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50%の詩  作者: オクト
3/7

第2章「ダイバー」

ニュアンス表現が、まだまだ足りない…そんな感じ…

雨は、さっきまでの激しさを忘れたように、静かに路地を濡らしていた。

律はカフェのドアを押し、夜気に肩をすくめる。

スマホの画面には、湊の最後の位置情報が点滅している。

その点は、現実の地図の上で、もう意味を失っていた。


――あの影、波打たなかった。


俺の目が狂ってるのか?

胸の奥でざらつくモノローグを押し殺し、律は歩き出す。

雨粒が街灯に反射し、路地の奥で光が揺れる。


「……探してるんでしょ?」


背後から声が落ちてきた。律が振り返ると、傘を閉じる音とともに、少女が立っていた。

黒髪を後ろで束ね、濡れたアスファルトに影を落とさない


――いや、影はある。ただ、揺れていない。


「は?」


律の声は、思ったより低く響いた。


「湊。あなたの弟」

「……誰だ、お前」


少女は答えず、律の視線をまっすぐ受け止める。その目は、夜の水面みたいに深く、揺れなかった。


「選ぶのは、落ちる前じゃない。落ちたあと」

「何の話だよ」

「境界の話」

「境界? オカルトか?」

「オカルトなら、戻れないよ」


律は鼻で笑った。


「俺は記者だ。証拠がない話は信じない」

「証拠なら、すぐ見える」


少女は掌を上に向けた。その瞬間、空気が薄く波打った。

街灯の光が歪み、雨粒が一瞬、静止したように見えた。


「……何だ、今の」

「扉の端っこ。触れたら、落ちる」

「落ちるって……どこに」

「希望と絶望の境界」


律は乾いた笑いを零した。


「詩人かよ」

「詩じゃない。条件」

「条件?」

「50%。希望と絶望が半分ずつ。ちょうどね」


律は言葉を失った。


――希望と絶望が半分?


そんなバランス、俺にはない。でも、湊を見つけるなら、何でもやる。


「あなた、もう片足突っ込んでる」

「……何でわかる」

「目が、揺れてる」


律は無意識に視線を逸らした。


「……気味悪いな」


少女は微笑んだ。


「じゃあ、覚悟して。落ちたら、戻るのに代償がいる」

「代償?」

「何かを置いていく。それが、扉のルール」


少女は傘を肩にかけ、歩き去った。律は水たまりに映る自分の影を見下ろす。


――俺は、何を置ける?


遠くで、メトロノームの音が微かに響いた。律は顔を上げる。夜の路地は、何も答えなかった。

読んでくださりありがとうございます!

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次回更新予定は1/16です。

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