14.魔法使い、役に立つ
※魔法使い視点
間に合わない!と思って俺はおもわずおばあさんを庇った。しかしドラゴンのブレスは地上を舐めるように広がり、周囲の森までもを覆う。
(吹雪系か?!)
しかし、それにしては鋭さが足りない。俺は顔を上げて周囲を見渡す。冷やりとした白い息吹は人々を通り抜けるように周囲に広がり続け、ところどころの地面や気に纏わりついてやがて消えていく。
「え?浄化?」
森の中には毒沼と、それに影響を受けた木々が点在していたはずだ。白い息吹はそれにまとわりついているように見える。それは教会の浄化の奇跡のように、煌めきながら姿を消した。
(浄化のブレスなんて聞いたことがないぞ)
呆然としていると、突然すぐそばからけたたましい声がした。
「浄化?!浄化なのかい?!これが浄化かい?!」
声の主は庇うために抱き込んでいたおばあさんだった。
「おばあちゃん!大丈夫なの!?」
側にいたお孫さん?が興奮気味に声を掛ける。それに同じくらい興奮した様子でおばあさんは俺の腕から飛び出し、孫の手を取った。
「大丈夫だよ!すごい!なんてこった、こんなに息が吸えるよぉ!」
「すごい!浄化だ!おばあちゃんがもとに戻った!!浄化された!」
祖母と孫が喜ぶ声を聴き、恐る恐るという様に地面に伏せていた信者たちが身体を起こした。何があったのかと戸惑うように周囲を見回す者ばかりだったが、突然声を上げて驚く者が現れ、その数が増えていく。
「痛くない!」
「どうして・・・・もう苦しくないわ、あなた!」
「見える!見えてる!治ってるぞ!」
「浄化されるだなんて・・・まだ聖堂は先なのに」
人々の喜びと戸惑いの声の囁きが聞こえる。その中を一番通る声で祖母と孫が言い出した。
「魔法使いさん!あれは浄化だったのかい?!どうしてドラゴンが浄化するんだい?!」
「あれは良いドラゴンさんなの?!聖堂から出てきたから?!良いドラゴンさんなの?!」
「え、ええっとぉ・・・・」
(このおばあちゃん、あんなによぼよぼだったのにすごい元気に・・・)
俺だってよくわからない。しかし、この変わりようは奇跡としか思えない。
「その通りです。皆さん」
俺の背後から声がして、その場にいた信者の目が一斉に金髪に青い目の、それは人好きのする笑みを浮かべた爽やかな青年に向かった。その青年がつい先ほど、人々をかばいドラゴンに立ち向かった勇敢な若者であることに気付いた者は多い。
「大神官さまが仰っていました。あれは浄化の聖堂から生まれた聖なるドラゴン、魔王の力が消えた今だからこそ蘇った聖竜だそうです。ご覧ください、そのブレスで皆さんの毒を浄化するどころか、森の毒まで消し去りました」
何故かわからないが、キラキラと輝くような笑みでカロンが芝居を打っている。俺はそのキレッキレの笑顔に恐怖を覚えたまま、促されるようにその芝居に乗っかった。
「そそそそそうだったのかぁ!聖なるドラゴンに浄化していただけたんだぁ!良かったですねおばあさん!あのドラゴンがおばあさんを浄化してくれたんですって!良いドラゴンだったんだよ少年!」
「そうなんだ!良いドラゴンっているんだ!」
「聖なるドラゴンが私の毒を取ってくれたよ!」
(声が大きいって大事だぁ・・・)
声の大きな祖母と孫のおかげで、信者たちは自分たちに起こった奇跡と聖なるドラゴンを関連付けてくれたようだった。
「ひとまず皆さん、落ち着いたらゆっくりと聖堂に向かってください。大神官さまはこの奇跡に立ち会った皆さんに祝福を授けたいと仰せです」
緊張が解けたのか、ところどころで歓声に似た声が上がる。喜びというよりこれからすべき道筋が立ったことへの安堵の方が近いのかもしれない。未知の出来事に誰もが戸惑っていたのだ。
「それでは、動けるかたからゆっくりとお越しくださいね」
そういうと、カロンは見えないところで俺の腕をねじりあげる。強制連行の気配だ、やっぱりぶちキレてるぞこいつ。
「魔法使いさんありがとうー!!」
「いえいえー!お気をつけてー!」
俺は必死に笑みを浮かべながら、ねじれる腕をかばうように早足でカロンについてその場を立ち去った。
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