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ゆいこのトライアングルレッスン

ゆいこのトライアングルレッスンthe First~初めてのひとつ屋根の下!?~

作者: 佐藤そら
掲載日:2026/09/17

今回は、これまで『なろラジ』にて演じて頂いた『ゆいこのトライアングルレッスン』

ゆいこのトライアングルレッスン スピンオフ~ゆいこが転生したら○○だった件~ 連載花魁編

ゆいこのトライアングルレッスンD〜ひろしとプラネタリウム〜

ゆいこのトライアングルレッスンU2〜パティシエひろしのほろ苦い恋〜

ゆいこのトライアングルレッスンB〜虹色ハッピーバースデー〜

ゆいこのトライアングルレッスンM〜図書館〜

を合わせて読んでいただくと、より三人の人生を感じていただけます!

「えー!? 入居できない!?」


 わたしは思わず、声をあげた。

 この春、大学1年生になるわたしは、晴れて一人暮らしをすることに。

 わたしは、大人になった気分でウキウキだった。


 しかし、まさかの事態が起きたのだ。

 設備交換の工事が長引き、入居日がずれることに!?


「どうしよう……。せっかく、また近付けたと思ったけど……」


 まだ寒さの残る夜の公園で、わたしはブランコに揺られていた。

 ハムみたいな満月が、夜空からわたしを見つめている。


「ゆいこ!」


「へっ……?」


 声の方を振り返ると、そこにいたのは、ひろしだった。


「ひろし!?」


「何かあったのか?」


「え……。なんで?」


「ゆいこがナイトブランカ―なんて、何かあったってことだろ?」


 ひろしは、何でもお見通しだった。

 わたしは、素直に訳を話した。


「つまり、今夜は行くところがないってことか」


「うん……」


「じゃあ、うち来るか?」


「え! ええっ!?」


 まさかの展開で、わたしは、ひろしが一人暮らしをする部屋へとお邪魔することになった。



「お邪魔しまーす……」


 部屋に一歩足を踏み入れる。

 それだけで、妙にドキドキした。


 思わず、まじまじと部屋中を見てしまう。

 男の人の一人暮らしって、こんな感じなのかな?

 ひろしの部屋はシンプルで、女っ気も感じられない。

 わたしは何故だかホッとしていた。


「荷物、適当に置いてくれていいから」


「うん、ありがとう。洗面所、借りるね」


 わたしは手を洗おうと洗面所に向かった。

 洗面台には、歯ブラシが2つ……。


「2つ!?」


 思わず声に出てしまった。

 急激に心臓がバクバクと音を立てる。体が熱くなった。

 なんでだろう、部屋に入った時よりも動揺している自分がいる。



「わたし、ホントにここ来ちゃってよかったのかな……?」


「ん? 何を今更? 俺達、気を使う仲でもないだろ?」


「それは、そうだけど……」


 ひろしは、わたしを部屋にあげても動じていない様子だった。

 そして、冷静なひろしに、わたしはショックを受けていた。


 その後、わたしはシャワーを借り、湯船であたたまった。

 考えたくないことばかりが、頭の中をぐるぐると駆けめぐる。


 ×  ×  ×


「お先に、お風呂ありがとう」


「おう」


 ひろしから、素っ気ない返事が返って来た。

 これがたくみだったら、何か言ってくれただろうか?

 そんなことを考えながら、わたしは荷物の整理をする。


「ゆいこ、そのままだと風邪ひくぞ」


「ん? ちょっと、これだけ……」


「ほら、おいで」


「え?」


 言われるがまま、わたしはひろしのもとへ行った。


「髪!」


「かみ?」


「乾かしてやるから」


 次の瞬間、ひろしの手にあるドライヤーから風が出た。


「ちょ、ちょっと! 髪くらい、自分でできるから……!」


「ん? なんか言った?」


 思わず言い返してしまったが、わたしの声はドライヤーの音にかき消された。



「よし、乾いたぞ」


「あ、ありがと……。ひろし、あのさ……」


 その時、ドタドタと誰かの足音が近付いて来た。

 扉が勢いよく開く。


「ゆいこ!!」


「た、たくみ!?」


「ったく、ゆいこ来てるなら、ひろしもさっさと連絡よこせよな?」


「わりぃ……」


「ゆいこも、近くに来てるならすぐ連絡しろよ! 水臭いなぁ」


「ご、ごめん……」


「へへっ。久々だな、この3人が揃うの」


「そうだね」


 にこりと笑ったたくみは、相変わらずだった。


 わたしは、ひろしに肝心なことを聞けないまま、夜は更けていった。


 ×  ×  ×


 風呂上がりのたくみが、わたしの前に現れる。


「ちょっとぉ! 上も着なさいよね!」


「ん? ああ、ごめん。いつものクセで」


「いつもの!?」


「どうだ? 俺は水も滴るイイ男だろ?」


「もう! 何言ってんのよ!」


 わたしは、たくみの肉体美から思わず目をそらした。


 ×  ×  ×


 就寝前、たくみが洗面台にある歯ブラシに迷いなく手を伸ばした。


「え!!」


「ん?」


「そ、それ、たくみが使っていいのぉ!?」


「だって、俺のだし?」


「ええっ!?」


「俺、結構ひろしの家に来るからさ、置きブラシ!」


 なんだか、体の力が一気に抜けた。

 鏡を見ると、たくみの横で、一緒に歯を磨く自分の姿が映っている。

 一緒に暮らすって、こんな感じなのだろうか?


「彼女だと思った?」


「へ……!?」


「歯ブラシ」


「ま、まさか!」


 鏡は、わたしの隠し切れない動揺を映していた。



 その夜、わたしはひろしのベッドを借りて眠りについた。

 それはまるで、ひろしに包まれているかのようで、わたしは全然眠れなかった。


 ×  ×  ×


 翌朝、わたしが起きる頃には、ひろしが朝食を作っていた。


「ひろし、おはよう」


「おはよう、ゆいこ。眠れたか?」


「う、うん……。まぁ……」


 ひろしの寝ぐせが、愛らしい。

 幾度となく言ってきた『おはよう』なのに、この日の朝は、それがとても新鮮だった。


「たくみは?」


「あっちのソファーで、まだ寝てるだろ?」


「そっか」


「ホントは、たくみに連絡しなくてもよかったんだけどさ……」


「えっ?」


「二人だと落ち着かないかなって思って……」


「そ、そんなことないよ!」


「いや、俺が……」


「へっ……!?」


「結構、冷静装うのも大変だったんだぞ?」


 ひろしの言葉にドキッとする。

 うそぉ! あんなに動じてない感じだったのにぃ!?


 なんだか、その場にいられなくなったわたしは、たくみを起こしに行った。


「ほら、たくみ、朝だよ!」


「ん……」


 まつ毛長いなぁ……。

 たくみの寝顔に目を奪われかけ、わたしはハッとした。


「ゆいこ……ずっとそばに……」


「へっ!?」


 なんだ、寝言か。

 それにしても、一体どんな夢を……?


 ×  ×  ×


 昼過ぎ、わたしは、たくみと共に買い出しへと向かった。


「ちょっと、買い過ぎちゃったかな?」


「にしても、見事に全ブルボンだな!」


「ホントだ!」


 わたし達は、顔を見合わせて笑った。


「ゆいこが来たからケーキ作るって、あいつ張り切ってたけど、マジでパティシエにでもなるのか?」


「ひろしのケーキ、美味しいよね!」


「そうだけど……」


 たくみと並んで歩く帰り道。

 たくみはブツブツ言いながら、わたしの隣で買った荷物を持ってくれている。


「玄関にあった、あのミズクラゲの傘、随分と錆びちゃったな」


「ああ、たくみが誕生日にくれたやつね」


「あの四つ葉のクローバーは、永遠だと思ってたけど……」


「え……」


「なぁ、ゆいこ。俺って、頼りないか?」


「へっ!?」


「困った時は、結局いつも、ひろしだもんな……」


「そんなこと……」


「第二ボタン、あげたのは俺なのに……」


「たくみ……」


「ひろしは必ず、ゆいこのことを迎えに行く。塾の帰りも、雨の図書館にも、夜の公園にも……」


「それは……」


「きっと、俺らが江戸に転生したとしても、ひろしは必ず迎えに来てくれると思うぜ?」


「ちょっと、何それ?」


 わたしは思わず笑った。


「ゆいこ、待って!」


 たくみが急に、わたしの腕を掴んだ。


「な、何!?」


 突然、たくみの顔がわたしに近付いた。


 え! ま、待って!?


 たくみの手が、わたしの髪に触れる。


 ま、まだ、心の準備が……!


「よし、とれた!」


「へっ?」


 それは、桜の花びらだった。


「あ、ありがと……」


「ドキッとした?」


「な、何言ってんのよぉ!」


「へへっ。俺はこのまま、ゆいことひとつ屋根の下で暮らしてもいいけどな?」


 たくみはそう言うと、再び歩き出した。


「ちょっと、待ってよぉ!」


 わたしは慌ててたくみを追いかける。


「ゆいこ、入学祝いに新しい傘買ってやるよ」


「ホントに!?」


「今回も、半分は俺のな?」


 たくみはそう言うと、ニカッと笑った。



 わたし達の春は、もうすぐそこまで来ているのだろうか?

巽さん!お誕生日おめでとうございます!!

この世界に、“トライアングルレッスン”という、最高の企画を生み出してくれてありがとうございます。

感謝の気持ちを込め、今回はこれまで演じて頂いたストーリーを繋げ、ラジオの小ネタを踏まえて、制限なく、自由に書かせていただきました!!

ラジオのアーカイブが全て消えてしまうのがつらいです……。


今回は、一度は書きたいと思っていた、ひょんなことから“ひとつ屋根の下”編です!

リスナーだった皆様に、楽しんでいただけたら嬉しいです。


いつかまた、『小説家になろうラジオ』が聴ける日が来ることを願って。

トライアングルは永遠に……!!

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― 新着の感想 ―
知ってるエピソードが出てくる度にニヤリとしてしまいました。 この際、三人で暮らしてしまえーっと思っちゃいますが、そんなことになったら、キュンだらけで心臓が持たないですねw
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