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その転移者、雷神につき 〜ボツヒロインのために、俺は異世界を救う〜  作者: taqno(タクノ)


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第87話 修行の地へ隠れるのよ!

 イダヴェル大森林の北西端に位置する霊山に向けて俺たちは移動をしていた。

 そこは俺が山篭もりをして、約十ヶ月もの間修行していた場所だ。

 なぜそんな場所に向かっているのかというと、至神乙女達の追跡から逃れるためだ。


 ブリュンヒルト率いる至神乙女は、アスガード国にいる世界樹の巫女であるウルズを利用して世界樹のシステムを動かすことが目的だ。

 世界樹の巫女……つまりルビィも狙われる危険性がある。

 なにせ、帝国との戦争を経てルビィの能力が大陸中に知れ渡ってしまったからな。

 だから、ルビィに危害が加えられるよりも先に隠れるために霊山にやって来たというわけだ。


 この霊山、俺が十ヶ月修行する場所に選んでいただけあって、強い魔物が多く生息している。

 おそらく、ミズガルズ団の隊長でも一人だと倒せないレベルじゃないかと思う。

 それ程危険な場所に行くのは、まあ賭けだ。

 俺とビュウがいるからルビィとウルズを守りながらでもなんとかなるだろう、と言う考えが一つ。

 もう一つは木を隠すなら森の中理論だ。危険から身を守るために、敢えて更に危険な場所に隠れる。

 敵もまさか、こんな場所に身を潜めるだなんて考えていないだろう。

 意表を突いてやったというわけだ。


「あの~~いつになったら着くのですか~~? 正直、私は(まつりごと)に関わってばかりだったので運動神経に自信は無いのですが……ぜーぜー」


「あと二日はかかるから頑張れよ。疲れたなら休憩するか? 到着するのが更に遅くなるけど」


「うう……足を止めたら彼女たちが追いつくかも知れないですね……。ここは我慢、と言いたいところですが足が棒のようになって立てないのです」


「ポーションでも飲むか? 腐るほど在庫が余ってるぞ」


「むぅ……ポーションは体力の回復が出来ますが、またすぐ疲れちゃうじゃないですか……そういうことじゃなくてぇ」


 ぶぅと口をとがらせて文句を言うウルズ。

 なんだよ、不満があるならはっきり言ってくれないと分からないだろうに。

 疲れたから休憩がしたい。だけど時間が惜しい。ならポーションを飲もう。

 これの何が不満なんだ? すぐ疲れても問題ないくらい、ポーションだってあるんだ。

 実に効率的じゃないか。一体何が気に入らないのか、巫女様のお気持ちは分からないなぁ。


「ねぇルビア。あなたも疲れましたよね? 歩くの嫌になりましたよね? ね?」


「た、確かに疲れたけど私は結構他国に訪問することも多くて、長時間歩くことに慣れてるから……」


「むむむ……まさかの裏切り。同じ巫女としてインドア派だと思ってたのに、ルビアにはガッカリなのです。仮にも一国の王女なら、部屋に籠もって贅の限りを尽くして不健康な肉体になるべきなのですよ。そして私と一緒に不健康優良児になりましょう!」


「なんだよ不健康優良児って……。大体、ルビィをお前のアホアホな考えに巻き込むな。ルビィは今くらいが健康的でちょうどいいスタイルなんだから。お腹の引き締まり具合とか、腰のくびれとかな。まぁ胸は相変わらず年の割には小さい気も……」


「と・お・く・ん?」


「いやなんでもないですハイ」


 それから数時間ほど歩いたが、やはり霊山への道のりはまだまだ長い。

 最初に考えていたペースよりも遅いし、あと二日程度でたどり着けるか怪しい。

 これは俺一人の歩行ペースで考えていたから、連れのみんなのペースを考慮していなかったのが原因だ。

 団体行動って慣れていないからか、こういうミスをしてしまうとは。反省だ。


「まーだーなーのーでーすーかー?」


「まーだーなーんーでーすー!」


「つーかーれーたーのーでーすー!」


 数分毎にウルズの口から疲れた疲れたと不満が漏れる。


 くそ、馬車があれば一気に進むことが出来たんだが。

 念のため徒歩で移動することにしたけど、やっぱり時間がかかってしまうな。

 せめて移動魔法が使えればいいんだけど、霊山に行くための条件を満たしていない。

 あそこは転移石もなければ、知り合いもいないからな。

 俺が使える移動魔法のいくつかも、使用できない。


 ん、待てよ?

 魔法か。確かにその手があったな。


「おいビュウ、お前確か空中に浮く魔法を使えたよな。ほら、ヴァナハイムで俺たちが闇ザコと戦っていた時に、お前が宙に浮かんでやって来たあの魔法」


「闇ザコ……? まぁいいや。えっと、お兄さんが言ってるのは【フライ】のことかな。戦闘から離脱する【エスケプ】に風魔法の要素を加えて改良した魔法だね。確かに使えるけど、巫女のお姉さんに効果を付与するとかは出来ないよ? これ、基本的に僕専用だから」


「じゃあ、お前がその子を背負って移動してやれないか。ほんの数センチ浮くだけでもいい」


「うん、それならいいよ。僕より重いものを担いで浮くとバランスを崩すけど、ちょっと浮く程度ならたぶん大丈夫」


「ちょっと待ってください! 私の方が重いとは失礼じゃありませんか!? 私こう見えてもかなり小柄なのですが!」


 いやなに言ってんだこの子は。

 小学校高学年ほどの年齢のビュウよりも、自分の方が軽い? いやいや、流石にそれは無理があるだろう。

 確かにウルズは身長は一四〇中盤程度で、ちびっ子だ。出会った頃のルビィより少し背が高いかなってくらいか。

 だが、それでも中学生と小学生くらいの差はある。

 男と女の違いはあれど、それほど年齢に差があれば体重が重いのは当然ウルズの方だ。


「巫女のお姉さん、確かに軽そうだもんねぇ。ちっちゃいし、細いもん」


「ふふん、そうでしょう! ですから、少年よりも私の方が軽いのは当然の……」


「ちなみに僕の体重は三七キロだけど、お姉さんは?」


「……………………」


「ねぇ、どれくらいの体重なの? ねえねえ?」


「さて、年下の少年におぶってもらうのは心が痛みますが、これで歩くペースを改善出来ますね! さぁ、よろしくお願いするのです少年!」


 ウルズは体重の話題を切り上げて、ビュウの背中に乗る。

 そしてビュウも苦笑いしながら、【フライ】を発動して浮きながら進む。


「ビュウより重いんだな、あいつ」


 いいな、浮遊する魔法。

 俺も使いたいけど、無理だろうな。


 風魔法で飛んだことはあるけど、姿勢も速度もコントロール出来なくて碌な目に遭わなかったし。

 向き不向きとでもいうんだろうな。

 怪我をしても嫌だし、俺はおとなしく歩くとするか。


 ビュウ達の後をついて行こうとすると、ルビィが立ち止まっているのに気がついた。


「ん? どうしたんだルビィ。疲れたなら俺の特選ポーションを飲むか?」


「えっと、疲れたわけじゃないよ? いや、ちょっとは疲れたけどでもそういうのじゃなくって。なんか、いいなぁって思って」


「ああ、浮遊魔法な。確かにあれが使えればかなり便利になるよな。水辺とかも気にせず進めるようになるし、いい魔法だ」


「うん、あの魔法もそうなんだけど……。そうじゃなくって、えっと」


 もじもじとした様子のルビィは、なんだか久しぶりに見たな。

 今まで何回も見てきたせいだろう。この後ルビィが言いそうなことは何となく察しが付いてしまった。

 好きな子の考えていることが分かるのって、それだけ長い時間一緒にいたって証明だから、少し嬉しくなるな。俺の中のルビィの割合が大きくなってるって言うか、そんな感じ。


「ビュウ君とウルちゃんのあれ、いいなって」


「あれ?」


「だから……その。おんぶしてもらうのって、いいなって思ったの!」


 かぁ、と耳が赤くなる。

 久々の赤耳姫のご登場だ。

 要するにルビィは俺におんぶして欲しかったってことか。


 ルビィは俺と付き合い始めてから、たまにこういう恥ずかしいことを要求してくる。

 恋人同士なんだから別におかしくないんだが、俺もルビィも奥手なもんだから変に恥ずかしい空気が流れる。

 まぁ、ルビィの方からそういうことを言ってくれるのは嬉しいんだけども。


「なんだよルビィ。おんぶして貰いたいのか? 結構甘えん坊だな、お前も」


「べ、別に嫌だったらやらなくていいからね! とおくんも歩き疲れてるだろうし、私ウルちゃんよりも重いだろうし」


「なーに面倒くさいこと言ってんだよ。ほら、乗りな?」


「え、と。じゃあ、はい。よろしくお願い、します」


 肩に添えられた両手。

 柔らかい指が優しく俺の肩を掴む。


 そして胸を背中に預けて、その華奢な体の重量を受け止める。


 温かく、柔らかい脚を支えて、ゆっくりと立ち上がる。


「ほ、ほらどうだルビィ。これがおんぶだぞ」


「うん……ありがとねとおくん」


「ま、こんくらいどうってことないよ」


「とおくんの体って、やっぱり逞しいね」


「お、おう」


 歩き出したのと同時、ぎゅっと抱きしめられた気がした。

 背中から落ちないように掴まっただけなんだろうけど、ルビィに後ろから包まれている感じがした。


 なんだか、温かいなと、思うのだった。


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