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1-1 打撃特化冒険者

 ゴリッ ゴスッ グチャッ ゴリュッ 


 薄暗い洞窟。肉と骨を殴打する音が響く。低く鈍い音が耐えることなく、合間合間に殴打されているゴブリンの悲鳴・・・ではなく呻きがかすれる様に聞こえる。


 ゴスッ ゴリッ グチャッ 


 「・・・しぶとい」


 ゴブリンを殴打していた冒険者がボソリと呟いた。女の声。年若い。それこそ少女のような声。声のままの少女の冒険者。深い水色の長い髪を高い位置でポニーテールにし、子供と見間違うほどの低い身長を精一杯振り絞り、手にした武器をゴブリンに振り下ろしている。


 しかしして、ゴブリンに止めを刺さんとするその表情は無表情。感情でもないのではというほど、表情を変えることなく淡々と殴打し続ける。



 「・・・いい加減くたばれ」



 再びボソリと呟く内容は、見た目に反して物騒である。


 だがゴブリンもついに力尽きたらしく、呻きもかすかな反応も返さなくなった。


 「やっと終わった」


 額に浮かんだ汗を軽くぬぐいながら、少女は呟いた。


 「なによ。珍しく時間がかかったじゃない。アリス」


 薄暗かった少女の周りに明かりが近づいてくる。灯りの魔道具に照らされながら一人の冒険者が歩いてきた。緋色の髪をショートカットにした勝気そうな女冒険者だ。腰に剣を下げ、革の胸当てを装備しているところから剣士だとわかる。


 「・・・シーラ。ちょっと打点がずれただけ。次はちゃんとやる」


 そういいながら魔道具の光に照らされた少女冒険者→アリス。そのいでたちは剣士や格闘家、武僧ではなく魔術師のそれである。冒険者向けではあるが、黒を基調としたローブに杖。杖はゴブリンの血にまみれているが。まごうことない魔術師だ。


 「次のは私の獲物~。交互って約束でしょ。ほらアリス、拾う物拾わないと」


 女剣士→シーラに言われ、アリスはゴブリンの死骸に左手につけた装飾のない腕輪をかざした。腕輪は淡く光り、ゴブリンの死骸を黒い霧に変えて吸収した。死骸のあったところには、数枚の金貨とゴブリンの使っていた短剣が残されていた。


 「・・・おわった」


 「はいはい。それじゃあさくさくいこ~」


 二人は洞窟のさらに奥→ダンジョン3階層【岩窟】から4階層【湿地】に繋がる階段へと歩き始めた。



 打撃特化冒険者 ジョブ《魔術師》アリス


 コレは彼女の物語である

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