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45 ギルドの攻防戦 2

 オーギュストは、ダンジョンに来ていた。ここ千代市青葉区の地下ダンジョンに、である。


 ここは俊也が管理しているダンジョンであり、青葉区直轄のダンジョンだ。


 信からの依頼を果たすため、フリーランサーのハンターオーギュストは、ダンジョンのとある階層に降りてきていた。ライトニングタートルのヒカリちゃんを連れて。


 この階層は景観も美しく、間欠泉のように魔力水が噴き出る泉が多い。また、手つかずの鍾乳洞が多くみられ、ダンジョンというよりは、洞窟といった感じである。

 

 今回はヒカリちゃんの他にもう一匹、パートナーを連れてきている。


 影の中を移動できる魔物、シャドウシャークの「エイナ」ちゃんを連れてきている。


 ジンベイザメをイルカ位に縮めました、という感じのサメだ。草食系のサメで、非常に大人しい。影の中を水のように移動できるのが、この魔魚の特徴だ。


「さて、この至る所に湧き出る泉に、スライムがいるはずだが……。実はすでにどこにいるか分かるんだよね」


 オーギュストはスライムの群生地を知っている。ここのダンジョンマスターの魔力が、直接噴出する泉。その場所を知っているのだ。


 その秘密の場所までは、なかなか危険な場所も多い。


 落ちたら二度と這い上がれないような谷や、隠されたような横穴を抜けたりしなければならない。危険な魔物も多く発生している。オーギュストは奈落の底に落ちないように、魔物に見つからないように、慎重に歩を進める。


「えーっと? この辺かな?」


 マーキング地点を登録する携帯端末を片手に、オーギュストはスライムの群生地を目指す。 


 トコトコと発電亀のヒカリちゃんが、彼の後ろをついて歩く。シャドウシャークのエイナちゃんも、オーギュストの影と一緒に移動している。

 

 しばらくするとスライムが湧き出る泉に到着。人目につかないように、岩で出入り口をふさいである。その岩をどかすと、光り輝く泉があった。


 小さな池のような泉。何のことはない湧水が出る泉。大したことはないが、その泉の色は、吸い込まれそうなスカイブルー。まさに、蒼だった。


 この泉はまだ誰も発見してない泉で、オーギュストが発見したものだ。彼はこの泉に隠ぺい魔法をかけて、誰にも見つからないようにしていた。一人だけ、スライム博士の老人にこの場所を伝えているが、ギルドには報告していない。この魔物たちは、非常に貴重だから。

 

 彼は、挨拶するようにして、泉のある小さな洞穴に踏み入れる。泉の周りには、たくさんの小さなスライムたちが佇んでいた。


 美しいスライムたちが多く、泉はスライムの魔力に共鳴して、光り輝く。


 まるで泉の周りに、たくさんの宝石が集まっているようだ。


 スライムは危険種。近づけば人間だろうと捕食される。そのはずだが、この泉から湧き出るスライムは非常に温厚である。


「ふふふ。多分、スライム博士の“あの人”くらいしか知らないよね。聖水から生まれたスライムは、非常に大人しくて、人間になつくって」


 オーギュストは生まれたばかりの子スライムに近づくと、素手でスライムを包み込んだ。子スライムは、一切暴れない。人間を知らないので、危険だとも思っていない。


「小さくて可愛いな。信君になら、この子たちを任せられそうだ」


 オーギュストが発見したこの青い泉は、聖水が湧き出るホットスポットである。非常に狭いが、安全地帯でもある。セーフティーフロアではなく、セーフティーエリアという場所だ。


「ここのダンジョンマスターは、スライムじゃないか。そう、“あの人”がいっていたな」


 ここにはスライム種が数多く生息している。地上に近いエリアでは、スライムはなかなかおらず、ジェリーポッドが多くいる。彼らの違いはまだ判別できていないが、人間の魔力と死体から湧き出るため、純粋なスライム種ではない。


 余談になるが、植木幸太郎は、スライムキラーである。このダンジョンの危険なスライムを狩りまくった称号を持っている。狩りたくて狩ったわけではなく、魔物暴走時の時に得た称号ではあるのだが。


 実は、ポポが最初恐れていたのは、幸太郎に染みついたそのスライム殺しの魔力であったのだ。このダンジョンにはことのほかスライムが多い為、幸太郎はやむなくスライムを狩りまくったのであった。


「まぁいいか。どの子が良いかな? 白いスライムはレアって言うからな」 


 真っ白い、杏仁豆腐みたいなスライムがいる。大きさも手のひらサイズ。スライムマニアが見れば発狂ししそうなほど美しい。


 その白いスライムは、オーギュストにエサを与えられて、すり寄っていく。エサは、なんとポポのタンポポである。幸太郎から少し譲り受けた物だ。


「聖水から生まれたスライムは、薬草の類を好んで食べる。雑食のスライムは危険な種が多い」


 これはスライム博士が発見した定説であるが、ポポはどうなのか? 


 ポポは雑食のスライム姫である。


 それでいて非常に温厚である。信になつきまくっている。


 白いスライムは、ポポのエリクサーを食べて非常に満足している。ゲプッと、ゲップまでしている。


「ますます白くなった。濁りのない、純白スライムって感じだね」


 ポポのタンポポを食べて、白いスライムは完全体になったようだ。まだ子供だが、その魔力は並のスライムではない。


「仮契約させてね? 地上に連れて行きたいし、君にぴったりの主を紹介するよ」


 白いスライムはポポの花びらを食べて満足している。伸びたお餅のようになって、動かない。


 さっと白いスライムと仮契約をする。まったくの無抵抗で仮契約成功。人間を知らないというのもあるが、エサをくれるオーギュストを良い奴だと思ったようだ。


 問題は、ギルドにどう申請するかだ。このスライムは並じゃない。ギルドのテイマー受付に持っていくのはまずい。ここはやはり、ギルドマスターに直接申請するべきだな。


 オーギュストはそうするべきだと頷くが、この白いスライムのせいで俊也の心労はますます増えていくだろう。クロマルですらまだ登録がまだなのに、そこへこの白いスライムを連れて行けば、もはや俊也は本当に過労死するレベルだ。


 オーギュストはポポのタンポポを白いスライムに上げたからか、たくさんの子スライムたちが足元に集まってくる。俺にもくれ。俺にもくれと。


 まるで鳩にエサをあげるように、スライムたちが集まってくる。


 仕方ないので、持っていたポポのタンポポをすべてスライムたちに上げることにした。幸太郎に言えば、いくらでももらえるからだ。ポポのタンポポはかなり生え変わりがあるようだ。家の中で普通に拾えるらしい。


 エリクサーが家の中に落ちているとは、どういう環境だ。オーギュストは突っ込みを入れたいが、黙っていた。


 子スライムたちに持っている花びらをすべて食べさせると、地上に向かうことにした。今回は、とりあえずスライム一匹だけだ。小さい魔物は次回にする。


 地上に出るまでは、シャドウシャークのエイナちゃんに、白いスライムを任せる。影の中に隠れさせ、誰にもみつからないようにするのだ。これで白いスライムの大きな魔力が遮断される。魔物が近寄ってくることが避けられる。


「ヒカリ。エイナを護るんだ。今回の依頼されたスライムを連れているからね。僕も全力で護るから、よろしくね」


 ヒカリちゃんは、甲羅から伸ばした頭をさらに伸ばし、オーギュストに頷いた。


 隠された小さな泉から出ると、蓋をするように隠ぺい魔法をかける。スライムたちも大人になるまで出られないように、特殊な障壁を張って置く。他の魔物に食べられないように。


「これでこの泉は安心だろう。いずれ信君も連れてきたいが、彼は人間としての位階が低い。低級の魔物にすら大けがを負うかもしれない」


 信からは底知れない力を感じるが、それでも人間としては位階が低い。もっと強くなってからだと思った。


 本日の仕事を終えて、何事もなく帰還。そう高をくくっていたが、そうは問屋がおろさなかった。


 ギルドの管理しているフロアすべてに、警報装置が鳴り響いたのだ。


『ダンジョン探索をしているハンターの皆様。第二級クラスの魔物暴走が発生しました。至急、転移門まで避難してください。至急、転移門で地上に避難してください』


「なに!?」


 オーギュストは避難警報を聞いて、驚く。


 一体どこの階層で暴走が起こった? 原因はなんだ?


 考えられるのは、この階層よりも上の階層での暴走だ。ここは結構深い階層にある。ギルドの管理フロアギリギリの階層だ。人間が多く入る階層ほど、暴走が多く発生する。人の死体や装備品、彷徨った魂が多くいるからだ。


 本当の魔物暴走は、ここ百年近く起きていない。ダンジョンの主が起こす暴走こそ、第一級クラスのものだ。ダンジョンマスターがいなくなって久しい昨今。第一級クラスの暴走は珍しい。


「ここより上の階層か? まずいな。下に進行することはないと思うが、どうする?」


 ここには守りたい泉がある。何重にも隠ぺい魔法をかけているので大丈夫だと思うが、万が一がある。


「しかし、避難しないと救援隊が発足される」


 ダンジョンに入ったハンターは、名簿に記載される。きちんと入退出の管理がされているのだ。ここで非難しなければ、取り残されたのだと勘違いされる。それはまずい。


「この前のワイバーンの時も大丈夫だったので、問題ないと思うが。仕方ない。救援隊が来る前に、始末にしにいくか」


 オーギュストは久しぶりに全力の戦闘態勢を取る。彼は、ランク通りのハンターではない。


「ヒカリ! 暴走した奴を止めるぞ! エイナは絶対に俺の影から出ないこと! 行くよ!」 


 オーギュストは下の階層から魔物暴走の主、アシッドスライムを倒すために発進した。


★★★


 一方その頃、地上では大変なことが起きていた。


 津波のようなアシッドスライムから逃げようと、たくさんの魔物たちが地上に上ってきたのだ。人間と戦ったりするつもりはなく、ただただ地上に逃げてきたのだ。


 それでも、大型の魔物もいる。弱いハンターや、一般人もギルドにはいるのだ。それが地上に上がってくれば、大混乱だ。ギルド職員は隔壁を下したり、シェルターに避難させるなどして、緊急的な対応を余儀なくされていた。


 ポポはその緊急警報を聞いた時、イケメンの医者にマッサージをしてもらっていた。実際は触診だが、ポポには気持ちよくて、ベッドの上でグデーっとなっていた。イケメンの医者というのもデカい。ポポは意外と面食いらしい。


 ポポがグデーッとなっている時、警報が響いた。突然だったので、ポポは飛び上がった。


 何事!? 何事なの!?


 ベッドの上で右往左往する緑色のスライム。


『緊急警報発令。緊急警報発令。ダンジョンで第二級クラスの魔物暴走が発生しました。職員、並びにハンターは、速やかに避難してください。繰り返します……』


「魔物暴走!? この前もワイバーンがあったばかりなのに!?」


 イケメンの医者はポポを避難させようとするが、ポポはジャンプしてドアに体当たり。ドアをぶち破って、通路に走っていく。


「ちょっと! ポポちゃん!!」


 医者は騒ぐが、ポポはスキルの上がった念話を使った。


『ごしゅんじんさまをたすける。あなたはにげて』


「え!? これは!?」


 医者は驚くが、警備の人間たちが来て、強制的に避難させられる。


 ポポは、信のいる場所を探した。主の拙い魔力をたどって。 


 待っていて! 今すぐ行くよ!




 

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