「うん」


 ティアとユージーンはギルドのエスカレーターに乗りながら、信たちのことを話していた。信たちがなんなのか、魂の本質を探っていた。


 現在のティアの姿は男装の麗人なので、誰も何も言わない。ティアがスライムだと思っていないからだ。ユージーンたちはあーでもないこーでもないと話し合いながら、一階のエントランスまで歩いた。特に用事もないので、ティアとユージーンはそのまま外へ出ようとした。


 そこでティアはとある人間と、とある“人形”を見つけた。


「え? なにあれ?」


 ティアはすぐに念話へ切り替え、声に出さずユージーンに合図した。


『ユー君! あいつら見て!』


 ユージーンはティアが目で合図した方向を見る。視線の先には、一人の男と一体の“人形”が歩いていた。


『なんだ? 彼らがどうかしたのか?』


『ユー君はジジイになって、ついに目が腐ったの? 男の方は人間だけど、女の方はキメラだよ』


『キメラだと!?』


『一応ホムンクルスみたいだけど、素体が人間だね』


 ユージーンとティアが見ていた男は、信が嫌っていた近藤という男だった。女の方は、近藤が連れていたヤマンバギャルだ。無表情で、魂が抜けたような女だ。


『肌を焼いて色を隠しているけど、あれはホムンクルスだね。目に特殊なガラス被膜も付けているね。カラーコンタクトかな? あの女は人間を混ぜ込んだ、ホムンクルス、キメラだよ』


 近藤とヤマンバギャルの姿をしたキメラは、エントランスの受付で何やら話しており、カードをもらっていた。どこかの入室カードをもらっているようだ。


『ホムンクルスの製造は禁止のはずだ。所持することも基本はNGのはずだが?』


『そうだね。ギルドマスターの俊也は別だけど、あいつらは許可を得ているように見えない』


『こんなに堂々と人前を歩いているとはな。ここに常駐している聖騎士は節穴らしい』


『何言ってるの? ユー君も分からなかったくせに、よく言うよ』


『うぐ。それはそうだが』


 近藤は受付嬢からカードをもらうと紙に署名していた。手続きが済んだらしく、ホムンクルスを連れて歩きだす。


『どこに向かう気だ?』


『ついていく?』


『そうだな。犯罪の香りがする。証拠を押さえない手はない』


 ユージーンは半分ワクワクして、近藤の後をついていく。首を突っ込みたがる性格のようだ。


『ユー君、なんか楽しんでない?』


『楽しいな』


『あのねぇ……』


 ユージーンは刑事ごっこが好きなジジイだった。すでに年齢は70近いジジイなのに、心は少年のままだ。


『ティア、気配を消す魔法を頼む』


『わかったよ。でも、建物内に魔法制限がかかってるから、場合によっては警報がなるかもよ?』


『その時は逃げるさ』


『了解~』


 気配を消す魔法を使い、ティアとユージーンは近藤たちを追う。ギルドの中で何をするつもりなのか尾行すると、とあるフロアに辿り着いた。


『クランルームがあるフロアだ』


 ギルドでパーティーを組み、組織として活動している者たちを“クラン”という。会社組織のようなクランもあり、クランルームはギルドに必ず併設してある。


 基本的にクランルームは会議室のような部屋で、クランに加入している者たちが出入りする場所だ。これはギルドに申請すれば借りられる。


 近藤たちの後を追うと、とある部屋に入って行った。ホムンクルスもつれて、中に入っていく。ティアとユージーンは部屋の前まで行くと、室名プレートを発見した。


 プレートには、“クラン メビウス”と書かれていた。


『メビウス? あの男、メビウスっていうクランに入っているの?』


『そうみたいだな。どうやら、このクランは悪の組織らしい』


 ユージーンはニヤニヤと笑い、非常に楽しそうだ。


『悪の組織って、何の根拠もないんだけど。それよりもなんで笑ってるの?』


『久しぶりに私が鍛えたスライムたちを使えそうだからだ』


 ユージーンは大量のスライムを飼っている。それも高レベルのスライムばかりだ。彼らの力を解放させる場所が見つかって、ユージーンはワクワクしているのだ。


『ユー君、今日は無理だよ。ここで押し入っても証拠を見せることができないし、暴れたら問題になる』


 一番暴れそうなティアが、まともな発言をする。このスライムは意外と冷静に物事を考えている。逆に冷静でないのが、ユージーンだ。


『仕方ないな。この件はオーギュストも混ぜて調べておくか』


『うん。その方がいい』


 ユージーンたちは誰かに見つかる前に、ギルドを後にした。


 信の昔の友人“近藤”は、どうやらかなりの危険人物らしかった。



 

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