32 番外編3 スライムはみんなのヒーロー
ポポが正式な従魔として契約されてから、約数週間後のこと。
信とポポはギルドで仕事をして、報酬が発生した。
初めての高額報酬である。
信は報酬の支払先を、コンビニ提携の地元銀行にした。信がいつも行くローカルコンビニに、ATMがあるからだ。
街へ買い物に行く途中、報酬の確認と金を下すため、そのローカルコンビニに寄った。もちろん、スライムのポポを連れて。
最近では、従魔同伴OKな店が増えている。
危険な種類の魔物は学校で習う。そうでない、安全な種類の魔物も一緒に習う。
近年ではペットとして飼われる魔物も増えてきている。
危険な魔物と安全な魔物の区別が、少しずつ市民にも浸透してきているのだ。
大体ではあるが、信の世代から下が、魔物の認知度が高くなっている。信の母、植木香奈のアラフォー世代は認知度が比較的低い。
深夜に出没するダンジョン産の魔物は、ゴキブリのように日中は姿を見せない。
その為、昼間に出歩く魔物は危険ではない。そんな認識がこの世界には広がりつつある。
さて、話はもどる。コンビニでの報酬確認だ。
信は一応、ドラムバッグにポポを入れてコンビニに入店した。
入店した時は特に問題もなく、魔物センサーには引っ掛からない。入ると、客がレジで商品を購入しているのが見えた。顔見知りの、いつも働いているベテランのおじさんがレジを打っている。
「いらっしゃいませ」
おじさんは信ににこっと笑いかけてくれた。名前も知らないが、信はよくこのコンビニを使うので、おじさんの顔は覚えている。眼鏡をかけた、優しそうな人だ。
信はおじさんに頭を軽く下げると、ATMに直行した。
革の長財布からキャッシュカードを取り出すと、カードをATMに挿入する。画面に沿って暗証番号を入力し、預金額を確認する。
ATMの液晶画面で、きっちりと報酬が入っていることを確認できた。
信は「よし!」と小さくガッツポーズ。
一般人には少なくない、普通会社員のボーナスを超える金額が入っていた。
このまま金を増やし続け、ファクターの高級制作機械を購入する。後々は、魔石オークションで妖精石をゲットする。一年に一回は、大型イベントで妖精石がオークション出品される。それを狙うのだ。
ポポはドラムバッグの開いた隙間から、ガッツポーズする信と、入力した暗証番号をしっかりと見ている。
ポポは信の預金額を見て、「ほう、ずいぶんお金を貯めとるんじゃね。さすが主じゃ」と、広島弁口調で感心していた。
信はATMから5万円ほどを引出し、買い物の軍資金にする。これから行く魔石店と、ポポに装着させるアクセサリーを買うためだ。
ATMから離れると、信はポポに小声で話しかける。
「ポポ、ここでおやつを買ってあげるよ。何がいい?」
ポポは信の言葉をバッグの中から聞いた。すると、ポポはジッパーの隙間から、ニョロッと触手を伸ばす。
触手は目にもなっているようで、ポポは欲しい商品の方向を差し示した。
「あっちのデザートコーナーかい? 今行くから待ってね」
信は財布に入っていた小銭を使い、ポポの為にデザートを買うことにした。信はカフェラテを購入する。
忙しそうに商品を補充する店員と、他の客を避けて移動する。ドラムバッグをきっちりと脇でホールドし、ポポの存在を隠す。従魔同伴OKでも、スライムの安全認知度は低いどころじゃない。危険種レベルだ。何を言われるか分かったもんじゃない。
客を避ける際に、マスクをした客や挙動不審な客、入れ墨をした強面の亜人がいたが、気にしない。信はデザートコーナーの前に来ると、ポポに何が欲しいか聞いた。
すると、ポポは触手を伸ばして商品を掴んだ。
まるごとバナナだ。
商品を掴むと、ポポは信に手渡した。どうやらまるごとバナナが食べたいらしい。猫缶の高級まぐろフレークも食べたいらしいが、それよりも甘いデザートがいいらしい。ポポは信にまるごとバナナを買うように急かした。
「わかったよ。これが良いんだね?」
他の客に聞こえないように、小声でポポに話しかける。信に向かって伸ばされた触手は、「うん」と頷いた。
信はまるごとバナナと、近くにあったカフェラテを持つと、レジに向かう。
レジにはアルバイトの若い女の子が立っている。商品を渡して購入する。それでおしまい。
そのはずだったのだが。
信は人生初のイベントに巻き込まれることになる。
普通に生活していれば、まず出会うことのないイベントに遭遇したのだ。
このコンビニはレジが三つある。そのうちの一つは売上確認のために停止していた。店員が、エンゲルスというコインカウンターに小銭を入れて確認している時だ。
事務所で金の勘定をすれば良いのだが、なぜかその時はレジで金の勘定をしていた。交代の時間で急いでいたのかもしれない。それは信には分からないが、その売り上げの確認時に事件は起きた。
「金を出せ」
レジカウンターを挟んで、客の一人が店員に『拳銃』を突き付けている。
拳銃を突きつけれた店員は、信が知っている、顔見知りのおじさんだ。多分、おじさんはオーナーの息子だろう。店長か、店長クラスの人間だ。
強盗は、マスクをして野球帽をかぶっている。背が高く、ジャージ姿。肌の色が青いことから、亜人と思われる。
安全神話を築いている日本も、強盗はかなりある。格差社会の広がりも原因だが、移民と亜人の流入が多くの原因に繋がっている。
当然、コンビニも対策しないわけではない。
レジカウンターの足元に、捕縛用の魔方陣を埋め込んでいる。強盗対策だ。
ファクターの使用を制限する術式を店内に張り巡らしているし、店員を守るための防御用シールドがレジカウンターに装備されている。
ベテラン店員である、そのおじさんは冷静である。金を出せと拳銃を突きつけている強盗に対し、「すみません、すみません。今すぐ用意しますのでお待ちください」と言った。
金をコンビニ袋に詰めながら、店員のおじさんはカウンター下に設置されている通報ボタンを押す。これで近くの警官が駆けつける。すぐではないが、必ずくる。
さらに捕縛用、または撃退用の魔法陣スイッチは足元にある。ベテランであるおじさんは、いつでも足で押せるように用意している。
強盗が発生した瞬間だが、信はすぐ隣のレジにいた。本当にすぐ近くだ。
店内では他に客が数名がいたが、全員フリーズして動かない。助けようとかはまるで思っていない。什器の陰に隠れて、みんな震えている。信が見かけた強面の亜人や、ガラ悪い入れ墨客も、隠れて出てこない。
まるごとバナナは、レジカウンターに置かれたまま。まさに購入間際での事件である。
信の目の前にいるもう一人の店員は、きちんとマニュアルを習っていないのか、茫然として立ち尽くしている。全然動かない。
信はとにかくこの場をどうするか考えた。
このまま微動だにせず静観するか、どこかに身を隠し、誰かに連絡するか。
英雄的行動をするつもりはない。
相手は拳銃を持っている。多分、魔導式のハンドガンだろう。魔法と科学を融合させた武器だ。高威力の魔弾を発射できるタイプである。
撃たれれば、信が装備しているファクターの防御機能、オートシールドを貫通するかもしれない。下手をしたら死ぬ。
しかも店内はファクターの能力制限がされている。魔法はうかつに使えない。
信はさらに観察する。
強盗の着ている服はジャージでラフだが、履いている靴は魔導式だ。捕縛用の床下魔方陣をレジストするものだ。ベテラン店員のおじさんは捕縛用の魔法を発動するかもしれないが、強盗には通用しない。完全に対策されている。
いろいろと、信はついていなかった。状況と、運が悪いにもほどがある。
なぜ白昼にこんな強盗と出くわすのか。
ここは人通りが多い、国道沿いにあるコンビニだ。昼時になれば、客もこれからどんどん入ってくるだろう。人目がに着くのに、なぜこのコンビニを強盗に選んだ。信じられない。
信は、ギルド公認のテイマーである。少なからず、一般市民を守る必要がある。義務ではなく任意だが、力を持っている以上、見過ごすことはできない。
顔見知りの、人の良いおじさんが、目の前で殺されるかもしれない。
もしも捕縛用の魔法陣が発動し、レジストされれば、興奮しているであろう強盗に、油を注ぐ形になる。
強盗がカッとなれば、魔法陣を発動させたおじさんが殺される。
信の目の前にいるアルバイト店員は震えて動かない。バックヤードにいると思われる店員は何をしているか分からない。他の客も固まって動かない。
信は、心の中でため息を吐いた。
俺は善良な市民だぞ。何をしたっていうんだ。なぜこんな事件に巻き込まれなければならない。
ベテランのおじさんは、他のレジからも金を抜き取り、十分な金を用意し終えた。金の入った袋を見ると、カウンターに置いて下がれと言った。
強盗は金を目前にし、気が緩んだのかもしれない。突き付けた銃口を、店員のおじさんから外した。
信が思った通り、おじさんはそれを狙っていた。
銃口が外れた瞬間を狙い、床下の捕縛魔法陣のスイッチをつま先で押したのだ。
捕縛用の魔法は、電撃が多い。しびれさせて動けなくする。ここのコンビニもそれを採用していた。一瞬で終わるし、何より安全性が高い。
魔法陣はフラッシュライトのように強い光を発して、起動した。
魔方陣を発動させたおじさんは、強盗を倒したと思っただろう。捕まえることに成功したと思っただろう。
それは悪手だった。
強盗は、どこで手に入れたか分からないが、アンチマジック用の靴を履いていた。ダンジョンでよく使われる、トラップ回避用の靴だ。
捕縛用の魔法陣は、ものの見事にレジストされる。魔法陣は一瞬光ったが「バチン」という音ともに無効化された。
「な、なに!? 効かない?」
おじさんはうろたえた。強盗が平然として立っている。普通なら気絶するはずだ。まさかこんなことが起きるとは。
強盗は、金を取ろうとしたところでそれが起きたので、怒り心頭。
「てめぇ、今俺をハメようとしやがったな? 俺が倒せるとでも思ったか? あぁ?」
「そ、そんな馬鹿な」
「運が悪かったな。捕縛用の魔法は対策済みだ。それに、俺は最初から誰かを殺す覚悟がある。俺が撃たないとでも思ったか? 殺されないとでも思ったか?」
強盗は、このようなことに慣れているようだった。殺しをすることに躊躇がなさそうな雰囲気である。
信はまずいと思った。この流れは、殺人が発生するパターンだ。警察がこの場に駆けつけたら、さらに悪化するだろう。
コンビニに立てこもりなんてされたら、信がこの場に何時間も拘束される。溜まったもんじゃない。
信は、ファクターの準備を急いでする。店内のアンチマジックフィールドを解析し、いつでも魔法を発動できるようにする。
信は魔法は得意じゃないが、それなりの用意はある。信には奥の手がいくつかあるのだ。
魔法を使えなくとも、消費系の魔石で高威力の魔法を強制発動出来る。しかも今はちょうど良いことに、消費系の魔石をファクターに装備している。これから行く魔石店で売り、より良い魔石を買うからだ。
英雄的行動はしたくないが、しないとおじさんが死ぬ。やるしかない。
信は腕に装備したファクターに少量の魔力を流し込む。ファクターの発動準備が整う。
店内に張り巡らされたレジストマジックも解析は済んだ。レジストを無効させて魔法を放てる。
よし。やるぞ。今しかない。
信は強盗を見る。一刻の猶予もない状況だ。
「てめぇ、死んどけ。改造したこの銃の威力も確かめたいしよ。俺には人間に恨みがある。さっさと殺して逃げるか」
強盗はベラベラとこれからすることを喋ってくれる。
「ひ、ひぃ」
おじさんは、恐怖で泣きそうになっている。
「死ね」
強盗がトリガーに指をかけ、まさに撃つ瞬間、信は言った。
「こっちを向け、くそ野郎」
「あ?」
強盗が信の言葉に反応し、銃口を信に変えた瞬間。信は魔法を発動した。
「ウインドハンマー」
風の衝撃波。指向性を持って敵を吹き飛ばせる風魔法だ。
「なに!?」
巨大な金づちで、全身を殴られたような衝撃。中級規模の魔法で、近くのおじさんを巻き込まずに撃てる魔法だ。
信はそれを発動した。使った魔石の値段は5万円。売れば3万円は硬い。卸したばかりのお金がパーになった。
「くそがぁぁあ!!」
強盗は、ウインドハンマーを喰らいつつも、なんとその場に踏みとどまった。床に穴を開けつつも、吹き飛ばされずに踏みとどまった。
強盗は、ウインドハンマーを喰らって店外に吹き飛んでいくはずだった。骨がボキボキに折れて、重傷を負うはずだった。
それが、まったくその場から動かず、傷もさほど受けていない。擦り傷程度で立っている。
どういうことだ。
信は驚愕した表情で強盗を見ると、吹き飛んだマスクと、目出し帽。敗れたジャージの隙間から、強盗の本当の姿が見えた。
強盗は、「魔族」だった。しかも、10氏族の一員だった。はぐれではあったが、それなりの血と力をもつ魔族だ。なぜこんなところでコンビニ強盗などしているのか、理解できない。
信は思った。
慣れないことはするもんじゃないな。ドジな俺が英雄の真似をしたって、ダメだったんだ。
「アンチマジックフィールドがある店の中で、中級規模の魔法を使うとはな。大した奴だ。だが、てめぇも運が悪かったな。その程度の攻撃魔法、俺の肌には傷つかねぇぞ」
「そのようで」
ははは、と信は苦笑する。
「俺はお前みたいな魔術師が大嫌いだ。俺たち氏族は、人間に恨みがある。死ね」
強盗は信に銃口を向けると、躊躇せず発砲した。
信はポポを守ろうと、バッグを抱きかかえたが、ポポはすべてを聞いていて、すべてを見ていた。
放たれた弾丸は、ポポが触手一本で受け止めた。
飛んでくる弾丸を、二股に別れた触手で、つまんで止めた。
余裕で、止めたのだ。
「なに? なんだ? 触手?」
強盗が突然バッグから伸びた触手に驚いている。
「え? ポポ?」
ポポはつまんだ弾丸を、強盗に投げ返した。
チュインという風を斬るような音がして、強盗に直撃する。
「ぐおあああ!!」
強盗の脇腹に弾丸が直撃し、貫通した。威力は、ハンドガンから発射された時より強い。
強盗は貫かれた脇腹を抑え、悲鳴を上げる。
「て、てめぇ! なんだそれは! 何を隠してやがる! 死ねくそが!!」
脇腹を抑え強盗はなおも発砲。ポポはバッグから素早く飛び出すと、すべての弾丸を触手で受け止めた。
つまむようにして、“シュバババババッ”と、すべて止めた。
「ば、ばかな!!! 改造したこのハンドガンの弾を止めた!?」
ポポは信の目の前に着地すると、えっへんと威張る。ふんぞり返って、強盗にドヤ!
「頭に花? ジェリーポッドか!? いや、その形、お前はスライムか!? スライムが止めたのか!? ウソだろ!!」
ポポはふんぞり返ったまま強盗を見ている。
「ダンジョンで死肉を喰らう低能なスライムが、なぜここにいる!!」
強盗は一人で騒いでいる。騒ぎながらも、脇腹を持っていたポーションで回復させているようだ。流れ出ている血が、徐々に収まっていく。
「てめぇ、もしかしてテイマーか? スライムを操るテイマーなど滅多にいないが、こんな強力に育つのか?」
ポポは低能や死肉喰らいと言われたことが、非常にムカついていた。
スライムは低能じゃない。どんなスライムも、“少し、忘れているだけ”なのだ。
本当の力と記憶を。
ポポは莫大な魔力を触手に込める。周囲が歪むほどの魔力が発生する。
「な、なんだと。この、けた違いな魔力は、族長よりも……」
強盗の魔族はポポを見て震えだす。
この信じられなほどの魔力は、自分が知っているどんな魔力よりも、強い。
魔族は、このスライムが化け物だと知る。
ポポは溜めに溜めた魔力を、魔族に向かって一点解放する。
拳銃の弾丸よりも早く、一本の触手を伸ばす。
放たれた触手は、まるで一本の槍のように、真っ直ぐに飛んでいく。
触手は、強盗の右胸、肺を、容赦なく貫通した。魔族は、反応すらできなかった。
「ぐがぁ!!」
大量の血を口から吐き出す。
触手は貫通したまま、強盗である魔人をぐるぐるに絡め捕る。
「な、なにをずる気だ。ばなぜ! ぐぼっ!」
血を吐きながら、じたばたする魔族。ポポは触手で軽く持ち上げると、力任せに店外に放り投げる。
「な、う、うぞだ、スライム如ぎに……」
投げた際、コンビニの自動扉をぐしゃぐしゃに破壊し、駐車場のあるエリアに吹き飛んで行った。魔族は、外にある木に激突し、ピクリとも動かなくなる。手や足があらぬ方向に曲がっているし、かなりの重傷である。
ポポの圧倒的勝利。人間よりも何十倍も強い魔族が、スライムに負ける。スライムも危険な種だが、魔族と比べるとかなり弱い。それなのに、圧倒的勝利。
今行われた光景に、信は茫然と立ち尽くす。ポポが強いのは知っていたが、魔人すらも圧倒する。スライムという常識を覆す、遥か高みにいる存在。
信はこの強さと可愛さを兼ね備えたポポに、末恐ろしさを感じた。
ポポは動かなくなった魔人を見ると、興味は無くなったようだ。信とその家族、親しい友人、そして自分を害するすべての敵には、全く容赦しない。
敵に回したら恐ろしい。そんな簡単な言葉では、済まない子である。
ポポはレジカウンターにピョンッと飛び乗ると、アルバイトの店員にまるごとバナナを指さした。
「え? え?」
アルバイト店員は理解できない。
「えと、あの、お金を払うんで、そのまるごとバナナ、売ってください。うちのスライムが食べたがってるんで」
「あ、は、はい。198円です」
「どうも」
何事もなかったように、金を払い、ポポにまるごとバナナを渡す。
渡すと、カウンターの上で器用に包装を剥き、まるごとバナナを食べだした。
もぐもぐと、ゼリーの丸い体が揺れる。
「い、意外と、か、かわいいですね。この子」
「あはは。どうも。可愛いスライムでしょう? うちの子は。あははは」
信は苦笑い。
「本当にこんな小さな子が、あの強盗を倒したのか、信じられません」
アルバイトの子はポポを見てほほ笑んでくれたが、それ以外のすべての人は固まったまま動かない。時間が止まってしまっているようだ。
コンビニの入り口はぐしゃぐしゃである。ガラスが割れて、ひどいありさまだ。
あぁ。大変なことになった。
どうしようかな。面倒くさいな。
このまま逃げたいが、そうもいかない。パトカーの音が徐々に近づいてきたからだ。
自動扉の弁償とかさせられないよな。大丈夫だよな。
信はレジカウンターの上でモグモグと食べるポポを見て、ため息をついた。
★★★
その後、信とポポ、強盗は警察署に連行された。
信は取り調べを受けたが、一時間ほどで解放された。コンビニ店員の証言もあったし、犯行を録画したビデオもあった。魔人も生きたまま捉えることに成功した。
何より、植木幸太郎という重鎮が出て来た為、警察の力も及ばない。信はなんのおとがめもなく解放された。というより、後日報奨金がでるというので警察署に来てほしいということだった。
報奨金は、捕まった魔人が賞金首だったからだ。
金額は1000万。破格である。
ベテラン店員のおじさんは、コンビニの店長だった。店長であるおじさんは、弁償する必要はないと言ってくれたが、ちょうど高額の報酬が入ったので、信は弁償することにした。
今後もよく使うコンビニなので、信はあと腐れなくしたかったのだ。
おじさんは、ありがとうありがとうと、信の手を握り、ポポも撫でて喜んでくれた。
ちなみにその後は、信とポポを命の恩人として、家族同然に扱ってくれた。夕飯に招待してくれて、家族ぐるみでもてなしてくれることになる。
スライムのポポはおじさんの娘さんに大好評で、ポポも遊び相手が出来た。
最後には、信とポポが全国区のニュースで取り上げられるのだが、それはまた後の話。




