第53話 新武器完成間近……!
「なぁ……一つ聞いてもいい?」
「なんじゃ……今っ……わしはっ……忙しいんじゃっ……! それくらいっ……ふっ……見て分からんか……!」
「ダホっ! もう二週間以上ずっ~~っと同じこと言ってるじゃねーか! いやね、新しい武器作ってもらってる立場だのにこんなこと言うのも厚かましいけどね? 正直、そろそろ妥協してもいいんじゃないかなーて思うわけですよブロック」
「いいやダメじゃ! わしはドワーフ族のブロックじゃぞ、妥協したものは生み出さない、それがわしらのモットーじゃ!」
ふん、と鼻息を荒くして反論される。
まぁ、こだわっているっていうのはよくわかったよ。誰にだって譲れないラインってものがあるよな。
俺にだって、時間が無くてもこれだけはやり遂げなきゃいけないって事柄があるしな。
例えば、曜日ごとにパンツの色を決めているとかね。
月曜は気分が乗らないから黒、火曜は赤、水曜は青、木曜は……って俺のパンツのこだわりなんかどうでもいいか。
そもそもこっちの世界に来てからは、パンツはアイテムボックスに入ってた四つある黒いパンツしか穿いてないからな。たぶん、キャラクリ画面で出てくるインナーだと思う。
で、話を戻そう。
睦月の二六日―――つまり一月二六日にドワーフのブロックと出会い、彼に新しい武器を製作してもらっているわけだが、どういうわけか今日まで完成していないのだ。
それっぽいものが出来上がったかと思うと没にしたり、アイデアを出してはそれも没にしたり。試行錯誤全開である。
俺としてはそこそこのモノで十分なわけだが、そこは職人の意地。他人にあげるものは自分が満足行く出来じゃないといけないらしい。
「なぁ、どの辺りで躓いてるんだよ。何回か作り直したりしてるけど、どこがダメなのか見てる俺にはさっぱりだよ」
「ううむ、そうじゃのぉ。ほれ、ここを見てみぃ」
先ほどまで製作していて、つい今しがた没となった剣の柄を渡された。
柄はまるで美術品のようにきれいに仕上がっていて、おまけに丁寧な装飾まで施されている。
これだけでも値段が付きそうなものだが、ブロックは遠慮なく没となったモノを捨てていく。勿体無いなぁ。
ブロックは柄の真ん中、魔石を埋め込むためのくぼみを指差す。
どうやら、ここで躓いているようだ。
「な?」
いや、な? とか言われてもわからんし。
俺は鍛冶スキルを持ってるとはいえ、知識はからっきしだ。見ただけで欠陥が分かるなら、俺は今頃工場の製造課かどっかで班長やってるよ。
ただ、素直にわかりませんというのも負けた気がして悔しいので、当てずっぽうで言ってみよう。
「ええと、ここに魔石をセットしても、上部に上手く魔力が流れない……とか? でも、それなら魔石と上部との間に更に小さな魔石を埋め込んで上手く誘導させればいいだけか
」
「問題点はおまえさんの言う通りじゃ。それに改善案も、わしが考えたのと同じじゃ。ただな……」
おお、言ってみるもんだな。
ひょっとして、俺にも職人としての素質が合ったりするのか? 細かい作業は嫌いだから、性格的に合わなそうだけど。
ブロックは首を横に振り、うなだれる。
何がダメだというのだろう。改善案があるなら実行すればいいじゃん。それが出来ない理由があるのか?
「それをやろうとすると、手作業ではなくスキルを使った作業が必要になる。それも長時間な。魔石をリンクさせるのは繊細な作業じゃからなぁ」
「だったら、長時間やってみれば……あっ」
そうか。この作業ができない理由があったんだ。だからブロックは別の方法で試そうとして、いくつも没を出していたのか。
ブロックは魔力が少ない。
ドワーフは元々魔力の値が低く、また魔力のコントロールも苦手なため、スキルだけでなく手作業で武器を作る者が多い。
だから、そんな繊細な作業は手作業でやらなければいけないが、魔石をリンクさせるためには魔力を用いたスキルでの作業が必要となる。
つまり、ドワーフであるブロックには向いていない。
俺の魔力をブロックにあげられればいいんだけどな。
残念ながらMPの譲渡は魔法職の上級スキルだから、戦士職と魔法職を適度に育てた俺はそんなスキル持ってない。
もしくは、ブロックの技術が俺にあれば……。
「そうだ、ブロックの技術を【ものまね】で再現したら、俺の魔力で武器を作れるんじゃないか?」
「それは無理じゃ。【ものまね】の対象は魔法に限られておる。スキルを真似することは出来んよ。それに、重要なのはスキルよりも技量じゃ。それだけは本人にしか備わっていないからのう」
「そっか、ダメかぁ」
がくり、と気分が落ち込む。
何かしらの解決策があればいいんだが、如何せんどん詰まりってやつだな。
俺が落胆していると、ブロックが不意にポツリとつぶやいた。
「魔法薬が山ほどあれば、出来ないこともないが。ま、そんなことあるわけないがのう。ガハハッ!」
「ん? 今なんて?」
「だから魔法薬がざっと一〇〇本くらいあれば、魔力を使い放題だからスキルだけで作業出来るんじゃがのう……と言ったんじゃよ。もちろん、そんなに魔法薬を持っとるやつはおらん。もしいるなら、そいつは商人か軍の保管庫担当じゃな」
「魔法薬でいいのか? 上魔法薬や極魔法薬じゃなく、普通の魔法薬があれば徹夜……一日で出来るのか?」
「うむ、わしらは魔力が低いから通常の魔法薬で全快する。そして魔力の制御が下手とは言え、ずっとスキルを使えるのならそれくらいで終わるぞ。とはいえ、こんな話をしても意味はないが……」
俺はすかさずアイテムボックスから魔法薬を取り出した。
それこそ、ブロックの言う一〇〇本ほど。
邪竜戦の時に使った極魔法薬ではなく、一番安い魔法薬。これだけでも一本で四〇〇〇ゴールド……日本円で約四〇〇〇〇円する。
これ一本だとエタドラで終盤までいって成長している俺の魔力を十~二〇%くらいしか回復させてくれない。それに、中盤に買い込みすぎてアイテムボックスに【魔法薬×九九】が三つほどあるという。
なんて宝の持ち腐れ、と思っていたがこんなところで役に立つとは。
「さぁ、魔法薬ならたくさんあるからじゃんじゃん飲んでくれ! もちろん疲れたのならポーションもあるし、治癒魔法で疲れも取る。頼むブロック、あと少しだけ頑張ってくれ!」
「ううむ、このまえの防具といいお前さんの財力が非常に恐ろしいが、詮索はするまい。これはありがたく飲ませてもらうとしよう……。トールよ、よく見ておけ。これからわしの全力の作業を見せてやる。一生に何度もないから、よく目に焼き付けておくがいいぞ!」
ブロックは腕をまくって作業に突入する。こうなると、数時間は口を開かなくなる。俺に出来るのは飯の準備とかそれくらい。あとはブロックを信じて待つのみだ。
今はもう如月の十一日―――二月十一日だ。そろそろ帝国が王国に攻め込んでもおかしくはない。
ティウに渡された連絡用魔道具にはまだ通信が来ていないから、最悪の事態には陥っていないとは思う。
だが、いつでも出発できるように準備を整えないとな。まずは一年以上放置した髪や髭、それから服装、そして装備品やアイテムを確認しなきゃな。
王国へは【テレポ】で王都の教会に飛んでいけるよう、事前に教会で登録したし、あとは大丈夫か。
この一年で身につけた力で、絶対に王国を……ルビィを守ってみせる……!




