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その転移者、雷神につき 〜ボツヒロインのために、俺は異世界を救う〜  作者: taqno(タクノ)


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第61話 トールVSロキ②

 雷と影がぶつかり合う。

 眩い光が一瞬で敵を貫こうとし、混沌の闇がそれを飲み込む。

 魔法と魔法の打ち消し合い。

 相殺したエネルギーで地面がえぐり取られる。

 魔法発動の音と、魔法の相殺によって起こる爆発音。その中で、わずかに物理的な衝突音もしていた。


 俺たちは剣と拳、近距離での白兵戦を行いながらその傍らで魔法の撃ち合いも行っている。

 剣を振るいながら魔法を撃つなど、無詠唱の魔法使い同士だから可能な芸当だ。

 無詠唱使いはそう何人もいないらしい。

 おそらく、こんな戦いは初めてなのだろう。


「貫け!」


 速度の早い雷魔法の【ライトニング】を発動する。

 指を拳銃の形にして人差し指から発射される雷は、容赦なく闇ザコの体を貫く――――


「無駄だ。もはや私に貴様の攻撃は通じぬ! 永久闇(とこしえのやみ)に沈め!」


「なにっ……雷魔法が効かない!? どういうこった!」


 確かに【ライトニング】は闇ザコに命中したはずだ。だが、やつの体にはダメージがない。

 今までも漆黒の衣で攻撃を防がれたことはあった。しかしその場合、衣の一部分が塵へと返り、闇のオーラがほんの少し消費されていたはずだ。

 まぁ、その場合でもすぐに衣は再生していたのだが。

 だけど、今のやつは俺の攻撃を受けても全く変化がない。

 なぜだ。防御力が大幅に上がったのか?

 それとも俺が本調子じゃない?

 いや、そんなはずはない。俺はベストコンディション。この時のために調整してきたんだから当然だ。


 じゃあ、一体なぜ――――


「【オンブル・ド・ファング】!」


 魔法の詠唱――いや、スキル発動か!

 まずい――――!


 危機感を察知して後方へ数メートル下がる。

 俺の感じたものは正しかったらしく、さっきまでいた場所には巨大な牙が現れていた。

 闇ザコの漆黒の衣から左右各三本――合計六本の巨大な牙が出現して噛み合っている。

 まるで大きな肋骨のような牙。獣が獲物を捕らえようとしているように、ガチガチと音を鳴らしている。

 なるほど、今まで使ってこなかったスキルを使ってきたということは、本気で俺を殺すつもりなんだろう。


「ああもう、面倒な! 【シャイニング・フォース】!」


「クハハハハ! 無駄だと言っているのがわからないか! 等に貴様は無力、その出力の高い攻撃をいくら放とうと! この私に傷をつけることなど万が一にもありはしない!」


「なぜ雷魔法が効かないんだ――――雷魔法?」


 闇ザコの急な変化にどこか既視感を覚える。

 それは、以前味わったことがあるような、手痛い失敗の記憶。


【電撃流地】


 四魔将の一人、ファーフナーが持っていたスキル。雷属性に対する強力な防御耐性だ。

 それは当然、ファーフナーが変質した姿である邪竜ファフニールも持っていて。

 その血肉を取り込んだ闇ザコが、スキルを獲得していてもおかしくはない。

 ならば、やつの漆黒の衣の質が変わったのは、【電撃流地】を得たからなのか。


「そういうことかよ!」


 俺は【雷神】の発動を止める。

 その体を人の身へと戻し、雷属性の強化魔法も解除した。


「【魔力上昇】、【筋力上昇】、【敏捷強化】!」


 そして、再び強化魔法を自身に施す。

 今度は【雷光】から雷属性の魔法抜きで。

 雷神状態でなくなったことで時間間隔が元へと戻る。

 スローモーションのように見えていた世界が、正しい時間の進み方をする。

 闇ザコがほんの数秒で眼の前に迫る。

 こいつ、こんなに早かったのか。今まで遅いと思っていたが、いかに【雷神】の恩恵が強かったのか実感する。


「再び剣から鎚へと姿を変えろ――ミョルニル!」


 魔力の刀身が消えて柄のみとなる。

 そして瞬時にハンマーのヘッド部分が形成された。

 柄を握る手に力を入れる。腕を引き、魔力をために溜めてハンマーを構える。


「いくらお前が強くなろーが!」


 雷属性を一切使わない純粋な魔力の塊。

 それを、ぶつける。


「俺が弱くなったわけじゃねぇ! 俺だって【雷神】に頼らず修行したんだよ! ――――【雷神戦鎚(トールハンマー)】!」


「ぐ――ぬううううぅぅぅぅ!!」


「影は闇へと……消えろぉぉぉ!」


 俺の魔力を全てミョルニルへ注ぎ込む。一滴残らず絞り出し、全て攻撃へと変換する。

 ハンマーと漆黒の衣が拮抗する。

 互いに一歩も動けない。

 ちょうど互角の威力。やつは衣で攻撃を減衰させ、魔族特有のパワーで押し迫ってくる。

 俺は魔力に物を言わせてのゴリ押し。魔力自体はB程度だが、豊富なスキルでブーストを駆けている。


 どちらか先に力尽きたほうの負け。

 これは我慢比べだ。


 ――――ジリ


 しかし、いつまでも均衡を保ってもいられない。


 ――――ジリリ


 ほんの数センチ。

 指一本分の、僅かな距離。


 ――――ジリリリ


 闇ザコが前に出る。

 徐々にだが、押されてきているのだ。


(くそ……、やっぱ【雷神】がないと出力不足なのか……)


 数ミリ、数センチ。

 少しずつ、だが確実に闇ザコが迫ってくる。

 このままやつが突破してくるのが先か。俺の魔力が切れるのが先か。


「くそったれえええぇぇ!」


 押し返すためにも更に魔力を込める。

 全身の血管と神経が高速で脈動する。

 頭の中にガソリンを入れられたような感覚。体内器官が爆発寸前で稼働しているかのよう。

 鼻血が垂れる。欠陥が浮き出る。魔力に耐えきれず血が溢れ出す。

 だが、それでもなお魔力を流す。

 だって、後ろにはルビィがいるんだから。負けるわけにはいかないんだ。


 ――まだだ、まだいける


 そうだ。

 俺の全ては、彼女を守るためにある。ならば、その全てを使う時はいつだ。

 今だ。今、この瞬間。

 あの時、“エターナルユグドラシル”で彼女の写真を見た時から。

 ゲームの二章の裏で起きていた悲劇を回避するためにこの世界に来たんだ。

 なら、全力(雷神)を越えた(自力)を発揮しろ!


「うおおおおおぉぉ!!」


「が、くぅううううう!!」


「ルビィに――――近づくなぁぁぁあああ!!!!」


 魔力の流れで神経が焼ききれそうになった時。

 ミョルニルに変化が起きた。


「な――これは!?」


「ミョルニル! 俺の血肉を糧として、目の前の災厄を祓え!」


 ミョルニルが輝きを増し、ヘッド部分がどんどん面積を広げる。

 柄の部分が魔力で伸びて、ヘッドの部分も一般的なハンマーよりも更に大きくなる。

 それは人が振るうにはあまりにも大きい、人間の子供以上の大きさへと変化した。


「これは――これほどの魔力を……貴様ァ……」


「吹っ飛べええええ!!」

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