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50%の詩  作者: オクト
4/6

第3章「観測者」

メトロノームは、一体何を、表しているのか…

白い扉の向こうから、規則的な音が漏れていた。


カチ、カチ、カチ――メトロノームの針が刻む音。


律は息を潜め、ガラス越しに室内を覗き込む。

白とガラスで構成された無機質な空間。

その中央に、針の動きと同期する心拍モニターが光っていた。


「……ここが、湊の名前が残っていた場所」


声にならない呟きが、喉奥で途切れる。

ドアノブに手をかけた瞬間、背後から声が落ちた。


「勝手に入るのは、記者の特権か?」


振り返ると、白衣の男が立っていた。御厨(ミツクリ) (イツキ)。境界を“観測する”研究者。

律は睨み返し、低く答える。


「特権じゃない。必死なだけだ」

「必死は、観測を狂わせる」


御厨の声は冷たい水のように、律の耳に流れ込む。


「湊はどこだ」

「境界にいる。希望と絶望の比率が、均衡を保ったまま」

「……詩人みたいなこと言うな」

「詩じゃない。数値だ」


律は視線を装置に移した。メトロノームの針と心拍が、まるで同じリズムで呼吸している。


「……音が、呼吸と同じリズムで……」

「境界は、揺らぎを測れる。君も、もう半分、踏み込んでいる」


その言葉に、律の指先が机を掴む。だが、視界の端で奇妙な遅れを見た。

自分の指が、ほんの一瞬、遅れて映る。


「……影だけじゃない。俺自身が、遅れてる」


御厨は淡々と続ける。


「君も、観測されている」


律は息を呑み、低く問い返した。


「……誰に?」


メトロノームの音が、答えの代わりに響き続けていた。

読んでくださりありがとうございます!

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次回更新予定は1/23です。

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