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ダンボールに捨てられていたのはスライムでした  作者: 伊達祐一/夢追い人
一章 ある日、住宅街の中、スライムに出会ったぁ~
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21 ミノタウロスのカレン2

 駅に向け、ミニバンは走っている。信はペーパードライバーなので少しぎこちないが、運転自体は問題なかった。


 信はポポが隠れていると知らず、音楽をかけて気分よく車を走らせる。


 ポポは信との魔力同期がうまくいっているのか、信の心情が多少は分かる。


 信は期待と不安でいっぱいの状態だ。そこに多少のエロスがあったので、ポポは反応したのだが、それは信のあずかり知らないところ。 


 目的地に着いたら、ポポはどうやって信の後をついていこうか考えていた。


 普通に尾行したのでは、目立つのかもしれない。香奈との一件がある。自分が人間に姿をさらせば、びっくりさせてしまう。下手をしたら攻撃されてしまうかもしれない。


 いろいろ考えるが、ポポはいい案が思い浮かばない。


 すると、突然ミニバンが止まった。目的地に着いたのかと思ったが、どうやら違う。ドアが開いて信が下りていくのが見えた。


 ポポが車の窓から外を見ると、コンビニに入っていく信が見えた。何かを買いに行ったようだ。


 この隙に何か案を考えないといけない。今がチャンスだ。


 ポポは車の中を探し回ると、信のリュックを助手席に見つけた。中を開けてみると、ファクターに関連する本や、ファクターの工具が入っていた。信がいつも持ち歩いているものだ。今回はカレンに会うということで、ファクターのカタログや魔石の類も大目に入っている。


 ポポは考えた。


 信がカレンと会って、いい感じになることを阻止する。それが目的だ。


 であれば、リュックの中身はカレンに見せるものがあるはずだ。信はカレンと話し合うのだから、話し合う場所までリュックは持っていくはずだ。リュックに忍び込んでおけば、カレンのところまで自動的にたどりつける。


 ポポは安直にそう考えた。実際それが合理的で、一番安全に目的地にたどり着ける。問題は信に気付かれないこと。


 幸いリュックは大きめだ。ポポが入り込む隙間は十分にある。ポポは信が帰ってくる前に、素早くリュックの中身を取り出した。


 一番かさばっている工具類を全部取出し、トランクの後ろに隠しておく。あとはファクターと本類が残った。ポポは本とファクターを蓋にして、リュックの奥に隠れることにした。


 リュックに隠れるときに、ネックレス型のファクターが、ポポの頭にあるタンポポに絡まった。


 リュック内の動きに支障が出た。


 ポポは外そうとしたが。


 ピッ! ガチャ。


 車のドアが開く音がする。信が帰ってきたのだ。ポポはすぐに動きを止める。


 ポポには見えなかったが、信はコンビニでコーヒーを買ってきたようだ。二つ分あることから、カレンの分も買いに行ったのだろう。マメな男である。


「さて、駅まではすぐだ。コーヒーが冷める前に行こう。って、ん? リュックが助手席から落ちそうだな」


 信は助手席のリュックに気付く。


「カレンさんは助手席に乗るだろうし、リュックは後ろに置いておくか」


 ポポはいきなりピンチになる。ポポの体重は2キロ。リュックから出したものは2キロもない。重さ的にはどうだ? ばれてしまうか? ポポはドキドキして待つ。


「よっと。これでいいか」


 信はリュックを持ち上げると、後部座席にリュックを置いた。全然気づかなかった。


 ポポは呼吸しないが、ため息を吐く仕草をする。


 信はそれからミニバンを発進させた。


 カレンが待っている南千代駅に向けて。



★★★



 信はカレンに会うことに成功する。


 成功と言ってもそんな大仰なものではない。挨拶をきちんとして、車に乗せただけだ。


 駅で会った時、カレンはボディラインがくっきり出る服を着ていた。ニットのワンピースを着ていたのだ。その上から皮のコートを羽織っており、グラマラスな肉体がチラチラと見え隠れしていた。


 ギルドで会った時とは、まるで別人のようなカレン。落ち着いた服装で、大人の女性って感じである。


 信は買ったコーヒーをカレンに渡し、車を走らせる。


 車を運転しながら、信はカレンに話しかけてみる。


「どこに行きますか? 一応、近くにロイヤルゲストがありますけど」


 信は車のナビを使ってお店を調べていた。しかし、駅近くにはそれほど良い店がなかった。郊外の駅な為、居酒屋が多く、雰囲気の良いレストランとかはなかったのだ。 


「そこでいいよ。あんまし高いお店に連れて行かれても、あたし金ないしさ!!」


 あっけらかんと言い放つカレン。服装がどんなに大人でも、中身は変わらない。とってもサバサバしている。


「あはは。そうでしたか。詳しく知らないんですが、ハンターっていうのは儲からないんですか?」


「儲かるのはほんの一部の奴だけだね。ダンジョンは運の要素が強いし。鼻の利く魔物を仲間にしていれば、宝とか罠とか多少は分かるんだけどね」


「それは探知系の魔法とかが有効ってことですか?」


「そうそう! 探知系の魔法って、すごい有効だよ! 使える人は本当にごくわずかだけど」


 探知系の魔法は、極めて魔力操作がうまくなければ使えない。上級ハンターの多くは、探知系を極めている人が多い。上に行くには必須の技能と言える。


「それよりもさ、今日いきなり呼び出してごめんね。やっぱり正月休みは家族と過ごしてたいよね」


「あぁ、いえいえ。うちは親戚周りとかしませんし、しても妹の香澄が行きますよ。俺はまぁ、親戚では評判が悪いんで」


「評判?」


「あはは。恥ずかしながら、俺は魔法が得意じゃないんですよ。うちの家系は魔法が得意ですし、優秀なハンターを輩出しているから」


「ふーん。ファクターの研究をしているのに、魔法が得意じゃないんだ」


 信は言葉を間違えたかと焦った。魔法が得意ではないと、会ったばかりで言うべきではなかったか? 仕事の依頼が減るかもしれない。


「でもさ、気にしないでいいんじゃない? 親戚が何と言おうと、他の分野で活躍できれば、全然問題ないよ」


 カレンはサバサバしており、とても合理的な考えを持っていた。受け継がれてきた血や、伝統も大事だが、それが足かせになるようだったら意味がない。古いことが全部正しいわけではないのだ。


「そう言っていただけると嬉しいです」


「えへへ。頑張ってね」


 カレンはくしゃっと信にほほ笑んだ。



★★★



 信はファミリーレストランの、“ロイヤルゲスト”に到着した。


 持ってきたリュックを背負って、店の中に入る。店員には喫煙コーナーか非喫煙コーナーか聞かれたが、信もカレンもたばこは吸わないので、非喫煙コーナーに移動した。


 店員に案内されて、窓際の席に座ると、メニューを手に取った。


 カレンは開口一番、「パフェが食べたい」と言った。


 昼ごはんよりも、パフェが食べたいらしい。


「お昼はまだなんですよね? サンドイッチでも食べてからじゃだめですか? 俺、腹減っちゃって」


 信はいきなりデザートを食べるのは気が引けた。


「あははは。そうだね。ごめんごめん」


 カレンは照れ隠しに、頭に生えている角を掻いた。ガリガリと、いい音がした。


 それから信はパスタを頼み、カレンはサイコロステーキとライスセットを頼んでいた。


 話もつつがなく進む。意外と話し上手で、カレンは信を飽きさせなかった。


 食後にパフェを頼み、いよいよファクターの話をする時が来た。


 信が初仕事となる、ファクターの調整、または修理について、カレンに話を切り出す。


 事前に用意していたファクターや、カタログを取り出そうと、信はリュックを取った。


「カレンさん、俺の作ったファクターや、既製品のカタログを持ってきています。一度目を通していただけませんか?」


 信はそう言って、リュックを開けた。ファクターや、カタログを取り出すために。


 信はそこで見た。


 いや、発見した。


 リュックの中に、ポポがいるのを。


 ポポは、リュックの中で信にあいさつする。


 触手が、ニョロッと伸びる。


「…………」


 なぜ、ここにポポがいる。


 どうしてこうなった。


 信が真っ青になったのは、言うまでもない。



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