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その転移者、雷神につき 〜ボツヒロインのために、俺は異世界を救う〜  作者: taqno(タクノ)


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第49話 開戦間近……!

 ミズガルズ王国の城の中で、二人の男が向かい合い、席に着いていた。

 一人はこの国の主であるミズガルズ王。そしてもう一人はヴァナハイム共和国の代表バルドルだった。


「バルドル殿、遠路はるばるお越しいただき、まずは感謝を」


「礼などいりませんよミズガルズ王。我々は同盟関係にある。協力するのは当然でしょう」


「そう言っていただけると助かる」


「ところで、本日はどのような御用件で? わざわざこの国に呼ぶということは、通信魔道具では出来ない話なのでしょう? 万が一にも傍受されては困るような内容というわけだ」


「ああ。万一にも情報が漏れる可能性を考慮して、こうして直に会うのが一番だと考えた」


「その様子だと、よくない報せのようですね……」


 ミズガルズ王は懐から封筒を取り出した。

 そして、バルドルの前にそれを差し出す。


「手紙ですか? これがどうしたというのです?」


「封を見て欲しい」


「封ですか。さて……っ!?」


 バルドルた封筒を裏返し、封蝋を確認した。封を見て、思わず息を飲んだ。

 その封のシンボルは、紛れもなく帝国のものだったからだ。


「来たのですか……帝国から、文書が……」


「一度封を開けて、内容を確認したよ。最後通告だそうだ。交渉に従わなければ、武力行使に移ると」


「交渉内容は……?」


 ミズガルズ王は、封筒の中に入っている文書を飛び出して、声に出して読む。


「ミズガルズ王国は以下の要求に従うこと。従わない場合、軍事力による実力行使に移るとする」


 ミズガルズ王に読み上げられた内容は、以下のものだった。



 一. ミズガルズ王国の首都、およびミズガルズ城を帝国に譲渡すること。

 二. ルビア・ミズガルズの身柄を帝国に移すこと。

 三. 帝国政府に対する敵対組織を解散させ、宣伝などの手段も禁止すること。

 四. ミズガルズ王国とヴァナハイム共和国の同盟関係を解消し、これを他国に示すこと。

 五. これらを速やかに実行し、帝国政府に知らせること。


「やはりというか……妥当な線ですね。最近助長している反帝国派の動きを鎮静化するため、最大派閥の我々を見せしめにするというところですか。ですが、いくつか不思議な点もありますね」


「バルドル殿……。今から話すのは、貴方が信用に足る人物だと思っているからこそ、話す内容だ。他言無用でお願いしたい」


 ミズガルズ王は、声を小さく、しかし非常に重い雰囲気で呼びかけた。

 その空気に押されて、バルドルも声を潜める。


「誓いましょう。あなたがこれから話すことは、誰の耳にも入れないと」


 その言葉を聞き、ミズガルズ王は深く頷いた。


「帝国がこの国を狙うのは、反帝国派だとか、トールが四魔将を倒したということが理由ではないのだ」


「それはつまり、この国を攻め落とすだけの価値がある。帝国には狙いがあるのですね? それをこの国が有している」


「その通り。この国にある、ある物が帝国にとって価値のある物だ。それを狙い、奪うために長年敵対しているのだ」


「そのある物とは……?」


 ゴクリ、と唾を飲む。


「詳細は話せないが、『()()()()()』と言えば伝わるだろうか」


「四本目……根……? …………ま、まさか!」


「その、まさかだ。それと、ルビアが深く関わっている。どこから漏れたのか、あの娘には不思議な能力がある。それを嗅ぎつけられたな」


 ミズガルズ王から語られる秘密に、バルドルは驚愕した。


「でもまさか、四本目が存在するとは……。それにルビア姫にも特別な力が……。私は長年、ルビア姫はその……非常に失礼ですが平凡な方だと……」


 バルドルの言葉に、王は苦笑する。

 間違ったことは言っていない、と思ったからだ。


「ルビアの力は限定的なものだ。それが無ければ、あの娘は少し優秀な学生で、魔法使いの見習いに過ぎない」


「ですが、帝国が狙うほどにほ価値があると」


「悔しいが、そういうことになる。正直、要求の中で本命は一番と二番だろう。あとはカモフラージュに過ぎないはずだ」


「そうだったんですか。では、この戦いは、この王都と姫を死守することが勝利条件ですね」


 バルドルの真剣な表情。

 それを見て、王は尋ねる。


「いいのかね? 帝国の狙いはこの国だ。ヴァナハイム共和国には一切関係がない。引くなら今のうちだと思うが」


「何度も言わせないでくださいよ、ミズガルズ王。我々は同盟、一方が危機に陥ればもう一方が力を貸すのは当然のこと。それに、トールさんへの借りを返す前にこの国が奪われては、立つ瀬がないですからね」


 バルドルが手を差し出す。その手をミズガルズ王が強く握りしめる。

 ここで、より一層同盟の絆が強く結ばれた。

 その傍で、ミズガルズ王は思案する。

 トール、この国の戦士。

 最強戦力の一人。抜けているところはあるが、誠実な青年。

 彼は今、どこで何をしているのだろうか、と。


 ◆


 ミズガルズ王の個室に、ティウが訪れていた。彼の後ろにはフレイとフレイヤの兄妹がついている。


「ティウよ、帝国の動きについてはもう分かっているだろう。後ろの二人も、説明を省いても構わんな?」


「はい」


「既にティウ団長に聞いています」


「うむ。なら、早速本題に入るとしよう」


 ミズガルズ王は、数刻ほど前にヴァナハイム共和国の代表バルドルに見せた、帝国からの手紙をテーブルの上に置いた。

 ティウが手に取り、兄妹にも見える位置で広げる。三人が文書に目を通すと、ティウの文書を握る手が震える。


「ずいぶんと……身勝手なものですね。帝国というのは」


「ティウ。お前なら分かっているだろう、やつらの目的を」


「やはり、嗅ぎつけてきましたね。いずれは知られることになるとは思っていましたが……最悪なタイミングだ」


「なあティウ。一体なんの話をしているんだ? ここに呼んでおいて、仲間はずれとは感心しないな」


 ティウはミズガルズ王の顔を伺う。

 王は、ただ頭を立てに1度、振っただけだった。それで返事となった。


「二人に帝国がこの国を狙う、大きな理由を話そう。ただしこれは、君たちがトールの友であり、この国を守る重要な戦士だと信頼してのことだ」


 ティウは、この国の秘密を二人に話した。

 四本目の根、ルビア・ミズガルズの能力――――その二つを。


 話を聞き終わった兄妹は、言葉を発せなかった。

 なんとか絞り出した言葉は、ただ唖然としたものでしかなかった。


「まさか、この国にそんな秘密があるとはな……正直、驚いた」


「ええ、本当に、驚きました……」


 額に汗。

 困惑と驚愕。

 兄妹は見るからに動揺している。この国の秘密は、それほどの内容だった。

 ティウは二人の様子を見ながらも、なおも言葉を続ける。


「事実を知って、なお協力してくれるかい? それともここで降りる? このことを一切口にしないのなら、部屋を出ていってもらっても構わない。決して君たちを恨むなんてことはしないと誓おう」


 もっとも、この事実を抱えたまま黙っているのは、爆発物を抱えて寝るようなものだ―――ティウはそう思った。


 机を叩く音がした。

 それはフレイが席を立ち、拳を叩きつけた音だった。


「舐めてもらっては困るな、ティウ! 俺たち兄妹はトールに借りがあるし、例え無くても友のためルビアさんのため、そしてこの国のために戦ってみせる。むしろ、戦う理由として申し分ないくらいだ!」


「そうですよティウ団長。以前立てた奇襲作戦はやり遂げます。この国も守ります。それが、私達のやるべきことだからです」


 フレイヤも席を立ち、兄の手を包む。二人の兄妹、豊穣神の意志が一つにまとまっていた。


「そうか。わかった、もう僕からは何も言わない。君たちの返事を聞いて僕も心を決めよう」


 ティウは腰の剣を掲げ、ミズガルズ王に語りかける。


「お聞きのように、我々の気持ちは一つです。この国を守る、ただそれ一点のみ。故に陛下、徹底抗戦です。それしかこの国が生き残る道はありません」


「よし、いいだろう。私も一国の主として、腹をくくろう。では、早々に帝国に返事を書かせるとしよう。貴国の宣戦布告、受けて立つとな」


 神樹暦七七七年如月の十一日。

 ミズガルズ王国は帝国の通告に対し、戦で応じる旨を伝えた。

 ここに、大陸最大の規模を誇る帝国と、それに拮抗する戦力を有するミズガルズ・ヴァナハイム同盟の戦争が始まった。

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