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episode:2-2

ノリコは更衣室で背中に背骨のようなコネクタの付いた水着の様なデザインのスーツを身に付ける。これが、RMを動かす為に必要なパイロットスーツである。

「よし!行くか!」

ノリコは更衣室の奥のドアを開き第一アリーナのグランドを踏んだ。


「ハァイ始めまして~皆さぁん!私がRMの実技を担当する(とどろき) セツラよん♡気軽に『セッちゃん』って呼んでね♡」

そこには、何ともマッスルな女性がいた。女性と言う事すら怪しいが、声の質からして一応女なのだろう…。

ノリコはそれ以上深くは考えない事にした。

「それじゃこれから皆には実際にRMフェラスに乗ってもらいます♡」

既に、グランドに人数分あるフェラスにその場の生徒全員が今までテレビや観客席でしか見ることしかできなかった本物のRMに息を呑む。

胸と頭が開き、コックピットのシートが露出する。

「こ、これが…本物のRMのコックピット…」

ノリコがフェラスのシートに座り、そこから4方向に伸びる筒に両手両足をいれる。すると、ハッチが閉まり、軽く身体を圧する感覚があった。コックピット内のエアバックが自分の身体を固定し、顔と両手両足首の先以外空間が無くなる。更に、脊髄コネクタに次々とプラグが接続されて行き、次の瞬間、ノリコの視界に点々と薄暗いライトの灯る機械的な密閉空間からアリーナの光景へと変化した。

「皆、準備はよろしいかしら?ちゃ~んと勉強してきた子なら分かってると思うけど、今あなた達が見ている景色はRMのDV(ダイレクトビュー)でRMが見てるものをそのまま脳に送信しているの。その仕組みは皆の着ているスーツの背中に付いてるコネクタをRMのプラグに接続して、RMと生体電気でいろいろな神経の情報を交換しあっているのよ♡」

皆、知識としては知っていたものの、実際にそれを体感するドキドキは自らの意識と反してなるものだ。

「じゃあ、早速だけど、コレから皆さんにはRMの基礎訓練をしてもらうから、私の後について来てね~♡」

轟先生に『はい!』と元気良く返事をする生徒達。その刹那。


ガチャン…!!

「え?」


1機のフェラスが何の前触れもなく倒れた。



学園島の中央にドンと佇む、貴族の様なガーデニングのされた庭の中にあるお屋敷。このまるまる一つが理事長室となっている。

屋上はヘリポートになっており、何かを待つ様に二人のパフィーと四人の黒服の男、そして、老人と言うには不自然な程若々しい老人がいた。そこにバラバラと騒音をたて一機の運送機が着陸する。

ハッチが開き、サングラスをかけた男がその運送機の中から現れた。

「お久しぶりです。美佳村先生。今は理事長先生…とお呼びすればよりしいでしょうか」

「美佳村先生…か。懐かしいね、その名で呼ばれるのは。あのヤンチャ坊やがこれ程にまで逞しくなるとは」

やがて運送機のプロペラが止まる。

理事長、美佳村はサングラスの男を連れ、屋敷の中へ戻る。

輸送機はそのまま、巨大なエレベーターと化したヘリポートによって地下に運ばれた。

美佳村は理事長室に戻ると、自分の座高よりも高い背もたれのある椅子に座る。

男の方はサングラスを外し、美佳村と理事長室の机をはさみそのむかいに立った。美佳村は机のパネルに指をかざすと一つのデータファイルが現れる。

そこから、三人の生徒の顔が表示された。

「コレが現段階での候補生だ」

男が生徒のプロフィールに触れると、それはホログラムとなり男はソレを手に取る。

「…二年のが混じっているようですが?」

「二年?…あぁ、彼女か」

美佳村は男の持っていたプロフィールの写真を見た途端、納得した。

「素晴らしいよ、彼女は。去年のグランディスベルカでは一年の部門で優勝し、更に並の上級生にも遅れをとらない。天才としか言いようがないよ」

「…」

「納得していないような顔だね」

「…いえ」

「嘘は良くないな。彼女は君との境遇によく似ている。だから、君が受けた"傷"を、彼女にも与えてしまうかもしれない。そう思っているんだろ?」

「ッ!?だったら…!!」

「でもね、ここはそういう場所なんだよ。それに“アレ”は事故だったのさ。不幸に不幸が重なった事故…」

「…」

「頼んだよ。君に彼らを、彼女達を預ける。君が守ってあげてくれ」

「………分かりました」

「うん」

男は、候補生のデータを自分の端末に移し、「失礼しました」とだけ告げて、その場を跡にした。

美佳村はそのドアが完全にしまるのを見届けると目を瞑り、ため息混じりに口を開く。

「だから君がそんなに気負う必要は無いんだよ。軌道 シュウイチロウ君」

その言葉は誰に届く事はなく、無へと帰っていった。


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