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ホラーのようなホラーじゃない話。

物置に潜む何か

作者: 原雄一

 ある日突然、犬が転がり込んで来た。

 その子は黒い毛をしていたので、そのまんま『クロ』と名付けた。


 私の家族はみんな犬が大好きだ。みんな、と言っても私と弟とお母さんお父さんだけで、特殊な家族は一人もいない。お父さんは商社勤め、お母さんはどこかの会社でOLをしている。弟は幼稚園通いで、私は小学生だ。そこに突然、クロが飛び込んできた訳だ。

 実は私の家では、以前もう一匹犬を飼っていたのだけれど、その子は三週間くらい前にいなくなってしまった。突然マンションのエレベーターに飛び乗って、私が止める間もなく下りて行ってしまった。あとで必死になって探したけど、結局見つからなかった。

 クロはその子とよく似ていた。もしかしたらあの子の子供なのかもしれない。

 クロはどうやら男の子らしい。私には特に懐いていて、家族に勝ったみたいで嬉しい。クロは私が学校に行っていると終始つまらなそうにしているし、私が相手にしてあげないとすねる。かわいいけど、ちょっと困る。

 実は、クロが来る直前まで誰かに見られているような気がしていたけれど、クロが来たらそんな気はしなくなった。とは言っても、代わりにクロに見られているので、終わったのか代わったのか分からなかった。


 私たちは夏休みになったので、家族そろっておばあちゃんの家に出かける事になった。田舎に住んでいるおばあちゃんだ。クロは仕方ないから、隣の家の人に預けて行く事にする。隣の家の人はいい人で、快諾してくれた。

 私たちはおばあちゃんの家に着いた。ここまでは車で来た。多分今頃、クロはすねてるんだろう。

 おばあちゃんは今年で七十四歳。私からしたらすごい歳だけど、おばあちゃんは『まだまだ現役さね』と言って笑う。そんなおばあちゃんが私は大好きだった。

 私たちは五泊六日、ここに泊るつもりだ。その間クロが何をしてるのか心配だけど、まあ、しょうがない。


 三日目の夜。突然、おばあちゃんがいなくなった。

 二階建ての家だから、二階に行ったのかな……と思ったけど、違うらしい。じゃ、二階のトイレかな……ノックしてみるけど、反応はない。

 二階から降りるとき、物置みたいな部屋の小さなドアが少し開いてるのが、何故だか怖かった。

 私は両親に、おばあちゃん、二階にもいなかったよ、と告げた。そうすると二人は、おかしいな、なんて言い合いながら、自分たちも二階に上がっていった。私もついて行こうとしたけど、ああ、お前はいいよなんて言うから、居間で大人しくテレビを見ていた。

 そのまま、両親は帰ってこなかった。

 十時になっても帰ってこない。おかしいなと思って、私も二階に上がっていった。どっちにしても私の寝床は二階だから、上がらなきゃならないのだ。

 お父さん、お母さん、と呼びかけてみるが、返事はない。寝る部屋にもいなかった。となると、あと探してないのは……、あの、物置みたいな小さな部屋だ。

 私は恐る恐るそこに近づく。さっきよりも少し、ドアの隙間が大きくなっている気がした。

 私は取っ手に手を掛けた。深呼吸をして、息を整える。なんて事はない。ただの物置じゃないか。それに、お父さんとお母さんが帰ってこない方が困るじゃないか。そうやって自分を奮い立たせる。

 私は腹を括って、一気に扉を開けた。

 その瞬間、物置の中から、物凄い勢いで、何か(・・)が飛び出してきた。それは大きく口を開け、私は、逃げようとして、でも、その何かが速すぎて、私は、避けきれなくて……。

 ああ、おばあちゃんも、お父さんもお母さんも、こいつに食べられたんだ、って、そう思った時には、私も、みんなと同様に―――――、


 がぶり。

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