episode1:髪飾りの少女-1
一応、ストックがあるので、チョコチョコ更新します。
海の上を走る一風変わった形のリニアモーター、その中には、白と黒を基調とし赤いラインの入った制服を着た人々で満員だった。その中に、ひときわソワソワしている少女が一人。
後ろ髪の毛先が跳ね上がったセミロングの茶髪に大きな羽の形をし紅い球がはめ込まれた髪飾りを付けた少女だ。
その少女はさっきから頻繁に窓の外ばかりを見ているが。
しばらくすると、地平線の向こうに何かが見えてきた。
『間もなく、東京ランドマシン養育学園です。お降りの際は忘れ物にご注意下さい』
アナウンスを聞くなり少女は窓に食いつく様に外を見た。
「はぅわぁぁぁぁーー!」
彼女の視界に入ってきたのは、近未来的なデザインのビルが並び立つ『島』。いたるところに電子ボードが飛び交い、告知が流れ、“外”からきた人間にすれば、タイムスリップしたような感覚になるだろう。
「あ!アレは!?」
特に少女の目に留まったのが学校のグランドで走る回るRMの姿。
「たしかアレはFr-01フェラス、競技用にチューンナップされてるけど、やっぱ迫力~~~!!!」
少女は初めて見る生のRMに興奮していた。
今では誰もがRMを知っている。しかし一般人が実物を見る機会は都会の博物館でもなかなかそうはない。そして、人一倍RMに憧れをもっていた彼女にすれば、今まで溜め込んだ感情の火薬が一気に爆発したような物だ。
「あたしもアレに乗れるんだぁ」
そんな事を言っている間にリニアモーターは終点のプラットフォームに到着。次々にもうじき生徒になる人達が下車していく。
「くぅーッ!!、ついに来たああぁぁーーーーッ!!!」
はしゃぎ回る少女の目の前には左右にドンと高層ビルの様な“校舎”が建っている。
日本領土の最南端にある、東京ランドマシン養育学園。RMパイロット及び専属メカニックの養成の為に設立され、島自体が学舎であり、島の半分から男女別々に別れている。右側が女子部、左側が男子部。唯一男女共有できるのが外と学舎を継なぐココ、プラットフォームと島の最深部にある巨大アリーナだけ。
大まかなカリキュラムは普通の高校と大差はないが、明らかに他の学校と違うのはRMを使えるという事だろう。授業科目や部活動にまで取り入れられていおり、コレを目的にこの学園に志望する生徒は少なくは無い。この少女の様に。
「天動 ノリコ!いっきまーす!!」
時は入学式。天動 ノリコを含め、様々な物語がここから始まる。
episode1:髪飾りの少女
午前中の入学式が終わり、新一年生の各々は校舎の中を見学する事になった。にも関わらず、新入生の人口密度はほとんどと言って良い程変わった様子がない。当然、彼女等の目的は、この学園の目玉でもあるRMデモンストレーションの試合を見るために、この対戦用アリーナの観客席にいるのだから。かく言うノリコもその内の一人である。
「うわぁ…もう人がいっぱい。前の方が見えないよ…」
しかしノリコはここまできたはいいが、野次馬の多さに四苦八苦していた。あっという間に四方八方を塞がれ、全く身動きの取れない状態にある。
「あ~ん、ちょ!どけどけどけぇ!通れへんやろ!道開けんかい!」
ふとノリコより更に後ろから活気の良い関西弁が聞こえた。その声は段々前の方へと来ているらしく、ついにはノリコの真後ろの生徒が強制的に除外された。
「きゃ!」
それにより、ノリコは空いたスペースを埋めるかの様に後ろへ突き飛ばされる。バランスを崩しつつも、クルッと半回転をして体制を整える。するとそこには…
(で、でっかい)
薄っぺらな自分のモノとは比較にならない程の完熟したメロンが二つ。
「ん?あんさん、確かウチと同じ組の生徒やなかったか?」
とその女の子はノリコの眉間の前で指差し、たずねてきた。少し視界をあげると、長い黒髪を後ろでひとまとめにした黒縁メガネの女の子と目が合った。
(え、えっと、確かあたしの隣の席の…)
「綺堂 エリカさん?」
「おお!せやせや!やっぱりウチのクラスメイトやったんか!」
ノリコがエリカの名前を言い当てると、エリカは上機嫌な顔をして、ノリコの手をとった。
「ふえ?!」
「何しとんねん!もうすぐ試合が始まってまうで!グズグズせんと一番前の位置をゲットや!」
ノリコはそのままエリカに引っ張られ強引に前へと進撃する。何かすごい罪悪感にノリコは感じてしまった。
「到ちゃ~く!」
そんな事はお構いなしと気楽なエリカの声が聞こえる。気が付くとそこは観客席の最前列。アリーナのグランドの方には次々とRMがそれぞれの赤と青の識別ランプを付け、立ち並んでいた。
ルールは3対3の小隊規模のチーム総力戦。先に相手のRMを全滅させたチームの勝ちとなる。
「あ、一体がけ他のと形が違う」
ノリコが指差したのは左の手前に位置するRM。たしかに他のと比べると、ヘッドとボディがエッジ型になり更に額の部分から角の様なものが伸びている。
カラーリングも茶色を基調としたフェラスと違い、赤い色を基調にピンクのラインが入っていた。
「ん?あぁ、あれか?あれは二年生の中でもトップクラスを誇るっちゅう。桜崎 カオリ先輩のカスタム機や!ヘッドとボディ以外、フェラスのパーツやろ?」
「本当だ」
そんな雑談をしている内に、両チームとも、スタート地点に到着する。次の瞬間、どこからかガコンっという機械的な音が響いた。『来た!』と誰もがそう思っただろう。そして、突如何もなかったはずのグランドからボロボロの高層ビルが次々と生えてくる。
数秒後、ただ単にだだっ広かっただけのアリーナのグランドは所々怪しい黒煙が立ち昇る廃墟へと早替わりした。
「す、スゴイ。コレがサブスタンシェルホログラム!」
「せやなぁ…。頭では分かってはいても、直で見てみるとテレビなんかじゃ伝わらへん迫力があるなぁ。ほんまもんと全然変わらへんがな」
ノリコとエリカに同意する様に感性の声が広がる。
「あれって本当に触れるんだよね?」
「せや。コンピュータの設定画面で大きさ、硬さ、強度、透明度、どんなモンでもちょちょいのちょいで作れてまう。もはや魔法みたいな代物やで…お!そろそろ始まる見たいやな」
皆、気を取り直し、それぞれのRMに注意を戻す。
カウントが始まり、無機質な電子音がソレを伝える
『…3、2、1、…GO!』
次回、バトル