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第13話 現状分析

新作長編小説の連載をスタートしました!

現代のオタク女子高生が80年代にタイムリープ!しかもなぜか男子大学生に!?

男子ヲタの歴史を知らない彼女は、次々とオタク文化の変化を目撃、体験していきます。

なぜ彼女はタイムリープしてしまったのか?

はたして元の時代に戻ることはできるのか?

毎週火曜日更新予定です。よろしくお願いします!

 その日の夜、紗菜は、いや大輔は自宅に戻っていた。彼の住居は、大阪の巨大なベッドタウン・千里ニュータウンに建つ一戸建てだ。その場所は、桃山台と千里中央の中間あたりに位置する、それなりに高級住宅地と言えた。

 彼はそこで、両親と7つ下の妹との四人暮らしである。

 大輔の両親は、二人共会社を経営していた。

 父は貿易関係の会社、母はファッションブティックチェーンの社長だ。おかげで大輔は、金持ちとは言わないまでも、物心ついた頃からあまり大きな苦労をしたことがない。苦労といえば大学受験ぐらいだが、当時の浪速芸術大学は少し特殊で、学力テストが存在しなかった。大輔が入学したデザイン学科の入学テストは実技のみ。つまり、彼は絵を描いて大学に合格したのである。

 実は大輔はあまり絵が得意ではないのだが、美術学科と違いデザイン学科の試験は、理論的にデザインを学んでいればそんなに難しくはなかった。

 やはり、大した苦労はしてこなかった人生なのだ。

 そんな記憶はしっかりと紗菜の中にある。

 だがその意識は大輔のものと言うよりも、現代からタイムリープしてきた紗菜のものと言ってもいい状態だ。

 記憶はあっても実感が無い。

 そんな感じなのだ。

 紗菜はふうっと大きく息を吐いてから、ゆっくりと自室を見渡した。

 まさに典型的なオタクの部屋である。

 当時は一家に一台リビングルームだけに存在していた大型のテレビ。

 その上にはレコードを聞くためのオーディオセット。

 そして当時のアニメに関する資料やグッズで溢れかえっている。

 紗菜にとって、それは宝の山のように見えていた。

 黒本と呼ばれる「未来少年コナン」の資料本。アニドウ の「FILM 1/24」の別冊だ。宮崎駿監督の初監督作品、未来少年コナンの全てが網羅されたような貴重な豪華本である。そんなものが、無造作に本棚に並んでいる。他にも「宇宙戦艦ヤマト」の分厚い箱入り3冊組の資料集など、稀少本の山なのだ。

「すごい……これ売ったら、いくらになるだろ」

 もちろんそれは、現代で売ったら、ということである。

 紗菜は以前この手の本を、秋葉原の古書店で見たことがあった。それらは数万円から、高いものだと十万円以上の値がついていた。

 まぁ、こちらの物を持ったまま現代に移動できるとは思えないので、まさに絵空事ではあるのだが。

 そんな宝たちをじっくり見ていると、時間がいくらあっても足りるはずもない。紗菜はまず、自分が置かれている状況をよく考えてみることにした。

 まずポイントなのは、どうやって現代に戻るのか、その方法は分かっていない。

 もちろんその逆も同様だ。

 この状態だと、またいつ向こうに移ってしまうのか、気が気でならない毎日となってしまう。もちろん、なんとなく予感はある。

 睡眠だ。

 あるいは気絶、と言ってもいいかもしれない。

 それが時間移動の鍵になっていることは間違いないように思われた。

 次に大切なのは、大輔である自分の生活、つまり友人たちとのオタク活動が、予想以上に楽しい、ということだ。ミサイルパンチとしてビデオ上映会もやってみたいし、同人誌を作ってコミケにも出てみたい。

 そんなことを考えると、紗菜の心はワクワクしてくるのだ。

「こりゃ、両方の生活を楽しんだ方が勝ち、ってことかも」

 そう思う紗菜だが、ひとつだけどうしても気になってしまうことがあった。

 現代での大輔のことだ。

 メールを出したら返事が来た。

 つまり現代の時間では、紗菜と大輔の二人共存在しているということになる。もちろんこの80年代では、紗菜はまだ生まれていないのでその心配はない。だが、現代に戻った時に二人が出会った場合、いったいどうなるのか?

 どんなことが起きるのか?

 同じ記憶と意識を持った人間が、同時に二人存在してもいいものだろうか?

 全く想像すらできないだけに、少し怖い。

「ま、いいか」

 だが、天性の楽天家でも有る紗菜だ。

 とりあえず今は、80年代を楽しむことにした。

「とりあえず柴本くんか橘くんに、電話してみようかな」

 そう思い、スマホを取り出そうとする紗菜。

 もちろんこの時代にスマートホンは存在しない。それどころか、携帯電話の登場すら、まだはるか未来のことである。リビングに有る固定電話を使うしかないのだ。

「あー、この時代、結構めんどくさいかも」

 そうつぶやいた紗菜はひとつため息をつくと、自室から階段を降り、1階のリビングルームへと向かった。

80年代を楽しむことにした紗菜。

これからどんなことを体験していくのか?

次回をお楽しみに!

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