57 クロマルの優雅な朝
前回に続き、作者の変態さがにじみ出ております。お気を付け下さい。
クロマルは朝起きると、カレンの寝顔を確認する。偽オカメインコのクッキーの寝姿を確認する。
彼らが幸せそうに眠っているのを確認したのち、クロマルは静かに部屋を出ていく。
誰も起きていない、朝の早い時間帯。リビングに来ると、クロマルはラジオ体操第一を始める。
触手を前からあげて、背伸びの運動から~。
1、2、3、4。
おいっちにー、おいっちにー。
クロマルは体を伸び縮みさせてラジオ体操を一人で始める。
ラジオ体操を終えると、魔力は体に行きわたっている。家中に張り巡らした探知魔法を体内で確認する。
うむ。本日も虫一匹いない、完璧な状態だ!
クロマルは皆の安全を確認すると、クルッとその場で一回転。一日の始まりに気合を入れる。
次に、クロマルは植木家で飼っている猫にゆっくり近づくと、エサ入れに猫のエサを用意する。ついでに水も用意する。
いつの間にか猫の世話はクロマルがすることになっており、朝一番で用意することが日課だ。どうやら猫の世話をポポから託されたらしい。
ウンチをした猫砂も入れ替えると、次の作業に取り掛かる。
クロマルは庭に出ると、壁を乗り越えてお隣の住宅へ。
なんと、隣の玄関前に行き、「ピンポーン」とチャイムを鳴らす。この時、朝の6時前。
キリッとしたスライムの顔で、クロマルはきおつけの姿勢。お隣の奥様が現れるのを静かに待つ。
しばらくして玄関を開ける女性の姿が。
豊満な胸を揺らして現れたのは、お腹周りが少々だらしなくなった三十路後半の奥様。出来るビジネスウーマンと言った顔立ちをしているが、今は寝起きのネグリジェ姿。だらしなくなった体も相まって、妖艶そのもの。
「うふふふ。今日も来てくれたのね? さ、入って?」
クロマルは触手で敬礼をしてお隣の家にお邪魔する。なんだか浮気現場みたいだ。
このスライムは朝早くから何をやっているのだ? と思った事だろう。信でさえお隣との付き合いは挨拶を交わすぐらいだ。唯一、香奈がお隣の奥様と友達みたいだが、それでもこんな朝早くから尋ねたりしない。
まさかこれは。
熟女との逢引き……?
クロマルはピョンピョン飛び跳ね、和室となっている居間の方に案内される。隣も隣で、かなりの高級住宅。豪邸とまでは行かないが、お金持ちなのは確実だ。
クロマルは居間に案内されると、緑茶と煎餅を用意される。
触手を使ってボリボリ煎餅を食べていると、奥様は下着だけの姿で現れる。
「うふふ。今日もお願いしますね?」
奥様は畳の上に敷布団を敷くと、その上にゴロンと寝転がる。
その姿に、クロマルはイヤラシイを笑みを浮かべて触手を伸ばす。
まさかこのスライム。行くとこまで行く気か!?
そう思ったが、クロマルは奥様のマッサージを始めた。いかがわしい所を触ってはいるが、確かにマッサージだった。
「クロマルちゃん。私ね。遂に、旦那との赤ちゃん、出来たみたいなの。これもクロマルちゃんのマッサージのおかげね。初めてクロマルちゃんを見た時はびっくりしたけど、娘が可愛がるから安全な生き物だって分かったわ。ありがとうね?」
奥様はクロマルにも分かりやすく説明してくれる。
魔力を活性化させるツボを押しながら、クロマルはビシッと敬礼。マッサージを続ける。
クロマルが妖精から与えられた使命。それは一つだけではない。より優秀な人材を育てることも入っている。
お腹に赤ちゃんがいる時から魔力を送り込めば、その赤ちゃんは天才的な魔法才能を持って生まれてくるだろう。絶妙な魔力調整が出来るクロマルならではの芸当だ。本来なら過剰な魔力は赤ちゃんに毒だが、クロマルは天才なのだ。
クロマルの魔力マッサージが成功すれば、未来の日本を支える人材となる。特にカレンや信の周りで生まれる子供たちを、力強く支えてくれる。
クロマルはエロさ8割、使命感2割で動いていたのだ。ほとんどエロ目的だが、きちんと理由があってマッサージをしていたのだ。
部屋の隅を見ると、クロマルが信からもらった「アヒル型のおまる」が鎮座していた。新しい赤ちゃんの為にクロマルがプレゼントしたものだ。
マッサージが済んだのは7時ごろ。
クロマルはびっしょりと汗を掻いており、いい運動をしたと満足顔。
「はぁはぁ。今日も気持ちよかったわ。ありがとうね?」
奥様は「はぁはぁ」言いながら、顔を赤らめている。見る人が見れば、完全に事後だ。
すべてが終わり、奥様に見送られてクロマルが玄関に出た時。
鬼のような形相をしたカレンが立っていた。
ツヤツヤになったお隣の奥様。汗をびっしょりとかいたクロマル。
お隣の玄関前で、カレンは真っ黒いオーラを出して仁王立ち。こそっと偽オカメインコのクッキーが遠くから現場を覗いていたが、カレンが怖すぎて近寄れない。
クロマルはマッサージした疲れと奥様の見送り投げキッスに気を取られ、カレンにまったく気づかなった。
般若みたいに怒り狂ったカレンに睨まれ、クロマルは飛び上がる。
「クロマル。あんたの魔力を探して来て見れば、お隣の奥様とイチャイチャ。まさかまさか!」
クロマルはカレンが恐ろしすぎて、奥様の影に隠れる。
「ジィィーク!!!!」
クロマルはビシッときおつけの姿勢!!
パブロフの犬のように調教されたクロマル。反射的にきおつけ姿勢を取ってしまう。
「クロマル! お隣の奥様まで毒牙にかけるとは! この腐れスライムが! 根性叩き直してやる!」
クロマルはさらに汗を噴きだす。疲れからくる汗ではなく、大量の冷や汗を垂らす。
「え? え? ちょっと、まって? どういうこと?」
そこで何かおかしいと気づいた奥様が仲介に入る。
「あ、あなたがクロマルちゃんの飼い主? えっと、これは違うのよ。実はね?」
かくかくしかじか。
お隣の奥様はきちんと説明し、カレンの怒りは次第に収まっていく。納得いかない部分もあるが、クロマルは奥様の生まれてくる子供の為に行ったらしい。
「なんで説明してくれなかったの? あたしが反対すると思ったから?」
そう言われると、クロマルは即答。
当たり前だろ? カレンが納得するわけなんてないさ! だって僕だもの! ははは!
と、軽い感じで念話を飛ばす。その念話は、すべてではないが、隣の奥様にも聞こえたようだ。クロマルとのマッサージで“絆”が生まれたらしい。
「クロマル、やっぱあんた死刑」
クロマルは飛び上がって逃げて行く。
「ちょっとまてぇ!!」
クロマルは某メタルスライムの如き足の速さで逃げて行く。
「あらら。ごめんねクロマルちゃん。変なトラブルに巻き込んじゃって? でも、これからもマッサージお願いね?」
隣の奥様はクロマルに投げキッスを送るのだった。




