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バトルクラフトオンライン〜全てを失って、ゲームの沼にハマったら現実になりました〜


その日、俺の人生は本当のどん底だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「別れよう。」


そう言われたのが始まりだった気がする。

付き合って半年の彼女に振られた。彼女とは5歳頃からの付き合いで幼馴染というやつだった。それゆえに、その言葉は俺の心に突き刺さるのには十分な威力だった。それでもガラスのメンタル、それも防弾仕様の強化ガラス製と周りに自称するだけあって、壊れることはなかった。


しかし、それだけではなかった。

旧友から今の友人、果ては親友とも呼べる友からも関わりたくないと言われてしまったのである。


スマホが揺れる、通知が来た合図だ。

内容は俺の昔から見ている配信者の配信開始のツイートだった、振られてしまった悲しみを笑いにでも変えようと、配信に入ろうとした時。なぜか配信に入れない、回線の不調でもなく、スマホのバグでもない。


そして、その時俺は理解した「ブロック」されたのだと。

俺は理由を探した。しかし、何も落ち度はないはずだ、配信では礼儀正しくコメントし、何かの記念には少額ではあるが投げ銭もした。何かしたつもりは無い。


そして、SNSの方の確認に行こうとして気づいた、こちらもブロックされていたのだ。さっきまでは気づかなかったのだろう。絶望はまだ続いた、フォローしていた他の配信者からも次々とブロックされていたのである。


推しとも言える存在だった。そんな存在にも見捨てられた、これがこのこと一つならば問題なかっただろう。しかし、先ほど彼女にすら振られたのだ。それも、十年近い付き合いのある幼馴染でもあるのだ。そのことは、俺の心を抉り、壊すのには十分であった。

そして、俺は精神こころが壊れた。


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その後、俺は幸いにも家族には恵まれていたらしい。挙動のおかしな俺を見た家族がすぐに精神科に連れていかれ、すぐに精神的な病気と診断された。


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心身が溶けていく、自分が消えてなくなる、誰にも認めて貰えていない。そんな感覚に寝ると襲われるようになった。学校になど行けなくなった。しかし、俺は日常的に手伝いなどをしており、案外にも先生方には気に入られていたようだ。卒業まで数週間だったこともあり、なんとか卒業扱いにしてもらえたようだ。

そんなことはどうでもいい、それよりも俺は対人恐怖症になってしまったようだ。しかし、例外もあった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『ゲーム』の中だけでは問題なかった、ただのチャットだけならば話せる。

俺はのめり込んだ、毎日にログインし、気のあった仲間と集まって話した、いろんなことをした。そう、ゲーム内ランキングで一位になってしまうぐらいには。そして、リアルでも変化が起きた。リアルで家族以外と話すときに別の人格のような『仮面』をつけることによって、少しは他人と話せるようにもなった。

そう、『ゲーム』が俺を変えてくれた。『げ@む』が俺の全てだった、『げ#@』が俺の希望だった、『現実ゲーム』が『私』を『俺』でいさせてくれた。

しかし、何事にも終わりはあるものだ。ゲームの人口は下がり、仲間たちもリアルが忙しくなり離れていってしまった。それでも時々顔を出しに来ては、雑談しながら周回したり記録を塗り替えていた。


そして、ゲームのサービスが終了した。

しかし、俺は満足していた。俺と仲間の努力の結晶である、2枚のスクリーンショットを見て。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


それは、ゲーム内の功績を表示する『栄誉の殿堂』と呼ばれる石碑を撮ったものだった。

ありとあらゆるダンジョンの最速攻略、PVPの成績など。ゲーム内全ての最高の功績、その全ては俺の名前で埋まっていた。そして、ゲーム終了1時間前に最後のデータ更新の際に出現した欄、『全ての記録』で『一位』を取ることで名前を載せることができる、その名は


 『新たなる神話(ニューオーダー)


そして、別のスクリーンショットを見る。それは、栄誉の殿堂の別の欄だった。


『ギルドランク一位 ガーデン』


俺が作り、仲間たちと小規模ギルドながらも、ギルドシステム登場からずっと一位をキープしていた。


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買い物のために久しぶりにゲームをやめて少し部屋を出る。

リビングに行けばいつもと変わらない光景が広がっていた。ニュースを見ている父、夕食を作っている母、そして、ソファーを占領して動画を見ている妹、それを横目に俺は家を出る。


交差点をいくつも渡り、買い物もすませて、後は帰るだけだった。店を出たそのとき、俺は急に頭痛に襲われ、地面に倒れた。


《ワールドアナウンス》


《バトル・クラフト・オンラインver.1.0を現実にインストールします》


《栄誉の殿堂に名を残した者には殿堂の石碑に触れることにより報酬が与えられます》



〈新たな神話が紡ぎ始められます〉

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