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61 ポポ、家事を手伝ったのち、買い物に出かける2

 ちょっとしたお使いなのだが、クロマルとカレンも一緒に行くことになった。


 信の家は高級住宅街に建っているため、少しだけスーパーの位置が遠い。コンビニはあるが、それでも少し離れている。そのため、いつも通り車を出してスーパーに向かう。車に乗っている時は、クロマルとポポが車内で飛び跳ねて遊んでいる。


「こら! 二人とも! 静かにしていなさい!」


 カレンがスライムたちを叱るが、ポポとクロマルは言うことを聞かない。楽しいのか、ゴロゴロと転がっている。


「うーむ。スライム用のシートベルトなんて無いしなぁ。でも、もし事故でも起こしたら、ポポたちは窓ガラスを突き破って外に放り出されるな。それはまずいよな」


 スライムは物理無効が基本だが、事故って潰れるポポたちを見たくない。


「あとで何か考えるか」 


 そうこうしているうちにスーパーに付く。エコバッグにポポとクロマルを忍ばせ、スーパーに入店する。

一応、テイマーが管理している特別な動物、魔物はスーパー入店もOKだ。例えば盲導犬のような介助犬だ。近年、魔物は盲導犬よりも有効とわかっている。念話が可能だからだ。


 ゆえに人々の常識は、スーパーに魔物がいても特に不潔と思わない。ただし、それが特別な許可を得た魔物の場合だ。ポポは特別で、ギルドマスターからも許可は得ているが、スライムは一般的に危険だ。いくら許可があってもモラルの問題があった。


「ポポ。いつも通り静かにしていろよ。許可があっても差別は関係ないからな」


「クロマルもだよ」


 シュばっ! 二匹が同時に触手で返事をした。


 信とカレンはエコバッグにスライムを入れて入店する。


 地元密着型のスーパーで、衛生面はチェーン店よりも劣るが、活気はある。店員の客寄せパフォーマンスがすごい。がやがやとしたスーパーを見回っていると、すぐにタマゴを見つけた。高級卵か安い卵かで悩んだが、生で食べるすき焼き用なので、高級卵をカゴに入れておく。

 

 カレンはカレンで店内をぐるりと見回ってきたようで、手にはお菓子が握られていた。ポポのためにヨーカンも手に持っている。


「別会計で払うから、気にしないでね」


 カレンはレジを済ませると、ポポにヨーカンを渡してくれた。エゴバッグの中でわっしょいやっている。


「いつもすみません」


「気にしないで。クロマルは少食だし、食べ物よりも女の子だからね。お金もそんなにかからないのよ。私と二人きりの時は、常におっぱいに張り付いているし」


「そ、そうですか。さすがクロマルだな……」


 卵も見つけたし、あまり時間もかけられない。家ではすき焼きの準備している香奈が待っている。妹の香澄も腹を減らしているだろう。早めに帰らないとまずい。


 信はレジで買い物を済ませようとした時、後ろから声をかけられた。なんともタイミングが悪かった。


「よう、信じゃないか?」


 振り向くと、中学生の時の知り合いがいた。というか、信をいじめていた奴だった。信のもっとも会いたくない人物の一人だった。


「信だろ? 魔法が使えない、植木信だろ?」


 信は現在進行形で、魔力過多症という病気をもっている。ファクターで抑制しており、今は健常者と変わりないが、昔は病気がひどかった。そのせいで魔法が使えず、みんなから馬鹿にされていた。


 信は中学まで公立だが、クラスの中では特別支援学級にいた。しかも普通学級の友達からいじめを受けていた。頭の良い信は暴力的ないじめは回避してきたが、陰湿的ないじめはあった。精神的苦痛はかなり味わっている。その主犯格が、目の前にいる。


 ため息をつき、少しだけビビりながらも、信は言ってやった。


「どなたですか? 私の知り合いですか? あなたのような人は知りませんが」


 知ってはいたが、すっとぼける信。急いでいるし、会話もしたくないほど、目の前の男が嫌いだ。


「はぁ!? 信、まさかこの俺を忘れたのかよ。小、中と、お前を子分にしていたろ」


 子分にされた覚えは一切ないし、そんなことは実際にされていない。机に鳩の死骸を入れられたり、靴を盗まれたり、ネットで誹謗中傷を書かれていたぐらいだ。


「子分? 何を言っているんですか? 誰かと勘違いしているのでは?」


「いや、お前のそのムカつく顔は覚えてる。出来損ないの植木だろ?」


「私は存じ上げません」


「ふざけんな。さっきからなんだ、その言葉遣いは! 俺だよ! 中学の時一緒だったろ! 近藤だ!」


「いや、知りませんが。人違いでしょう。ではさようなら」


 信はにべもなく去ろうとするが、近藤は信の肩を思いっきり掴み、振り返らせる。信の持っていたエコバッグが振られ、ポポが中でひっくり返る。


「まてよ信。なんだその態度。まさか馬鹿にしてんのか? 俺は近藤だぞ?」 


 信の肩を掴んだまま、力を強めていく。


「痛いな。離せ」


 信は身体の魔力をほんの少しだけ高め、近藤の腕を力づくで振り払う。


「何? 信、てめぇ……。今のは」


「見ず知らずの人に失礼じゃないですか? というか、コンドー? コンドームなら、そこに売っていますよ」


 コンドームが売っている医療品コーナーを指さし、信は近藤を馬鹿にする。全国の近藤さんに申し訳ないが、信は目の前の男に言ったのである。全国の近藤さんを馬鹿にしたわけではない。


「おい、信。馬鹿にするなら、どうなるかわかってるだろ? このマークが見えないか?」


 入れ墨を見せてくるコンドーム、もとい近藤。信は過去のトラウマから少しビビッていたが、今はポポがいる。


 愛する人がいるのに、ビビッてなどいられない。


「なんの入れ墨でしょう? 私にはゴキブリのようなマークに見えますが」


「てめぇ……」


 近藤が信に突っかかってくる理由がわからないが、とにかく信はこの場をどう切り抜けるか考えていた。店内で下手に挑発したのは間違いだが、信も怒っているのだ。


 というより、信よりも怒っている者が一人いる。エコバッグの中のポポだ。信に喧嘩を売ってきて、信に暴力を振るおうとしている。許せるはずがない。


 ポポはテレビで見た、波紋呼吸法で魔力を高めていく。目の前の男を瞬殺してやる。


「ちょっと信君! なにやってんの! こんなところで喧嘩はだめだよ!」


 カレンが割って入ってきた。一応、クロマルも臨戦態勢だった。



  

 

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