第6話
日曜日の夕方、予備校の一室に明日香と成田が向かい合って座っていた。
「やっぱり漫画家になりたいの?」
成田はお茶を明日香に渡しながら聞いた
「はい。できれば今すぐにでも」
お茶を受け取りながら即答するその決意の固さをみて、はぁーっと溜息を吐き天井を見上げる。少し考えてから
「九重さんの気持ちは分かったよ。でもさ、漫画で食べていくって思っている以上に過酷だと思うんだよ。勿論九重さんの気持ちは尊重するけどね」
「大変だろうってことは知ってます。でもやりたいんだからしょうがないじゃないですか」
「まぁ、そうだよねぇ。。。」
成田はそういうと持っていたお茶を自分もゆっくりと一口飲んで聞いた。
「家族交換って興味ない?」
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和也は九重明日香の連絡を受け、明日香のご家族が待つとあるカフェに向かった。
バイクを駐輪場に置き、スマホでもうすぐ着くことを伝えカフェへと歩く。
チリン、ドアが開きベルを鳴らす。
カフェの中に入ると日曜日だというのにあまり人がいないようですぐに女性のスタッフの方が対応してくれた。
「いらっしゃいませ~」
「待ち合わせをしているのですが、奥の席にいるらしいんですけど」
「お待ち合わせの方ですね、ご案内いたします。」
スタッフの方が奥の方に進んでいくと一番左端のテーブルに40歳前後のに見える男女が見えた。スタッフの方にお礼を言い、紅茶を注文した。
「初めまして。家族交換斡旋所の社長、水無瀬和也と申します。今回お時間作っていただきありがとうございます!よろしくお願いいたします。」
「初めまして。私は明日香の父で九重哲也で隣が明日香の母で妻の香苗です。この度はわざわざ来ていただきましてありがとうございます。それで早速なんですがお話伺ってもよろしいでしょうか、、、」
「もちろんです。資料を持ってきておりますのでそれをご覧になっていただきながら説明させていただきますね!」
バックからごそごそと資料を取り出していく。
「こちらがわが社の資料になります。まずはわが社のサービスである家族交換についてご説明しますね、おっと」
ちょうど説明を開始しようとしたところで注文が届いた。
「失礼します、こちらご注文の紅茶になります。」
「あ、ありがとうございます。えっと、説明でしたね。」
紅茶を一口飲み、無邪気に笑い説明を開始しようとする和也の様子に、最初怪しいと思う気持ちと緊張感が若干ほぐれ、そのマイペースな和也の姿勢に毒気を抜かれてしまった九重夫婦であった。
「それではわが社の提供する家族交換サービスについて説明します」