バトルフロンティアオンライン
3年前…
「さて、始まって参りました。バトルフロンティアオンライン、通称BFO第一回世界大会決勝戦。決勝戦まで駒を進めたのは、この5人。
見た目は中世の騎士手に持つものは、ミニガン。誰も近寄らせずここまで勝ち上がって来ました。〔騎士〕『フリオル』!。
圧倒的な立ち回り、丁寧な動きで手堅く勝ち上がって来ました。それでも、名前はふざけてる。〔狩人〕『ぷっちんぷりん』!。
立ち回り?そんなの知らねぇ、圧倒的なAIMとショットガンの近接火力でねじ伏せる。〔狂戦士〕『フリゲート』!。
誰も気づくことは無い、なぜなら気づいた時にはやられてるから、超常的な遠距離AIMで誰にも撃ち返されず勝ち上がって参りました。その美しい、ビジュアルにも注目です。〔野伏〕『白月』!。
誰かコイツを止めてくれ、目で追えないキャラコン、神掛かるAIM、未来を見たかのような立ち回り。女神のような見た目からは、想像できないえげつないトラップの数々。〔強襲者〕『雪風』!。
この、5人による決勝戦は、バトルロワイヤル。武器は、これまでの武器を持ち越しての戦いです。」
「ちっ、ここまでかよ。」
「おっと、ここでぷっちんぷりん選手に引き続き、フリゲート選手まで雪風選手に倒されてしまいました。」
「さて、これは僕の番ということかな?」
白い風が吹く、木々の間を飛び回るようにして影が動き。そして、HPは0になっていた。そして、次の瞬間、白い風が止む。しかし、一発の弾丸が、止んだ風を狙う。が、その弾丸が当たる直前、『you are the チャンピオン』試合終了の合図が流れた。
そして、観客の間で一瞬の沈黙が流れた後、歓声が轟いた。その瞬間、BFO初のチャンピオン〔クラウン〕の誕生である。
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「さて、ここまで見ていただいたのは、シーズン0の第一回世界大会決勝戦のハイライトでした。BFO始まって以来の最高の戦いと言われていますが、この当時『白月』選手に対する攻撃がチートでは無いかと言われていましたが、システム解析によりフリオル選手との戦いの途中に空中にグレネードを白月選手の方に投げ、地面ギリギリで爆発させると言う荒技だったということが判明しました。
しかし、残念ながらこの戦いが終わってから、『雪風』選手、『白月』選手が共に表舞台から姿を消しました。残念との声が多数ありましたが、2人の選手が姿を消した理由は分かってないようです。さて、第四回世界大会が近づいていますが、BFOの人気は衰えず、なおもプレイ人口を増やしていっていますね。」
「そうですね、やっぱり最後の一撃の衝撃は、いつ見ても忘れられないものです。その常識はずれなやり方から、一部ではチーター呼ばわりされて叩かれていましたが、チートの痕跡は無かったんですよね。過激な連中も多かったのでやめたのは、そのせいだと考えられていますね。」
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昼休み、スマホでゲームニュースを見ていると、そんな、ことを放送していた。バトルフロンティアオンライン通称BFO、BFOは、多種多様なシューティングゲームを集めたゲームである。バトルロワイヤルからPVPVEまで、本当に様々なゲームの戦場を用意しているのである。しかし、本当に世界的な人気になったのは、コレ以外にも理由があった。世界初のフルダイブ型のVRによるプレイが可能になったのである。これにより、さまざまな動きが自由に出来るようになるだけではなく、臨場感もかなりのものになっている。しかし、従来のパソコンなどでもプレイできることがプレイ人口を増やしている要因でもある。昼休み終了五分前のチャイムがなったので、教室にもどるとするか。俺、『風月 雪兎』は、面倒くさそうにゆったりと立ち上がるのである。
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「さて、お前ら今日から夏休みなわけだがハメ外しすぎて問題起こすんじゃねぇぞ。あと、期末考査の点が悪かった奴らは補習だ、きちんと来いよ。」
ホームルームのときに担任がそう言うと、解散になった。
「おーい、雪、お前も『バトロワ』のイベント走るよな?。」
そう言って、話しかけて来たのは、友人の『橘 樹』だった。
「おう、今回も一応走るが、今日『エスケープ』のワイプだからな。ワイプダッシュも一応するから、バトロワの方には、ワイプまでの、少ししかやれんぞ?」
「それでも、雪兎が居るのと居ないのとじゃ安定性に違いが出るんだよ。樹は、特攻バカだからな。」
そう言ったのは、もう1人の友人『佐藤 拓実』だ。
「おいおい、俺は真面目に…って、おいアレ神風さんじゃないか?」
「ん、樹の言うとおり神風さんだな、夏休み始まるから、告白しに行ってる奴が多いんだろうな。断られるのにな。」
今、話題に上がった神風と言うのは、学校で一番の美人と言われている『神風 白』の事である。白磁の肌と金に近い甘栗色の髪、そんな綺麗なビジュアルなため、告白するやつが後をたたないらしい。
「おい雪、何ぼーっとしてんだ?さっさと帰ろーぜ。お前は家が遠いんだからな。」
「お、おう。そうだな、帰るか。」
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電車に揺られて20分。そこから、歩きで10分の場所に『俺たち』の家はある。
「だだいま。」
そう言いながら玄関のドアを開けると、キッチンの方から声がかけられた。
「お帰りなさい、雪兎さん。」
「ただいま、白。」
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「えへへ、雪兎さんの匂いです〜。」
えー、今起こっていることを説明しよう。自分の部屋で着替えてリビングに戻ったら、白に壁ドン気味に捕まえられ、そのままカーペットに押し倒され匂いを嗅がれている。
「えーっと、白さん?そろそろ離れて欲しいんですが?」
「い〜や〜で〜す〜、今日変な男に絡まれたので雪兎さんの匂いで上書きしてるんです。は〜、癒されるぅ。」
どうにかしようと試みるが謎の怪力で抜け出せない。諦めて白が満足するまで待つことにした。
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「はぁ、興奮すると周りが見えなくなるのはお前の悪癖だぞ?」
晩ご飯を食べつつ、さっきまでの事について小言を言う。
「うぅ、ごめんなさい。でも、私は雪兎さんの物なのに、変なのに絡まれたのが気持ち悪くて。」
「何度も言ったが、お前は俺の物じゃないっていってるだろ?」
「むぅ、私は雪兎さんのものです。これは譲りません。」
「いっつも思うがそれは俺が決めることじゃね?」
そんなことを話していると、いつの間にか時計の針は7時をさしていた。
「白?お前、配信の時間じゃないのか?」
「うぇ?」
言われて初めて気が付いたたらしい
「まずいですよ、遅刻しちゃいますよぉ」
そう言って、慌てながら配信の準備し始めた。そう、白は白月 淡雪と言う名の配信者だ、それも「Vtuber」と呼ばれる類の。それも事務所所属で、かなりの人気配信者だ。ちなみに、俺は白の配信のヘビーユーザーだ。そうして、数分後白の配信が始まったのである。それと事務所の一期生らしい。
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「こんあわ~、皆何してるのかな~?白くてかわいい雪の精霊、白月淡雪だよ~。」
※コメントは《》で表示
《ついえら》
《こんあわ》
《待ってた》
《雪遅刻に対する弁明は?》
《遅かったからなんかあったかと思った》
「いやぁ、少し熟睡しすぎちゃって。」
《ならよし》
《よく休んでね?》
《よく寝るいい子》
「心配してくれてありがとうございます。それはそれとして、今日はBFOのイベントを走って行きますよ~。」
そんな感じで始まって数分後、突然白の声が聞こえなくなった。その証拠に、コメントでも聞こえなくなったと騒いでいる。
《雪~、声聞こえないよ?》
《機材トラブルか?》
《おーい、雪ちゃん?》
そんなコメントを見ているとバタバタと足音が聞こえてきた。
「雪兎さんまずいですよ、なにが原因かわかんないですよぉ」
そう言いながら、俺の肩をつかみぶんぶんと揺さぶってきた。
「落ち着け白、直してみるから。」
「なら安心です。」
少し機材をいじってみたら原因はすぐわかった、マイクのケーブルの接触が悪かっただけである。
「直ったぞし…」
そう言いかけて俺は絶句した、マイクがオンになっていたのである。案の定コメントで騒がれている。
《今の声だれ?》
《イケボきちゃ~》
《同棲してるのかな?》
慌ててマイクをミュートにして白に話しかける。
「どうするんだコレかなり騒がれてしまってるが」
「しょうがないので、うちの新人Vということにしましょう。」
無茶なことを言い始めた。
「もともと、雪兎さんにはVになってもらおうと考えてたので、根回しや用意はしているんですよ?」
「はぇ?」
あまりにも突拍子のないことだったので、変な声が出た。考えてみればおかしな事だった。いつもなら1人で直せるような事も直せておらず、配信者にとって致命的なマイクの切り忘れ、どれをとっても違和感しかない。つまりは、白に嵌められたのである。それに俺はまんまと嵌り、外堀を完全に埋められたのだ。
「ちくしょうやられた、嵌めやがったな白。」
「なんのことでしょう?」
とぼけてはいるが、目が笑っている。
「さてさて、今日はとりあえず隠しておいて、事務所と相談してから、発表の日程でも決めますかね。」
「やることは決定なのな。」
「ふふん、あとは立ち絵とか細かなところを決めるだけなのでね。楽に終わりますよ♪」