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その転移者、雷神につき 〜ボツヒロインのために、俺は異世界を救う〜  作者: taqno(タクノ)


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第50話 奇策

 大陸の東側、約四〇%もの範囲が帝国の領土となっていた。

 北側に位置するニブルハイム、東南東のアルヴハイム、そして大陸から離れた東側にある島国スヴァルトアルヴハイム。これらの国々が帝国に侵略され、吸収されていた。

 帝国本体はというと、大陸北東に位置する国だ。驚くべきは、前述の三国家の領土を抜いたとしても、大陸内で一番領土が大きいという点だろう。

 元々、大陸は八個の大国――島国のスヴァルトアルヴハイムは除いて――からなっている。それぞれの大国の国境間や、領土の中にいくつかの小国が存在するが、大国に比べると大した領土ではない。地図にも点で記される程度の大きさだ。


 それら八個の大国のうち、帝国は三個――島国のスヴァルトアルヴハイムを入れて四個――の大国で形成されている。

 これがどういうことかというと。

 戦争を行う場合、必ず軍隊の移動がある。そして、物資を用意する必要がある。

 帝国とミズガルズ王国は北東と南西、真逆に位置するため、移動も大規模なものとなる。当然、兵糧も大量にいるだろう。

 そこで、侵略した国が役に立つというわけだ。帝国の南に位置するアルヴハイムは農耕が盛んな国である。

 故に、食料も豊富に貯めている。アルヴハイムで物資を補給すると、王国との間にあるのはアスガード国のみ。

 アスガード国は中立の国だ。自国で戦争を行わないのならば、軍が進行するのを止めることはない。また、帝国もアスガードで物資を蓄える際も、きちんと対価を払う。

 互いに敵対するのは避けたい故の行為である。


 この世界で主流となっている魔物の血を分けて品種改良した馬や、魔道具により重さを軽減し地面との抵抗を無くした馬車を用いても、大地を進むのは生物だ、休息と食事が必要だ。

 だから軍の進行はここまで十五日間かかった。移動を開始したのは睦月の二七日。奇しくもトールが鍛冶師ブロックに出会った翌日であり、ミズガルズ王が最後通告を受け取りヴァナハイム共和国のバルドル代表を呼び出す日と重なっていた。

 この数日後、ミズガルズ団の密偵が帝国の動きを報告し、ミズガルズ王がバルドルと相談しティウらに打ち明けた後、徹底抗戦を帝国に言い渡すこととなる。


 如月の十一日、アスガード国とミズガルズ王国の国境を越えた先、平原を挟み両軍がにらみ合う形となっていた。


 片方は氷山と炎が描かれた旗を、もう一方は世界樹が記された旗を掲げている。

 氷山と炎は帝国の国旗で、氷山の周りを炎が囲むようなシンボル。

 世界樹は王国のものであり、世界樹の幹と枝そして葉が描かれたシンボル。


 帝国軍は約五〇〇〇〇、全軍の半分を動員しているのはそれだけで十分としているのか、それとも王国相手に半分も動員していると考えるべきか。

 対する王国は一七〇〇〇、内訳として三〇〇〇が王都にいるミズガルズ団の兵、一一〇〇〇が王国の各地にいる兵、そして残り三〇〇〇が王国内外から集めた冒険者たちだ。ヴァナハイム共和国の軍二〇〇〇〇が到着予定だが、早くてもあと一日はかかるらしい。

 数は圧倒的に帝国有利。約三倍もの差があるのだから。

 故に、ミズガルズ王国は奇策を行う必要があった。それは帝国の目的を逆手に取った、帝国が軍を分断せざるを得ないことだ。


「ぶ、部隊長! 右翼部隊から報告が!」


「どうした。まもなく開戦だぞ、お前も早く準備をしろ」


「それがっ! 王女ルビア・ミズガルズが北側のヴァナハイム共和国へ逃亡したようです!」


「なにっ! それは本当なのか!」


「馬車は二〇、騎兵三〇〇、歩兵八〇〇! その中央の馬車にルビア・ミズガルズが乗っているのを偵察兵が確認しました」


「くそ、王女だけでも逃がそうという魂胆か! ええい、陛下には王女を生きて捉えろと言われている! 右翼部隊をそのままルビア捕獲に回せ! 他が動くよりもその方が早い!」


「了解しました!」


 開戦直前の王女逃亡という報せ、これにより帝国軍の右翼側が分断され、ヴァナハイム共和国側へと移動することとなる。

 この出来事で帝国軍は約一二〇〇〇の兵が本隊からいなくなる。

 帝国のミスは、最優先事項であるルビアを狙うあまり、兵をそちらに割きすぎたことか。

 もちろん、本当にルビアが逃げ出していたなら理に適う判断だ。王族の近衛兵は優れた兵が多いという情報から、倍以上……過剰とも言える兵を導入したのも念には念を入れたためだ。

 何より、ここ一・二年で大陸で有名になった戦士は皆王国出身もしくは王国を活動の拠点とした者が多い。

 その戦士の中には一騎当千の猛者がいるとも噂されている。王女を守るためにそれらの強者が共にいる可能性も高いだろう。

 故に、本来であれば部隊長の判断はそこまで的はずれなものでもなかったのだ。


 もちろん、これはブラフである。

 ミズガルズ団の団長ティウが考案した策。すぐに見抜かれるだろうが、それはそれ。開戦時に数の不利を少しでも解消したい、時間稼ぎの策だ。

 だが、その策は功を奏した。現に帝国軍の四分の一がいなくなった。

 そして、ルビアを追うために離れた部隊が本隊に戻ることはない。

 なぜなら、彼らが追っているのは王女ではなく。

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