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その転移者、雷神につき 〜ボツヒロインのために、俺は異世界を救う〜  作者: taqno(タクノ)


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第42話 邪竜戦④ 決着、なのか!?

 爆風が吹き荒れ、砂埃が辺りを包む。

 風が弱まると次は水が溢れる。濁流が生まれ、足場を奪う。数十メートルも流されて、ようやく立ち上がる。

 フレイの魔法剣の威力、まったく大したもんだ。

 これほどの攻撃を受けたら、さすがに邪竜もタダじゃ済ままい。


 あれ、今フラグを建てたような気が……。

 いやいや、気のせいだ。フレイを信じようじゃないか。トラストユー。


「おぉ……土埃が消える……」


 その巨体を隠していた土埃が消え、太陽がその姿を晒す。

 そこには、胸に大きな傷が出来た、邪竜ファフニールがいた。


「やった! なぜだか知らんが、フレイの攻撃が通った!!」


 ファフニールの胸にできた傷は大きく、血が大量に流れている。

 その雫が地面に落ちると、大きな溜まりが出来る。人が数人浸かれるくらいのサイズだ。


「それにしても、何故俺の攻撃が効かなかったんだ? 理不尽なドラゴンだ、俺の攻撃を受けてフレイの攻撃を防げっての」


「器のちっさいやつだな。それよりも、やつの特性が分かってきたな」


「えっ!? マジで?」


「…………何を見てたんだお前」


 冷めた目で見られた。

 うるさいな、自分でもアホなのは自覚しとるわ。

 それにしても、フレイの今の攻撃で邪竜の特性が分かった? 一体なにを掴んだんだ。


 魔法剣でダメージを与えたこと?

 風・水属性でダメージが通ったこと?

 剣による攻撃が効いたこと?


 いやぁ、分からん。

 選択肢が多すぎる。

 三択まで絞れるけど、そこから一択を選ぶほどの情報がない。

 くそ、フィフティーフィフティーを要求する。もしくはオーディエンス。

 いや、テレフォンの方がいいか。繋ぐ相手はルビィ辺りで。正答率低そうだけど、会話するの楽しそうだからね。

 と、ふざけるのはここまでにしておこう。


「本当に分からないのか?」


「分からん。三つ可能性があることまではわかってるけどさ」


「なんだ、ちゃんと分かっているじゃないか。おそらくお前が考えている通りだよ」


「つまり……物理攻撃は耐性がない? いや、あの鱗だ、防御力もそれなりに高いはず。フレイの魔法剣の威力が凄かったんだな」


 フレイの攻撃は、あの強固そうな鱗も切り裂くほどの一撃だってことだ。

 じゃあ、考えられるのは。


「やつには風・水魔法の耐性がなかった?」


「正確には、雷魔法に対する耐性が異様に高いんだろう。それこそ、ほぼ無力化するくらいには」


「でもなんで雷魔法だけ…………いや、待てよ……そうか!」


 雷属性に対する耐性。

 それは、エタドラのあるキャラクターが持っていたものだ。

 そのキャラクターの名前はファーフナー。四魔将の一人、六章で戦うはずの武人。

 ファーフナーは地属性で、スキルに【電撃流地】という雷属性に対する耐性スキルを所持していた。

 当時装備していた武器が雷属性が付与された剣で、攻撃ダメージが無条件で八割減になったのを覚えている。

 その通った残り二割のダメージも、剣による物理ダメージ由来だ。つまり、雷魔法だと全ダメージ無効になるということだ。


 今俺の目の前にいる邪竜は、ファフニール。ファーフナーが魔物へと変貌した姿だ。

 ならば雷属性が効かないことにも納得だ。元の人間の特性が現れているのだろう。

 気付くのが遅かった。もっと早く気付いていれば、やりようがあった……いや、雷神がパワーアップしたせいで全ての魔法に雷属性が付与されるようになったから、結果は変わらなかったかもしれないが。


 雷神を使わなかったとしたら、雷属性のない魔法や物理ダメージは通るようになるだろう。

 しかし今度はフレイほどの一撃を出せる自信がない、という問題が発生する。

 この世界の俺の筋力値もかなり高いとは思うが、とてもやつを仕留めるほどの一撃が出せるとは思えん。


 なんだ、最初からこの勝負、俺の出る幕なんてなかったのか。


「おいトール、援護しろ! もう一度攻撃する!」


「あ、ああ……。雷神を解除しておくか。よし、【ギガ・エクス・プロミネンス】!」


 雷神を解除して放った魔法は、熱線による一撃、炎魔法によるものだ。

 熱線が通った場所に時間差で炎が走る規模の大きい魔法。薙ぎ払え! って言葉と共に発動したい技ランキング怒涛の一位だ。俺調べだが。


「GUAAAAAAAAAA!!」


「でかした! お前の魔法も少しだがダメージを受けるようになっている、おかげでやつの足も止まった!」


 フレイは炎の内側から邪竜に向けて走る。

 そして、再び剣に魔力を宿す。


「これで!」


 剣を高く構える。

 先程と同じ、青白い光が剣を包む。


「終わりだァァ!」


 剣を振り下ろす。

 その一撃は、邪竜の首を横薙ぎにし―――――


「させん……!」


「なに!?」


 フレイと邪竜の間に、黒い影が入り込んだ。

 音もなく現れた黒衣を纏った男。

 そいつはフレイと邪竜ファフニールの間に入り込み、フレイの必殺技である魔法剣を受け止めた。

 それは紛れもなく、見知った顔だった。四魔将の一人ロキだったのだ。


「闇ザコ!?」


「何者だお前!」


「これ以上、貴様たちに好き勝手やらせるわけにはいかないのでな」


 フレイは魔法剣を解除し、後ろへと距離を取る。

 闇ザコが剣を受けた際に爆風が発生していないことから、あの技は直撃させないとダメなのか。

 となると、あの強烈な風と水流にもダメージ判定があるんだな。俺はてっきり、直撃させた後の余波みたいなもんかと思ってたぜ。


 ただ、直撃していないとはいえ、邪竜に大ダメージを与えるほどの魔法剣をいとも容易く防ぐとは、やはり闇ザコの頑強さは脅威的だ。


 なぜ、やつがここにいるのか。

 なんの目的があって、割って入ってきたのか。

 ここで二対二になると、俺が本調子じゃない分こっちが不利になっちまう。

 どう出る、闇ザコ……。


「くっ、この仮面黒コートの男、俺の魔法剣を……!」


「魔法剣……確かに強力で、鍛え上げられた技だ。だが、今の一撃、私から言わせれば児戯に過ぎん。影で防ぐまでもない」


「なに……?」


 今、何て言った?

 影で防ぐまでもない……?

 つまり、今あいつはあのやっかいな影なんて使わないで、素の防御力だけで魔法剣を止めたって言うのか?

 マジか、ゴリラかよ……。

 その頑丈さを一ミリグラムでもいいから分けて欲しいね、スタントマンとして活躍してやるから。


「おいトール、あいつヤバイぞ……! はっきり言って、邪竜よりも厄介そうだ……」


「そんなの、俺が1番分かってるっての! あいつが何者か知ってるか、帝国四魔将の1人のロキだぞ!」


「よんっ……!?」


 フレイも突然のことで思わず言葉を飲む。


 そりゃそうだ。

 目の前の邪竜ファフニール……元は人間で帝国四魔将のファーフナー。

 それと先程までいた少年ビュウ・レイスト。

 更にこいつ、黒コートの闇ザコこと、ロキ。

 今日だけで四魔将の内、三人に遭遇しているんだ。そりゃ驚かない方がおかしい。


 っていうか、現れるなら同時に現れろっての。一々別々に登場すんなよ、仲悪いのかこいつら。


「ということは、こいつが雷神……お前が負かしたっていう、あの……」


「いやそれは噂が一人歩きしてるっていうか……実際は相打ちっていうか……ね?」


「なんだ、勝ったわけじゃないのか。…………じゃあ、この状況不味いんじゃないのか」


「うん。………………すごく」


 本音を言うと、凄くなんてもんじゃない。

 負けイベント戦レベルの無理ゲーだこれ。

 俺の攻撃は邪竜には通じない。

 だから必然的にフレイが相対することとなる。

 残った俺は闇ザコの相手をしなきゃいけない。

 だが、今の消耗した状態で闇ザコに勝てるかと言うと、無理だ。

 前回の戦いで、死に物狂いの捨て身の極大魔法でやっと倒せたのに、勝てるはずがない。


 本当なら今すぐ撤退を選びたいくらいだ。

 だが、今ここで俺たちが逃げたら、邪竜はヴァナハイム共和国を襲う。そうすると無辜の民が犠牲になってしまう。それは、避けなきゃいけない。

 当たり前だ、誰だって自分のせいで無関係な人々が死ぬのは気分が悪い。そうじゃなくたって、人が死ぬのなんて、見てられない。助けられるなら助けるべきだ。

 だから、負け確のこの状況でも、俺は立ち向かわなきゃいけないんだ。

 頑張るのは主にフレイだけど。


「ど、どうした闇ザコ。いっちょまえに仮面なんか新調して。オシャレのつもりか? お前には似合ってないぞ、まだパーティグッズの鼻メガネの方が似合うぜ。そ……それとも何か、俺にやられた傷がそんなに恥ずかしかったか? なら悪かったな、恥ずかしくないように全身に傷を浴びせてやるべきだったよ」


 俺のコンディションが悪いことを悟られないように、精一杯の挑発をする。

 これで少しでも闇ザコの気力を削ぐことが出来ればいいのだが……。


「赤刃の剣士……君の一太刀は素晴らしかった。もし今の一撃がファーフナーに当たっていれば、間違いなく死に絶えていただろう。……だから止めさせてもらった。四魔将を素体にした貴重な戦力だ、手放すのは惜しかったんでね」


 こいつ、無視しやがった……!


「弱点が分かった以上、このフレイがむざむざ逃すと思うか? 四魔将の戦力を削ぐまたと無い機会、取らせてもらうぞ!」


 フレイは即座に魔法を発動する。

 竜巻の魔法は闇ザコの周囲を囲み、身動きの取れないようにした。

 そしてその隙に、再び魔法剣を唱えて邪竜に斬りかかる。


 ……が。


「なっ! ロキとやらに魔法を発動している一瞬の間に、邪竜が消えた……!? どうなっているトール!」


「いや、俺はちゃんと見ていたけど、フレイが竜巻を発生させて、一瞬視界が見えなくなったと思ったら……既に」


 邪竜が、一瞬で、消えた。

 周囲を見回しても、その姿はない。また空に飛翔しているのかと思ったが、それも無いようだ。

 なら、一体どこに……?

 考えられるとすれば、いまここにいる闇ザコ。

 フレイも同じ考えに至ったんだろう。竜巻を解除して闇ザコに剣を向けた。


 闇ザコの表情は読めない。仮面をしているからとかじゃなく、棒立ちで、一切の感情が読めない。

 フレイの魔法に抵抗するでもなく、向けられた剣に対して構えるでもなく。

 ただ突っ立っているだけ。


「何を……したんだ」


 返事はない。


「邪竜はどこだ!」


 フレイの問いにも答えない。


「何とか言え、このっ……!」


 フレイが剣を振り下ろす。

 すると、剣はバターを切るかのように、スルリと闇ザコの体を両断した。


「これは……幻覚……?」


 フレイがもう一度闇ザコに剣を振るうが、よく見ると血が出ていない。

 確かに体は分断されているが、切り口からは黒い靄が出るだけだ。実体じゃないのか?


「正確には影だ。私そっくりのな」


 無口だった闇ザコから、ようやく言葉が発された。

 影……つまり、やつの能力の……。


「蛇や狼だけじゃなくなったのか……!」


 以前から影を使って様々なことをやっていたが、まさか自分の分身を生み出すなんて。


「今回は引かせてもらおう。ファーフナーも消耗しているしな。ではフレイといったな、また会おう」


「まて闇ザコ! 逃げるのか! 闇ザコ!!」


「安心しろ……貴様は近々殺してやる。じっくりとな」


 こうして、邪竜を討つことは出来ず、俺たちはみすみす逃してしまった。

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