あいふれ
それはそれは悪夢のようだった。パンツが見れたとか、女の子と話せたとか、そんな日常が霞むほど。嘘だと思ってる奴もいるだろう。それは誤解だ。涼宮ハ○ヒを百回読み直してこい。
そう、それが起きたのは、ある13日の金曜日だった。
いつもの様に、高校前の歩道橋の下から、あの子のパンティは今日何色かなとか期待して柱で待ち構えていた。もちろん携帯カメラ常備。警察から逃れるように、携帯電話を持って、待ち合わせしているように偽装する。だったら友達と一緒に陣構えればいいじゃないかとか言う奴もいるだろう。出来ることならそうしていたさ。こんな日常を盗撮に捧げているような愚か者には、写真を買いたい奴しかやってこないさ。一番人気は、クラスのマドンナ「サツキ」。一枚1万で売れた時もあった。ただ、だいたいの奴はパンツじゃなくて全体像(特に人気なのがブルマ着用の体操服)を求めてくる。清純っぽそうだしな。そういう奴に限って不純なんだぜ。そこら辺の不良に絡んで、股開いてんだぜ。誰も知らないだけでさ。
面白くないぐらい女子が通らない。まさかオレのことがばれたのか?それは無いだろう。細心の注意を払ってシャッターの音を出さないようにしてるし。分かった。この禍々しいオーラが原因か。そら通らねー訳だ。ちなみに俺、学校辞めて今ニートっす。
ニートのどこが悪いと言われても、答え様がないよな。好きでなった訳じゃないし。てか、こうやって盗撮写真で儲けている訳だし、厳密に言えばニートでは無いのか。これからの時代は写真じゃなくて動画だよな。ロリから熟女まで手広くやってかなきゃさ、人の欲望っつうのは際限無いしな。ありえないのが、幼い少女をアイドルのように見立てて水着姿で売り出す神経。あれは、その子の親がどうかしてるとしか言いようがない。だからDQNネームとかキラキラネームとか言い出すんだ。奴ら子供を商売道具か何かと勘違いしてやがる。
だから、そういう奴らから比べれば俺なんざ100万倍マシ。世間に迷惑かけてないし。お前ら気づかなかっただろ?
そんな御託はどうでもいいとして、問題の被写体をじっと待ち構えているウチに夕暮れ。カラスがハンガー咥えてどこへやら。奴ら知能だけはいいからな。なんで来ない「サツキ」!!
と思っていた矢先、鋭い光が歩道橋から飛んできて、オレの網膜を焼き払う。痛い。
ふと光っている箇所を見ると、人が立っているではないか。ちょっと待て。人が光ってる?蛍人間?そんなム○に載せなきゃならんオカルト話が身近で起こるなんて、小学生の時見たツチノコの奴以来だぜ。鳩○夫妻もびっくり。
オレは夢中になって光源に近づく。階段を猫か何かみたいに三段飛ばしで駆け上がる。そのうちに、光もようやく終息の兆しが見える。まばゆい光も、さよなライオン。あいさつ坊やってネーミング安易すぎだろ。
ようやく人が見えた。髪はツインテール。綺麗に青のリボンで結われている。制服着用。萌えポイント急上昇。ちゃんと絶対領域有るじゃないですか!って言ってもこれは背後から見た姿だから、もしかすると女装してる変質者かもしれないですよね。そんな淡い期待を抱いてその体に触れる。すると、なんということでしょう、何処からか風を切る音が聞こえ、頬に勢いよく何かが弾けてえ〜当たっているではありませんか。
あれ?と思った時には、既に地面と仲良くなっていた。更に面白いことに、女の子は一糸纏わぬあられもない姿で歩道橋に座り込んでいた。これは撮るしかないでしょうなんてことも考えなくは無かったが、このままの状況が続けば、いずれ下校時間になり、GO TO POLICEだろう。
警察に突き出して、身元を確認してみるか。
高校から一番近い交番、捕まるとしたらココだと思ってとりあえず場所は把握していた、警察に女の子を抱えて突入を試みる。流石に裸のまんま持って行ってもオレが捕まるだけなので、その辺の大きな葉っぱで隠した。
ごめんくださーい、と意気揚々と玄関を突破。入り口でピ○ポ君が出迎えてくれた。こいつら俺らの方見てにやにやしてやがる。こっち見んな。
適当に警察官を呼んで女の子を引き取ってもらうか。そう思って、近くのいかにもこれからネズミ取りに出かけそうな警察官に声をかける。
「あ、あ、あの、こ、この女の子、ひ、ひ、ひひ引き取って頂けれま…」
ダメだ。会話が緊張で成り立たない。これだからニートは。
「え、そんなの何処にも居ないじゃん。てか、ここで何してんの?米抱える練習?」
あれ、もしかして、俺の抱えてる女の子が見えない?
「ほ、ほら、こ、ここに今、居ます」
「居ねえよ。ほら、邪魔するんなら公務執行妨害で逮捕するぞ?まさかヤクとかやってねーよな?」
ちょっと待って下さい。俺はそしたら、一体全体何を抱えているんだ?
そう考えた瞬間、まばゆい光が女の子から再び発せられる。
『わらわのねむりをさまたげるものはだれだ?』
頭に直接響いてくる、どこかで聞いたような台詞。てか起きてたの?
「や、やあ!ぼ、ぼく、イケメンだよ!」
『阿呆』
女の子から平手打ちされた。
その光景を見て更に怪しがった警察官が距離を詰めてくる。
「お前、さっきから何してる?大人をからかうのもいい加減にしろよ」
「は、はひぃ。し、し、しつれいすぃまひゅ」
何も言えてないが、何かを言ってその場を去った。
既に外は夕暮れ。悲しいカラスの嗚咽が辺りを一層物寂しい物に変える。
『お前、さては女の子が苦手じゃな?』
「え」
『お前さては妄想しか出来ない変態だな』
女の子が不敵な笑みを浮かべる。
「いや、盗撮してます。行動してます」
『ほう、わらわに向かって口答えか?』
女の子が、ジトッとした目で見つめてくる。
「わ、わらわ?いつの時代の人間だよあんた」
『わらわは、天使だ。どの時代にもおり、どの時代にもおらん』
気怠い感じでため息をつく。
「は?訳分からん」
『わからんでよい。到底人間には理解されまい』
「なら、天使ならさ、なんか蘇らせたり出来るの?」
『出来んことも無い』
「なら、やって見せてよ!天使だって証明してみせてよ」
『もうそれはしておる』
「な、なんだって?」
『お前、一度死んでおろう』
「な、なんだってー?!」
「って、騙されるとでも思った?」
『お前が思うならそれでよい。また証明するだけだ』
そう言い放つと、俺の胸に、右腕を突き刺した。
地球が割れるような感覚に苛まれ、その場に転がった。
俺は、死んだのだ。
<旬-2>
Layer1:現代
Layer2;男、女
Layer3:空から女の子、風刺
この話は紛れもなくフィクションです。