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50%の詩  作者: オクト
2/7

第1章「消えた足跡」

雨が降っていた。

街灯に照らされた粒が、夜の空気を切り裂くように落ちていく。

朝霧(アサギリ) (リツ)は肩にカメラバッグをかけ、スマホの画面を覗き込んだ。

最後の位置情報は、この駅前で途切れている。


「……ここで消えた。(ミナト)、お前どこに行った」


声は雨に溶け、誰にも届かない。

律はビルの裏路地へ足を向けた。

監視カメラの映像を確認したのは、さっきカフェの奥だ。

湊が歩いている。次のフレームで、影が欠けていた。

人影はある。だが、足元の黒がない。


「影が、ない?」


律は眉をひそめ、映像を何度も巻き戻した。

編集じゃない。これは、生の記録だ。

路地に立ち、律は自分の影を見下ろした。

街灯に照らされ、濡れたアスファルトに黒が伸びる。

一歩、踏み出す。

影が、わずかに遅れて動いた気がした。


「……気のせい、だよな」


雨粒が肩を打つ音が、やけに遠く感じる。

カフェに戻ると、証言者の配送員が待っていた。


「変な感じでしたよ。音が……止まったみたいで」


律は鼻で笑った。


「音が止まる?ホラー話は要らない」


だが、心の奥で何かがざわつく。

ノートを開き、“影 欠落”と書き込む。

湊の名前を消せない。消したら、終わりだ。

窓の外、雨粒が静止して見えた。

瞬きすると、また落ちていく。


「……今、止まった?」


律は息を呑む。

カフェを出ると、傘を差した少女が視界をかすめた。

足元の水たまりが、波打たない。

律は立ち止まるが、少女はすぐに人混みに消えた。

夜の路地で、律はスマホを握りしめる。


「影が消えるなら、俺が追う。湊を、引き戻す」


遠くで、メトロノームの音が微かに響いた。

誰が、観測している?

雨はまだ降り続いていた。

読んでくださりありがとうございます!

面白かったらブックマークや感想をいただけると、とても励みになります。


次回更新予定は1/9です。

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