0-0 昔語り
突如、世界に魔王が誕生した。原因も理由もない。理不尽な存在は世界に混沌をもたらした。
最初だけは。
人は強かった。冒険者という職にいる者たちは、常に自身を鍛え世界を歩きわたってきていた彼らは、魔王の生み出したモンスターをいとも簡単に駆逐して見せたのだ。
魔王はモンスターの強化を図った。ダンジョンを作ったのだ。最初のダンジョンには大量のモンスターを放り込み、同士討ちをさせることでより強いモンスターを生み出した。
強い個体が増えてくると、世界の各地に冒険者を誘い込むダンジョンを生み出した。誘い込むエサは様々なアイテムだ。武器防具装飾具。そして繁殖数の少ない薬草や、採掘数の少ない鉱石など。
冒険者達はこぞってダンジョンに潜っていった。しかしそこには今までにない強さを誇るモンスターの群れ。人はこのときになって初めてモンスターに苦しめられ、恐怖した。強い冒険者を捕食したモンスターたちはさらに強くなり、ダンジョンの外にその活動域を広げ、人々をさらに苦しめることとなった。
モンスターの恐怖に怯える日々が長く続いた。人々は心身ともに疲弊し、魔王の征服は着実に進んでいた。
そこに一人の青年が現れた。物語の主人公のごとく、古く語られる英雄譚の英雄のごとく。人々の希望となり、魔を駆逐していった。
コレはそんな青年の冒険譚である。
と、言うのは千年以上昔の話。青年→勇者によって魔王は倒され、世界に残ったダンジョンに潜って冒険者の大半は生活をしている。そんな時代。 ようはするに平和だったりする。