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1-4 迷宮内休憩所


 昔の研究家は言った。


 「全ての迷宮はどこかで繋がっている」

 

 と。


 ばかばかしいと民は笑った。しかし冒険者は誰一人とて笑うことはなかった。

 ある迷宮で消息を絶った旅団クランがいた。数週間後に遺体は見つかる。遠く離れた地の迷宮で。

 ある旅団が大型モンスターの撃退に成功した。片腕を落としたことで逃げ出したのだ。数日後、別の迷宮で片腕のない大型モンスターが確認された。



 冒険者たちは知っている。迷宮は繋がっている。と。





 「ってなわけでさ、王都のほうの迷宮でごたついてるらしいのよ。王都からの接続の可能性ってここもそれなりでしょう。ちょっと警戒強めたほうがいいかも」


 迷宮内のモンスターが沸かないスペース。冒険者たちが休憩所と呼ぶ場所でシーラは顔なじみの冒険者たちと話していた。


 「おいおい。そりゃ本当か?ってかごたついてる内容にもよるだろ」


 アリスを縦と横に2倍にしたような体格の男が、大剣の手入れをしながら眉をひそめた。休憩所ないにいる誰もが皆、同じように武器の手入れをしながら顔をしかめつつ話を聞いている。


 「守備隊が迷宮にかかりきりになって王都の治安が悪化してるらしいわ。屋台商店は結構な人数が王都から離れてるって」


 「そういえば最近、こっちの守備隊が王都に派遣されてなかったっけ」


 武器の手入れの終わった冒険者たちが続々とシーラの周りに集まってくる。


 「じゃぁなんだ?守備隊がそっちにかかりきりになる規模ってぇと・・・」


 「・・・・・・特級危険指定種。それかモンスターハウス」


 ポツリとアリスが答えた。


 「んだぁ?珍しいじゃねぇか。姫が自分から話に加わるなんて」


 大男の冒険者が笑いながらアリスの頭をガシガシと撫でる。アリスは鬱陶しげにその手をつかむと、掴む力を上げていく。


 「いででででででででででででっ!!」


 「あんたも懲りないねぇ。いっつもそうやってひねられてるじゃないか」


 男は同じ旅団の仲間に笑われながら、アリスの手形のついた手首をさする。


 「いやぁ。わかっちゃいるんだがよ?クニの妹が小さい頃に同じように嫌がってたのが懐かしくてなぁ。思い出してついやっちまうんだ」


 今じゃ嫁いで幸せにやってるんだがな。と笑う男に、皆笑みを浮かべる。危険に身をおくからこそ、幸せの話は皆で分かつのだ。


 「まぁ、姫のいってる通りなんだが、王都の守備隊だけじゃなんともならねぇってんなら確かにその二つだな。撤退した特級は大体がランクの低いところを目指す。王と周辺だと、ここと、王都はさんで向こうだ。モンスターハウスなら逃げた奴らは無作為に周囲に逃げる。どっちにしろ警戒してそんはないな」


 「この間、わたしらが暴れたから特級の餌になるようなのは少ないと想うんだけど、一応ね」


 シーラも剣を鞘に収めて、背中に寄りかかってきていたアリスに体重を返す。互いに寄りかかる形になるが、長い付き合いからバランスが崩れることはない。


 「それにほら。最近おっちゃんのところに新米入ったじゃない?」


 「あぁ。あの若いのな。アレは伸びるぜ。いい剣筋してた」


 「そうなの?まぁ、そんなわけで若いのを早死にさせないためにも、要警戒ってことで」


 おう。と皆でうなずきあって、休みなおす者、動き出す者に分かれていった。
















 ちなみにこの守備隊大量派遣から来る騒動は、数日後に解決することとなる。

 なお、事の真相は、迷宮視察に来ていた防衛大臣の不倫相手が、大臣を困らせるために重要書類を持って迷宮に逃げ込んだだけだったとか。しかもそれが迷宮探索に長けていた元冒険者だったため、確保に時間がかかりすぎたと言う、なんとも情けない話であったとか。


 もちろん大臣は更迭された。

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