聖地巡礼 選抜クジ
2025回卒業試験受験者が賽の河原に集合した。その数なんと2万人。これでは地獄の機能に支障がでてしまう。それで考えだされたのが『選抜クジ』だ。これから卒業試験で聖地を巡るのに、運がなければ到底合格できない。まず、初回から運のない奴は弾き出される。
「受験者諸君、入り口で自分が引いた番号札は手に持ってるかい?それでは選抜された者を決める。3,2,1。ハイっ今番号札が消えて無くなってしまった人。残念だったね。じゃあ帰り道は案内に従って帰ってね」
番号札が手元に残った者は喜びの雄叫びを挙げているが、数回この試験に挑んだ猛者達はすぐに移動して地獄の渡し守のすぐ近くに移動している。私もそう言うこともあろうかと渡し守と共に準備をしていた。勿論、渡し賃を上乗せすることは必須だ。
「ハーイ、残った人。渡河して先着順1000名が卒業試験に挑めるよ。遅れた人は残念だったね、次回に期待しようね」
河原は阿鼻叫喚の渦に巻き込まれる。さっさと渡し船に乗り河を渡っている者。乗っている死者を押しのけ他の受験生と共に渡し船に乗って漕ぎ出す者。一艘に何十人となく乗り込み沈んでゆく者。舟は面倒と泳ぎ出す者。ちなみに上空には試験官が待機しており、飛翔してきた者をはたき落としている。(これはあくまでも飛行の力を使わずに渡れという暗黙の了解である。もし飛翔能力で渡ったことがバレてしまうと大幅な減点となる)
それだったら、最初から渡っておけばいいんじゃね。と考える者もおるだろう。甘い、甘いよ君。まず選抜クジが始まる前に渡河した者は失格。その上、三途の川を逆方向に渡ることが出来ない。つまり、地獄の裁定が待っており、試験でズルした責を取らされ地獄のお勤めが課されるのだ。
無事対岸へたどり着き、試験官に古い番号札を渡し、新しい番号札を貰う。この番号が正式な受験番号になる。私の場合、割合早く着いたので、正式な受験番号は62番だった。
騒ぎが収った後、卒業試験受験生1000名が試験官達の前に勢揃いする。
「はい、それではこれから訪れてくる死者に1人づつついて閻魔様の所に行って、どこの地獄に行くか裁定して貰って下さい。受験者はそのままその死者と共に裁定された地獄へ行って下さい」
皆、わらわらと死者に取り付き閻魔様の裁定を待つ事となった。何しろ1000名だ。相当な待ち時間となる。ついた死者の情報を得るのはこの時間だ。
怖~い妖怪が満面の笑みを湛えて死者の情報を聞き出すのだ。
「ねえ、君、現世で何やったの?」
「お、俺、大したことしてないっすよ。可愛い下着が大好きで・・・」
「ふ~ん、それでそれを盗んだわけね」
「は、はい。マンションの高層階に盗みに行ったらあやまってベランダから落ちちゃって」
「だそうだよ。そっちの子はどう?」
「ギャハハハ、だっせー。俺様のついている奴は強盗殺人だってよ。こりゃー大分深いとこに行くなあ」
なんて会話があちこちで見られる。
それぞれの行く先で課題が決まってくるのだ。待ち時間は有効活用しないとね。