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その転移者、雷神につき 〜ボツヒロインのために、俺は異世界を救う〜  作者: taqno(タクノ)


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第54話 五隊長VSシャドウズ

 戦場は苛烈を極めていた。

 序盤から奇策を用いた王国により帝国側の右翼部隊は戦場から離れ、結果壊滅した。

 また、その後も煙幕により視界を塞ぐことで左翼部隊も同様に打ち破られる。

 ここまでは王国側が有利に事を進めていた。

 しかし、それでも帝国側の戦力は三〇〇〇〇を超えており王国側の倍以上。編成し直した右翼部隊が王国側を押しはじめる。

 更に拮抗していた中央も、徐々にではあるが王国側が不利となっていく。


 王国兵はヴァナハイム共和国の援軍を待つまで耐える必要がある。そして援軍が来たとしても、数は帝国と同じ。目的地の見えないマラソンをやっているかのような状況で、少しずつ精神に疲労が溜まっていく。

 だが開戦から半日が過ぎる頃。帝国と王国、二つの軍が激突する中央で変化は起こった。


 王国の右翼部隊――フレイが指揮し、煙幕による策で帝国左翼部隊を倒した隊――が、帝国中央部隊の背後を取ったのだ。

 帝国はこの奇襲により、前後から挟み撃ちを受けることとなる。

 中央部隊の多くは歩兵で構成されており、ほとんどの兵が戦士職だ。

 そして奇襲を仕掛けた王国右翼部隊は魔法職が多くを占めている。

 すなわち、後ろから一方的に魔法で攻撃するという絶好の機会が訪れた。

 大打撃を受ける帝国の中央部隊、後衛。

 本来だと後衛は警戒を強めるべきなのだが、数にモノを利かせていたのが仇となった。


 こうして、王国側は中央を制し始めた。

 しかし一方で騎兵が並ぶ王国の左翼部隊は、歩兵と魔法職が多数いる帝国右翼部隊に押されたままだった。

 これは、王国側の騎兵の数が少ないことが原因であった。

 元々王国は戦争を積極的に行う国ではなく、穏健的な国だ。そのため自国を守るためのミズガルズ団を有してはいるが、それはどちらかというと国内での争い――魔物や盗賊など――を解決することが主な活動であった。

 そのため馬に乗ることがあっても戦に利用するのではなく、あくまでも移動手段として乗っていた。故に、王国は騎兵が育っておらず、歩兵(戦士職)と魔法使いという二種類の兵が多かった。


 幸いだったのは、帝国の騎兵部隊が王女ルビアを追うためにその多くが戦場を離れたことだろうか。

 おかげで戦場には両軍合わせても騎兵の数が少なく、機動力を活かした戦法も生まれない。

 王国側が随喜したのは、この状況で戦力さえ拮抗していればヴァナハイム共和国が来るまでに時間を稼ぐことも不可能ではないこと。

 手薄な左翼部隊に魔法職の兵を回し、踏みとどまる王国。

 ギリギリのところで抑える事が出来たが、援軍が来る前には押し負けてしまうだろう。

 だがそれでも、精神的に疲弊していた王国兵だったが、活路が見えたことで精神を奮起させる。


 そして更に数時間過ぎた時、両軍の中央が動く。

 王国側はミズガルズ団の五隊長を最前線に投入を決意。

 帝国側はそれに相対するように、四魔将ロキ直属の部下シャドウズが前線へ。

 互いに極神や魔将を除けばトップレベルの戦士が、戦場でぶつかることとなる。


 ◆



「おらおらどうしたどうした! 王国の要であるミズガルズ団とはこんなものか! 私に殺されい、生きのいい愚か者はいないか!」


 戦場の中央、帝国はミズガルズ王国により挟み撃ちの攻撃を受けていた。

 しかし、四魔将ロキの部下であるシャドウズの四人が戦線に投入され、王国の有利は崩れそうになる。

 しかし、王国もこの好機を逃すはずがなく五隊長がシャドウズにぶつかる。

 個々人の能力はほぼ同等。ならば数の関係で五隊長が有利になる――と思われたが、違った。


「畜生がっ! あいつら全員ハーフ魔族だ。俺たちと違って身体能力も魔力も優れてやがる。こと戦闘において疲れってやつを知らねぇ!」


「落ち着きなさいエリック。あたし達だって魔法薬やポーションで備えてあるわ。それに負けてるわけじゃない。しっかりと拮抗しているじゃないの」


「ハゲネの言う通りだ。私達の目的はここの防衛であり勝利ではない。ならば彼奴らを抑えれば全軍がこの均衡を維持して、援軍が来るのを待つだけ。そうすれば我々にも勝ちが見えてくる」


 前衛を任されたのは一番隊隊長のエギル、二番隊隊長のハゲネ、三番隊隊長のエリックだ。

 エギルは防衛が得意であり、攻撃を務めるハゲネとエリックを敵の攻撃から守っていた。これは一番隊が普段から警備や兵同士の模擬戦を行うことが多く、守り役を務めることが多いからだ。

 そしてハゲネは鍛え抜かれた肉体と、持ち前の剣術センスを活かして敵の攻撃を受けては切り返していた。

 彼が攻撃の要と言って間違いないだろう。

 しかしエリックも忘れてはだめだ。彼は体こそ少年のように小さいが、それを逆手に取って軽快な動きで敵を翻弄する。遊撃をこなしているのだ。


「三人共、無駄口を叩く暇があれば動いてください。私は相手ほど魔力があるわけじゃないんです。魔法薬だって有限なんですからね! 【マジックシールド】!」


 後衛で魔法を唱えて前衛の三人の補助をしている男。

 彼は四番隊隊長のハイキ。魔法部隊の指揮をしていたが、フレイや部下に任せてこちらの戦いに参加している。

 彼の魔法の腕は確かで、王国で複数の属性を扱える数少ない魔法使いである。

 もっとも、トールやユングヴィ兄妹の登場でその希少性も薄れているのだが。

 しかし、実戦経験は上記の極神三人に比べて豊富で、戦況に応じた魔法を唱えることができる。それ故に、先程から前衛の三人は致命的な傷は受けていない。

 これは本人たちの防御技術が高いこともあるが、ハイキの補助魔法によるところが大きかった。


「さて、私達がこうしている間になんとか上手いことやってくださいよシャルヴィ」


 ◆


「はぁぁ! 【魔闘炎舞】」


 シャドウズの一人、ヒータがスキルを唱えると彼女の腕に炎が纏う。

 ヒータが炎を纏わせた拳を振り上げ、そして敵に向けて拳を放つ。

 すると、拳を突いた先の数十メートルが炎に包まれた。

 高さ五メートル、長さ数十メートルの炎が大地を走る。


「相変わらず、バカみたいな火力ね。繊細さの欠片も見られないわ」


「なんですってフー! あんたみたいなチンケな技に比べて、私のほうが目に見えて強いでしょ!」


「あらそうかしら。私のほうが優雅さがあるわよ。きっとロキ様も、私の技を褒めてくれるに決まってるわ」


「何をバカなこと言ってるの? 私の技のほうがロキ様のお気に召すに決まってるわ」


「私よ」


「私だって!」


「二人とも、危ない」


「ちっ、隙きを突いたと思ったのによ!」


 フーとヒータの前に一人の少女が出てくる。

 彼女はサン。こと防御においてはロキ以上の頑強さを誇る鉄壁の少女だ。

 サンはエリックの攻撃を難なく弾き、その後もハゲネの一太刀を受けるもびくともしない。

 彼女の姿を見て、フーとヒータは我に返る。


「無駄口、よくないよ。ロキもきっと、二人を見たらおこる。ケンカするなら、よそでやってよね。いま抜け出されても、こまるけどさ」


「ごめん、サン。くそっ頭を冷やすわ。フー、とりあえずさっきの話は置いといて、敵を打ち倒すわよ」


「そうね、ここで負けたらロキ様に顔向けできないもの。サン、守ってくれてありがと」


 そんな風に、シャドウズが冷静になろうとした瞬間。

 彼女たちの背後から剣が迫る。


「帝国の女戦士よ、その首もらった!」


 攻撃を仕掛けたのは五番隊隊長のシャルヴィだ。

 彼ら五番隊は隠密活動を主とし、敵国や近隣諸国の動きを調べ、また戦場に潜入して味方に情報を送ることが使命だ。

 そんな隠密の隊長を務めるシャルヴィは、気配を消して敵の背後に回ることも苦としない。

 刃がフーの首筋に近づく。

 あと一瞬。

 瞬きする間もなく、剣はフーの頸動脈を切り裂く。


「!」


 が、剣はその直前で動きを止める。

 フーの首と、シャルヴィの剣の間に、短刀があった。


「くっ!」


 シャルヴィは急いで後方へバックステップする。

 そして短刀の持ち主へと視線を向けた。

 そこには、さっきまで誰もいなかった。しかし、今は確かにいる。

 トールの世界――日本で言うところの忍装束に似た衣装を身にまとう少女。彼女がシャルヴィの剣を受けたのだ。


(クソ、敵にも隠密がいたか。完全にこちらの手を読まれていた! 一度奇襲に失敗すると、二度目はほぼ成功しない。このまま敵に囲まれるのはまずいな……)


 シャルヴィは舌打ちをする。


「さすがねリン。敵の奇襲を防ぐなんてやるじゃない」


「当然です。私はそれが仕事ですから。まぁ、私が防がなくてもあの程度の剣ならあなたに致命傷を与えることは難しかったでしょうが」


「切られたら痛いでしょ。防げる攻撃は防いでなんぼ。それに刃に毒でも塗ってたら危ないじゃない」


「それは確かに。毒の治療となると、私達では対処出来ないから危ういです」


 じり、とシャルヴィは足を動かす。一旦立て直すために、この場を離れようとしているのだ。

 彼のスキル【隠密B+】は敵に姿を見られていない場合――つまり初見の場合における暗殺や奇襲の成功率を大幅に上げる効果がある。具体的には気配を遮断し、敵に感づかれにくくするボーナスが入る。

 しかし、もしも失敗して敵に姿を見られた場合、以降は敵に気配を感づかれやすくなるデメリットがある。

 故に、奇襲に失敗した今、彼が敵四人と向き合うこの状況は限りなく最悪である。

 仲間は援護に来ようとしているが、サンが間には言って中々シャルヴィの元までやってこれない。


「敵の隠密部隊といえば、確かロキ様が数百人殺したことがあったな。あんた、もしかしてその時の生き残り? それとも、そいつらの仲間かしら?」


「くっ……!」


「ま、どっちにしても大したことないわ。隠密部隊がこの程度なんて、ミズガルズ王国は本当に堕落しているわ。他国の情報を握り、国家間のバランスを左右する重要な役職がこんな役立たずたちばっかりなんだもの」


 シャルヴィの剣を握る拳に力が入る。

 彼は一年以上も前に、ロキにより部下の多くが戦士している。

 そのため五番隊は事実上の解体、近衛隊が新たに編成されるとともに人員が増員されたがほとんどが戦士職ばかりだったため、一から仕込みをすることとなった。

 一年で形になってきたとは言え、まだまだ隠密としては甘い部分も多い。故に以前のような隠密部隊になるのは更に時間がかかるだろう。


 それでも、シャルヴィは誇っていた。

 死んでいった部下たちや、一年間必死についてきてくれた部下たちを。

 王国を守るための重要な役職、隠密というのを理解して、向き合う彼らを。

 それを馬鹿にされて、怒らずにいられるだろうか。


「別に、お前たちに恨みがあるわけではない……。部下が殺されたのも、結局は敵にバレてしまったのが原因だ。だが、王国のために散っていったあいつらを……今、国のために頑張っているあいつらを……馬鹿にするんじゃない!」


 剣を構え、疾走する。

 隠密スキルが機能していないとはいえ、彼は五隊長の中で一番の俊足。

 ティウほどではないが敏捷のステータスはBもある。そして培ってきた技術――敵の視界に映らないように移動する技術も生きている。


 せめて一人、倒さなければ。

 隠密(自分たち)の誇りを示すために。


「吠えたな王国の隠密。ならば受けてやろうじゃない。一人だけだからって容赦はしないわ。フー、あんたはサンの援護に回ってなさい。私とリンはこいつを殺る」


「うおおおおおお!」


 黒に塗られた衣を纏う男が、炎と風の少女に立ち向かう。

 その誇りを胸にかけて。


 ◆


「ぐ……がふっ」


 シャルヴィが死んだ。


 膝から地面に崩れ落ちる。

 口からは血が溢れ、その瞳にすでに光はない。

 水色の髪の暗殺者リンは短剣をシャルヴィの体から回収し、冷徹に言い捨てる。


「逃げずに立ち向かったことは褒めてあげましょう。ですが、国を担う立場であるなら意地を捨ててでも仲間と合流するべきでしたね。それと、隠密がそのような剣を使うのはどうかと思いますが。戦闘が得意でもないですし。ああ、王国だから剣が主流なのでしょうか。それとも考えなし? だからこうやって死んだのですか」


「シャルヴィー!」


 エリックが駆け寄ろうとする。

 しかし、サンが間に入り思うように進めない。


「お仲間しんじゃって、ざんねんだったね。でも、戦いだから」


「邪魔だ!」


 エリックが飛び上がり、サンの頭上を超える。

 が、宙に浮くエリックの体を疾風の速さで駆け抜ける影が激突する。


「ぐっ」


「ま、もう死んじゃってるから通しちゃってもいいけどね。でも、バラバラに動かれると面倒なの」


 猛スピードで飛ぶ影、その正体はフーだ。

 フーは両足に小さな竜巻を纏わせている。風魔法によるものだ。彼女のユニークスキル【疾風纏嵐】により風魔法をその身に纏うことに長けている。

 このスキルは例えば風の剣、風の盾など普通ならば遠距離に放つものを術者に近い距離で発動するとその効力にボーナスが発生する。

 そして術者自身に風魔法を使えば、自身の魔法で傷つくこと無く、また最大値のボーナスを受ける。


「炎を手に纏うやつがいると思ったら、今度は風を足に……。てめえらびっくり人間か何かかよ……痛っ」


「そうね、あなた達みたいな凡夫に比べるとロキ様に仕える私達はまさに非凡な存在。勝てる道理なんてないのよ」


 フーはスキルで強化された風魔法を用いて、一時的な飛行を可能にしている。トールがロキとの戦いの中で風魔法を使いジェット噴射の要領で飛んだのと似た技術だ。

 しかし、彼女の場合は風魔法の制御がトールよりも数段上である。これはスキルではなくフー自身の鍛錬による技術。

 フーが使用している魔法は【ツイントルネード】。中級魔法で、大した威力もない魔法だ。

 だがフーが使うことで、、二つの竜巻を足元へ生み、安定した姿勢で滞空できる。

 しかし、四魔将ビュウ・レイストの飛行魔法【フライ】とも違い、彼女の場合ほんの十数秒……長くても三〇秒ほどしか宙に浮くことが出来ない。これは魔力が長く持たないことが原因だ。

 そのため飛行手段というよりは、戦闘中における制空権を確保する手段として用いられている。跳躍と滑空を合わせたような使い方だ。

 しかし、【エスケプ】などの自動で空を飛ぶ魔法を除き、数十秒とはいえ自由に空を飛ぶ事ができるのは戦闘で非常に大きい。


「エリック、一旦どきなさい! あなたは横から回り込んで。あたしは真正面から!」


「おっと行かせないわ! サンのように鉄壁ってわけじゃないけど、私も力には自慢がある、力比べと以降じゃない筋肉だるまのアフロさん!」


「あぁら、あたしのテンポについて来れるかしら、赤髪のかわい子ちゃん。……ふん!」


 ハゲネとヒータがぶつかる。

 剣と拳、金属と炎の交差。


「サンキューハゲネ! まずは敵の隠密、シャルヴィの仇だ!」


 エリックが剣を構え、リンへと駆ける。

 そこへリンが手持ちの短剣を投げる。エリックの顔めがけて投擲されたが、剣で難なく弾く。

 そして再びリンへと向かおうとしたが、彼女の姿が消えていた。


「何っ!? ヤローいつの間に」

「エリック、うしろだ!」


 突然の声に、エリックは反射的に応えた。何も考えずに全力でその場にしゃがむ。すると、先程までエリックの首があった場所に短剣が通り過ぎる。

 避けたのは考えたわけではなく、ほとんど直感的な行動だった。

 注意の声は味方のエギルが出したものだ。彼はサンと交戦中にも関わらず周りをよく見ていた。

 そして視線をずらすと、短剣を持ったリンが立つ。攻撃を外して苛立っているのか、僅かに目が座っている。


「あぶねぇところだったぜ。俺にも運が回ってるのかね」


「偶然避けたからといって調子に乗ると痛い目見ますよ」


「タコ、そりゃこっちのセリフだ。今ので仕留められなかったことをコーカイしろよコラ」


 剣と短剣、リーチが違う武器がぶつかる。

 両者ともに力に優れたものではない。どちらかというと華奢な部類だ。そのため攻防は、身軽さを活かした素早い動きで交わされている。


「いいわ、一直線上に並んだわね。【疾風纏嵐】!」


 フーの体が再び宙に浮く。

 そして狙いを定めて、突きの構えを取る。

 フーは飛行の邪魔にならないように武器を持たない。重量バランスを崩さないためだ。

 そのため攻撃は徒手空拳。だがヒータのような武術で攻撃するわけではない。

 彼女は風魔法の使い手なのだから。


 フーの手に、薄く小さい風の刃が現れる。

 風魔法の【エアカッター】。防御系の魔法やスキルを貫通するものだ。消費魔力が少しかかるため、手のひらサイズに納めている。

 この刃を持ち、敵の急所を狙い、疾風のように舞う。


(まずはこのオカマっぽいやつ!)


 フーがハゲネの首を狩ろうとしたが、それは失敗に終わる。

 彼女の目の前に二本の矢が通過したためだ。

 それはサンと交戦していたエギルと、後方から魔法で支援していたハイキの攻撃。一つは実体の矢でもう一つは魔法の矢。

 宙を舞うフーの隙を突いた一撃だった。

 だが、その矢が刺さったのはサンだ。

 エギルが後ろに下がり弓を取り出したのを確認して、即座にフーの進行方向へと跳躍してガードしたのだ。


「くそ、敵の守りが堅い! 特にあの金髪の女。防御特化って感じなだけあって厄介です」


「もう、本当にありがとねサン。今日で二回も助けられちゃった」


「いいよ。私、攻撃はできないし。みんなをまもるの、しごとだから」


(まずいですね……)


 王国きっての魔法使いハイキは後方から冷静に分析していた。

 五隊長とシャドウズ。

 個人の力量で言えば、決して隊長達が劣っているわけではない。人間とハーフ魔族という身体的なハンデはあるがそれでも食らいついている。

 だが、自分たちとシャドウズには決定的な差があるとハイキは感じた。


(チームワーク……連携の練度が違いすぎます……!)


 五隊長も連携が出来てないわけじゃない。むしろいいほうだ。

 だが、それはあくまで即興にしては、というレベル。

 彼らは普段、自分の隊を率いるリーダーだ。若い頃はともかくここ数年はチームで戦うことよりも、それを指揮することのほうが多い。

 そして何より、違う隊同士のリーダーがこうして共に戦うことなどほとんどない。五隊長揃っての実戦などこれが初めてだ。


 対してシャドウズはロキ直属の部下。常に四人で行動している。

 彼女らは結成されてから今まで、戦闘も訓練も同じ時間を過ごしている。そして彼女たちが戦うのはロキのため。絶対忠誠を誓う彼女たちは表面上は喧嘩することがあってもその志は一つ。

 経験と信頼からくるチームワークは最高と言っていい。


 もちろん五隊長の志がバラバラというわけではない。彼らも王国を守るために心を一つにしている。

 しかし、シャルヴィが殺され、戸惑いが生まれてしまった。それが、本人たちが気づかない程度の焦りを生む。


(このままでは……だめだなんとかしないと)


 ハイキが策を考えようとした時。

 前方で声があげられる。


「くそ、離せ! こいつ鉄壁だとは思っていたが、組み付かれたらほどけん!」


「やだぁん、あたしをそんなにつよく掴んでなにするつもり!?」


「おいコラ、何掴んでんだよ離しやがれオイ! テメェ首根っこ掴んでんじゃねぇぞ!」


 見てみるとエギル、ハゲネ、エリックがサンに組み付かれている。

 おそらくヒータやリンと戦っている後ろを襲われたのだろう。


「おいエリック、ハゲネ、エギルっ!?」


 そして、今度はいつの間にかハイキも腕を固められ、サンの元へと投げ捨てられる。リンが気配を消してハイキの背後へと回っていたのだ。

 サンは更にハイキも捕らえて拘束する。


「いくわよみんな!」


 フーの風が勢いを増す。


「準備は出来てるわよ!」


 ヒータの炎が大きくなる。


「にがさない……」


 サンは隊長たちを捕らえた拘束を、より強くする。


「早くトドメを刺してください、フー」


 リンは短刀を投げ、五隊長の手足を地面に縫い付ける。


 必殺の準備が整い、シャドウズの4人が声を合わせる。


『サイレントウインド・アースファイア!』


 フーが拘束された隊長達に突撃する。

 その手に持った風の刃に向けて、ヒータが炎を放つ。

 するとまるでガソリンに引火したかのように、炎が勢いを増す。

 そして爆発的に膨れ上がった火力を、身動きの取れない敵にぶつける。


 戦場に閃光が走る。


 その威力は、上級魔法を遥かに凌ぐ範囲と破壊力だった。

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