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その転移者、雷神につき 〜ボツヒロインのために、俺は異世界を救う〜  作者: taqno(タクノ)


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第68話 3章 プロローグ 神の国の少女

 霧がかかる、薄暗い森の中。

 神々の住まう国と言われるアスガード国にある大森林だ。


 アスガード国は国と国との境目が森で覆われている。つまりアスガード国を囲むような形で、木々が広がっているのだ。まるで、他国からの侵入を拒むかのように。

 中でもこのイダヴェル大森林は南にあるムスベルスハイムという火の国とのつながりを断ち切るかのように、木々が尋常ではないほどに生い茂っていた。まともな方法では、人間がこの森を突破するのは不可能だろうというほどに。


 そんな霧と静けさで満たされた大森林の中に、この落ち着いた空間には似つかわしくない者がいた。


 それは少女だった。フードを深く被り、顔を隠した少女だ。

 少女は背後を確認し、その視線を前に戻して一目散に走っている。誰かに追われている。少女の様子を見れば十人が十人そう感づくだろう。


「はやく、はやく逃げないと……! ()()()()に捕まったら、この世界は終わってしまう……!」


 少女の口から漏らされる言葉は、一見すると大げさな世迷い言にしか聞こえない。

 しかし、彼女の言葉が真実であると証明するかのように、少女を追走する影があった。

 その影は大森林の中を、まるで平野で全力疾走するような速度で駆け回る。しかも、その影は一つではない。十、二〇という白い外套を纏った人影が少女を追う。


「……………………」


「……………………」


 白い集団は言葉を発さない。

 まるで、少女を追いかけるという目的を果たすこと以外の機能を削ぎ落としたかのように。

 必要のないものを一切備えていない、それ専用の機械だと思えるほどに。

 白い集団からは、生気というものを感じられなかった。


「しつこいですねっ! 何度も何度も! でも無駄です、森の中では私が絶対的有利。あいつらが追ってきたところで、私に追いつけるはずがありません!」


 少女は自慢げに言ってのける。

 そして木々の間を抜け、抜け道を通り、木の上に身を隠して白い集団の追跡をやり過ごす。


 息を殺して様子を伺う。

 一分、二分、五分と経ったところで追手が来ないことを確認し、無事撒けたのだと少女は思った。

 ふう、と一息安堵の呼吸を漏らす。


「――――ッ!!」


 彼女が息を漏らした瞬間。

 光の槍が彼女の立っている木の枝を、寸分違わず狙い打つ。光の槍は彼女を直接攻撃することはなく、あくまでその枝を破壊する程度に留まっていた。

 しかし、それだけでも少女にとっては大打撃。不意を突かれた少女はろくな受け身も取れずに、地面へと落ちる。


「くはっ……!」


 軽い衝撃に彼女の肺の空気が吐き出される。

 木々から落ちた葉によって出来た、天然のクッションがなければ大怪我をしていたところだろう。

 しかし、思ったほどの怪我がないからと言って安心はできない。

 なぜなら、少女はもう、白い集団に囲まれてしまっているのだから。


「…………」


「……………………」


「相変わらず……目的のこと以外には一切の感情を持ちえないのですね、あなた達は」


「…………」


 少女から言葉を投げかけられても、白い外套は答えない。

 そもそも、少女の言葉が耳に届いているのかも怪しい。

 白い外套の目的は只一つ。少女の確保、それだけである。そして、その目的も間もなく達成されるだろう。


「これは……絶体絶命ってやつですかね。ここで私はあなた達に捕まって、連れて行かれて、世界は終わってしまう。それがあなた達の筋書き……いや、世界が終わると思っているのは私の勝手な考えですか」


「……………………」


「なんですか、その表情。つべこべ言わずにとっ捕まれって顔じゃないですか。そんな顔されたら、悪あがきしたくなるのが()()ってものですよ」


 少女は口角を釣り上げて、ニヤリと笑う。

 二〇を超える白い集団に囲まれているこの状況で、少女は捕まらないという意志を見せる。

 白い集団はそんな彼女の思いなど意に介さず、ジリジリと距離を詰める。


(これは……マズいですね。もう一度撒いて逃げに徹すればなんとかなるかも知れませんが、この状況から逃げ出す術がありません)


 少女は冷静に、自分の置かれた状況を確認する。

 そして改めて認識する。最悪な状況だと。


(ですが諦めない……諦めたくない! ここで私が折れれば、このアスガード国は……世界は……)


 少女の足に力が入る。

 悪あがきでもいい、とにかく逃げ出すのだ。森の中ならば自分が圧倒的に有利なのだから、と。


(あぁ……神よ。我らが主よ。もし噂が本当ならば、なぜ貴方の子供たちを貴方の住んでいたアスガードではなく、人の子の繁栄するミズガルズに遣わされたのですか)


 少女は近頃大陸中で噂になっている、とある人物のことを思い出す。

 かつて神が住んでいたと言われ、今でもその神々を奉っているこの国の住民である彼女にとって聞き逃がせない噂だった。


(そして、雷神よ……貴方が真に尊きお方ならば、どうか……私の願いを聞き届けてください……)


 フードの少女、ウルズは天へと祈りを捧げた。


 そして、彼女の願いは聞き届けられることとなる。


 かつて神々の住んでいた国を舞台とした、神々の戦いが始まる。


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