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その転移者、雷神につき 〜ボツヒロインのために、俺は異世界を救う〜  作者: taqno(タクノ)


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第65話 終戦

 ――戦場


「はぁ……はぁ……。なんとか、魔物の数も減って来たか。流石は邪竜を元にしただけあって、一体一体がゴールドクラスだ」


「確かに強力な魔物ではあるが、大したことはない。現に我々だけで対処できたんだ。フレイ殿、あなたの力を見せていただいた。近衛隊長を務めるだけあって、素晴らしき剣の腕だ。それに見たこともない魔法を使う」


「そういうシグルズこそ、鋼の勇者の名に違わない剛健ぶり、感服したぜ。まさか極真以外でここまでの実力者がいたとはな……」


「豊穣神と呼ばれる貴公にそう言ってもらえて光栄だ。私はしがない冒険者。竜を殺したことがあるとは言っても、フレイ殿のような数千の兵を相手取るなど出来はしない」


「謙遜するなよ。お前の能力はまだ把握してないが、それ程の腕があれば本気でやれば四魔将ともやり合えるだろうに」


「それは逆に買い被りすぎだぞフレイ殿。だが、そう言ってもらえるのは悪い気はしない」


 戦場で戦いながらも、二人の戦士は互いに讃えあった。

 その姿には、上位の戦士同士のみが分かる独特の空気が流れていた。


「だが肝心の邪竜が現れないのは、一体どういうことなんだ……この一年、邪竜が出現したという情報はない。出てくるならここだと思ったのだが……」


「私もドラゴンを倒したことのある身、邪竜クラスの脅威は分かっているつもりだ。フレイ殿は一度、邪竜と戦ったことがあるんだったな。その時に大きな傷を与えたと聞くが、それがまだ癒えていないのではないか?」


「その可能性は低いだろう。あれほどの化け物だと回復力も並みの魔物の比じゃないだろう。最低でも戦闘可能な程度には回復していると思う」


「ではなぜ現れないのだ……」


「…………まさか! 王都の方に!?」


 フレイとシグルズが邪竜の行方がどこか考えていると、笑い声がした。


「ハハ……今頃気付いたか。そう、この戦場は囮。本命は既に貴様たちの大事な王都に向かったわ! もう既に滅びているかもしれないわね、いい気味よっ!」


「お前たち……兵が出払っているのを狙ったのか……! なんて卑怯なっ……!」


「戦争に……卑怯もなにも……ない……」


 倒れていたシャドウズが顔だけ動かしてフレイに語る。

 今回の計画の狙いを。


「くそっ! こうなったら、急いで王都に戻らなければ……! 馬、馬を用意しろ!」


「フレイ殿、なにやら後方の様子が変だ」


「こんな時に、そんなことどうでも……!」


 突如、大きな笛の音が戦場に響き渡る。

 その音は二つの音色。違う種類の笛が鳴っていた。

 一つはミズガルズ王国の後衛から。そしてもう一つは、帝国側からだ。

 後ろから馬に乗ってやって来た兵が、息を切らせながらフレイの元へ駆けてくる。

 兵は呼吸を整えながら、慎重に言葉を紡ぐ。

 帝国側の兵士も同じく、緊張した面持ちでシャドウズの元へとたどり着く。

 両者は自軍の将に、戦場の状況を一変させる重大な報告をした。それは、とてつもなく大きな情報だった。


「フレイ隊長、報告します! 王都に邪竜が出現、王都の半分を炎の海へと変わり半壊……!」


「やはり王都が! くそっ、今からでも向かわなければ……!」


「ですが!」


 兵がフレイの言葉を遮る。


「雷神トール様が帰還。即座に件の邪竜を撃破……そして四魔将の……」


「トールが……!?」


「ヒータ様、非常に……申し上げにくいのですが……その……」


「なんだ、早く報告しろ。私も暇じゃないの、ロキ様のためにも一刻も早くこいつらを……」


「そのロキ様が……!」


「トール様が、四魔将ロキを撃破! 王都は……無事ですっ!」


「ロキ様が……雷神トールに破られました……っ」


「「なんだと!?」」


 両軍から同じ驚嘆の声が上がる。

 しかし、それは互いに違う意味合いを持っていた。一方は歓喜の声。もう一方は困惑。

 兵の報告を受けてシャドウズの面々、中でもヒータは声を大にして叫んだ。


「馬鹿な、ロキ様が負けただと! そんなのは誤報だ、何かの間違いよ。それに王都には他にもビュウ様やファフニールが……」


「ファフニールもロキ様同様に雷神に破れ、ビュウ様は……ミズガルズ団団長のティウに……」


「ありえない、あっていいはずがない。この作戦は四魔将のお二方も参加している、帝国の最大戦力が揃ったものなのよ。それが、たった一人二人で……」


 ヒータの顔はひどく歪んでいた。自分の信じていたものが、崩れていく様子。

 シャドウズの他のメンバー――フー、リン、サンも同じだ。程度の差はあれど、皆困惑と絶望の表情。それは、彼女たちがロキを信頼していたからに他ならない。

 ロキならば、かならず王都を制圧し、作戦を成功させるだろうと。


「どうやら、戦争の流れは完全に決まったようだな」


「っ……!」


「敵の将を討ち取り、この場の魔物の数も徐々にだが減ってきている。お前たちもわかっているだろう、この戦争は……王国側の勝利だ」 


「まだよ、まだ魔物の数のほうがあんた達の兵よりも多い。このまま続けていれば、あんた達もただじゃ済まないわ」


「それはどうかな」


「なんですって……?」


 フレイは戦場の北側を指差す。

 そこには馬車と、騎兵の団体が駆けていた。彼らは戦争が開始されてからすぐに戦線から離れた集団だ。

 王女ルビアが逃亡した、という偽の情報と共に抜け出し、引きつけた帝国兵を見事倒した集団だ。


「お兄様ーー! 無事ですかーー!」


「俺の妹も無事帰ってきた。あいつが戦線に加われば、俺たち兄妹は真の力を発揮する。そうしたら、こんな魔物なんて一瞬で滅ぼせる。もちろん、お前たちシャドウズが一〇〇組来ようが相手にならん。それでも続けるか? 無駄死には勧めんが、戦士としての挟持を優先するならば止めはしない」


「く…………そ…………」


 こうして戦争は終わった。

 ミズガルズ王国の勝利という形で。

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