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ダンボールに捨てられていたのはスライムでした  作者: 伊達祐一/夢追い人
一章 ある日、住宅街の中、スライムに出会ったぁ~
20/89

20 ミノタウロスのカレン1

 ポポが鏡餅よろしく、餅の上に乗っかった正月。


 神棚に、しめ縄を持ってポポが祀られた正月。


 植木家はポポというスライムを家族に迎え、より一層にぎやかになった。


 香澄も香澄で、ギルドでは有名人になってしまう。今はヘルムのバイザーを下し、謎の姫騎士で通っているが、学校にバレたら大変だろう。


 植木家ではキラーウルフを飼うか話に上がったが、散歩するには近所が黙っていないということで、却下となった。キラーウルフは香澄が成人した時に渡されることになり、今はギルド預かりとなった。


 信は正月明け、ミノタウロスのカレンに連絡を取った。


 正月で忙しいのかもしれないが、年始の挨拶も兼ねて連絡することにした。


『お! 信君!? 連絡待ってたよぉ!!』


 カレンは相変わらず元気だった。


「正月休みにすいません。あんまり遅くなると悪いですし、一度連絡だけでも取っておこうと思いまして。今、電話のお時間あります?」


『大丈夫大丈夫! あたしはハンターの仕事がなければ基本暇だからさ。あ! そうだ! なんなら今日会える? あたし時間あるけど!』  


「え? 今日ですか?」


 いきなりである。なんの準備もしていない。


『そう。今日。午後から』


 カレンの行動は電光石火。思ったら即行動。


「今日は特に予定がないんで大丈夫ですけど……」


『んじゃ今日の午後一時に会おうよ。いいよな? 場所はどこにしようか』


 え? 午後一時? あと3時間もないぞ。昼ごはんはどうする。一緒に食べるのか?


『あ、やっぱり迷惑だった?』


「いや、迷惑だなんて思ってませんよ」


『そう? よかったぁ! それじゃ午後一時ね!!』


 あっという間に会うことが決定する。まるで小学生の約束みたいな感じだ。断る雰囲気は出せない。


「ええ。わかりました」


『それじゃ待ち合わせ場所だけど、どうしようか? お昼食べてないよね? やっぱご飯食べながら話したいよねぇ』


 カレンは信よりも年上である。大人の色香が漂う亜人女性。バネッサとはベクトルが違うが、カレンもまた美人。


 バネッサよりもずっと人懐っこく、話しやすい。女が得意でない信は、カレンのようなグイグイ来る人は接しやすい。


『やっぱ近くがいいよなぁ。あたしはあんまりお店とか知らないしなぁ』


「そうですねぇ。どこがいいですかねぇ」


 信の脳内コンピューターが目まぐるしく動く。


 今はカレンの情報が少ない。待ち合わせ場所など簡単に思いつかない。


 元気でボーイッシュなカレン。


 もしかしたら初心なのかもしれない。


 大人の雰囲気があるレストランはどうだ? もしかしたらコロッと俺になびくかも? 


 それともファミレスでファクターの打ち合わせがいいか? 最初は気軽に話せる場所がいいしな。


 信の脳内回路がギュンギュン動く。最高の選択肢を導き出せ!


 信は今、『カレンのお乳』で頭がいっぱいだ。どうにかしてカレンの乳を手に入れたい。あの濃厚な味は癖になる。どうにかして良いコネクションを築かなければならない。嫌われるわけにはいかない。


 信の脳内はピンク色で染まっていた。


「えっと、とりあえず近くまで、車で迎えに行きましょうか? 車でドライブしながら、話し合う場所を決めませんか?」


 信は現状、ベストの答えを出した。答えの先送りである。


『ん? 車? ああ。そうだった。信君、車持ってるもんね』


「ははは。親のお下がりですけどね。それで、カレンさんのお住まいはどこらへんに?」


『南千代駅の近くだよ』


「それじゃ、午後一時に車で迎えに行きますんで、駅前で待っていてください」


『分かった。待ってるよ、信君。それじゃあね』


 そこで話が終わった。通話を切り、信はスマホを見る。


「まじか? 今から本当に会うんだよな?」  


 心の準備ができていない信。女性との待ち合わせなど、いつ以来だ。というか、彼女という彼女が今までいたことがない。


 信は部屋の中をスキップし始める。


 たとえ仕事のことと言えど、信にとっては思いがけない幸運。まさか今日電話して、今日会うことになるとは思わなかった。


 信はカレンに電話することは、あまり期待していなかった。ファクターの修理屋など、今は腐るほどいる。ギルドの中にも修理屋はある。わざわざ信と話すことでもない。


「うーん。でもなぁ。美味い話には裏があるしなぁ。宗教の勧誘とかじゃないよなぁ? もしくはねずみ講?」


 信は逆に勘ぐってしまう。


「まぁいいか。とりあえず会うだけ会おう」


 信はどの服を着ていくかクローゼットを開ける。


 鼻歌を鳴らしながら、服を着替えて髪を整え始める。


 信がニコニコと外出の準備をしている最中、ポポは見ていた。信の行動の一部始終を。


 ポポは考える。


「こいつ。女と会うんか?」


 鼻歌を歌い、念入りに髪を整える信を見る。


「主人、やってしもぉたのぉ。ワイを差し置いて女遊びとはいい度胸じゃ。その女、ぶっ潰したるわ」


 プルプルと微振動するポポ。


 ポポは喋れない。


 口には出せないが、多分そんなことを考えている。


 信の会話を聞いていたポポ。静かに信の部屋を出ていくと、ガレージに移動。誰もいないことを確認して、車のそばに移動した。


 信のミニバンには鍵がかかっていたが、ポポには無意味。素早く鍵を開けると、ドアを開けてトランクに忍び込む。


「やったるで。ワイ以外の女と遊ぶなんて許さへん」


 広島弁? 口調なのは、単なるポポの雰囲気。

 

 ポポはメラメラとジェラシーの炎を燃え上がらせた。  





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