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その転移者、雷神につき 〜ボツヒロインのために、俺は異世界を救う〜  作者: taqno(タクノ)


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第40話 邪竜戦② 極大魔法発動!

 四魔将ビュウが立ち去ったことで、再び邪竜が活動を始める。

 大きな口を開け、その巨体を最大限に活かした咆哮を放つ。その声だけで、辺り一帯は地震が起きたみたいな揺れが生じる。


「くそ、くそくそくそ! おいフレイ、こうなったら一刻も早くあの邪竜……ファフニールを倒すぞ!」


「しかし、何か策はあるのか? ブレスを防げはしたが、こちらの攻撃が通じるか未知数だぞ。あの鱗、かなりの耐久性がありそうだ」


「策はある」


 アイテムボックスから、瓶に入った緑色の液体を取り出す。


「それは……?」


「魔力を回復させる魔法薬……その上位版の上魔法薬。と思わせて、これは更にその上の極魔法薬だ。一本あたり五万ゴールド。ラストダンジョン近くの店でしか買えないから、俺のアイテムボックスにも九九本しかない貴重品だ。くくく……現代の日本円に換算して……約五〇万円っ……!」


「きゅうじゅうきゅ……!?」


「それを二本、お前に預けておく。あとこっちのオレンジ色のポーションと万能薬も」


 緑色の極魔法薬とは別に、オレンジ色の液体を取り出す。

 キラリと輝く、やや粘性のある液体。個人的にはガソリンを連想させる見た目だ。


「このオレンジの液体はなんだ? ポーションと言ったが、ポーションは青だろ普通」


「それはポーションの中でも最上級の一品、マストポーションだ。死んでない限り復活出来る……らしい。俺とお前用で二本な。持っててくれ」


「魔法薬も俺とお前の分ってことだな……。お前、最初から飛ばすつもりか」


「そういうこと。最初から全力で行かないと、手加減できるようなやつじゃないでしょーよ! 魔力切れで倒れたら、極魔法薬と万能薬を飲ませてくれ!」


 フレイは俺の元から離れ、後方に控える。そして、風魔法を駆使して邪竜の注意を逸らす。

 それでいい。それこそがベスト。

 ほんのちょっとでいい、邪竜ファフニールの注意を俺から剥がしてくれるなら、その一瞬を突く事が出来る。


 俺は、自身にありったけの強化魔法を施す。

 ボス戦でも滅多にやらない、本気のバフ祭りだ。


「【魔法強化(マジックブースト)雷属性(サンダーエレメント)】、【自己魔法・ものまね(セルフ・ミミクリー)】、【魔法耐性ダウン(マジックアレルギー)】、【連鎖魔撃(チェーンマジック)追爆(チェイス)破壊(デストラクション)】、【魔力(マジカル)上昇(サクリファイス)筋力犠牲(マッスルベット)】」


 様々な種類の強化が、全身を包む。

 それぞれ違う色を放ち、俺の身体を輝かせる。

 全てのバフがかかり終えると、俺の身体は薄い光を発していた。


 【魔法強化・雷属性】、これは次に撃つ雷属性の魔法を一発に限り強化する魔法だ。雷属性の魔法一回に限定しているだけあって、効果も中々に高い。


 【自己魔法・ものまね】、通常の【ものまね(ミミクリー)】は敵または味方が直前に使った魔法を再現するものだが、俺が使ったものは自身が次に使う魔法を自動的にもう一度撃つといった魔法だ。これにより、素早く二連発出来るというわけだ。


 【魔法耐性ダウン】は名前の通り、敵の魔法耐性(魔法によるデバフのかかりやすさ・魔法防御力の両方)をダウンする。これは便利な魔法だが、エタドラだと“魔法耐性をダウンする”というデバフを付与したいのに、相手の魔法耐性が高ければ無効化されるというよく分からない処理がされる。

 この魔法自体がデバフだから弾かれるってことらしい。

 それはこの世界でも同様で、魔法耐性が元々高い相手には無効化されるだろう。

 だが、この魔法を唱えた瞬間にファフニールの体が鈍く青い光に包まれたのを見た。この魔法は無事通じたようだ。


 【連鎖魔撃・追爆破壊】は、敵に魔法ダメージを与えた際に追加ダメージを与えるものだ。追い打ちに適した魔法だ。

 エタドラでは主に、敵のHPを削りきれなかった時の保険や、魔法職のプレイヤーが毎ターン魔法で攻撃する場合の火力の底上げに使用されていた。


 【魔力上昇・筋力犠牲】も名前から分かるだろう。これは一定時間の間筋力値を下げる代わりに、魔力を上昇させる。エタドラではちからを三〇%ダウンさせ、まりょくを三〇%アップしていた。


 これほどのバフが加われば、俺の魔法はかなり強化されているに違いない。

 だから出し惜しみなんてしない。この邪竜が人のいる街に行かないように、ここで食い止める。

 犠牲になった、この村の人々の無念のためにも。ここで。


「いくぜ、これが俺の最強奥義! 強化された極大魔法を見ろ! 【ファイナル・ジゴ・フェノメノン】!」


 先ほどまで青空だった空一面が、一瞬にして落雷に満たされる。それは魔力で生まれた雲。その雲の全ては、雷を落とすために生み出された。

 集まった雷雲の内部が、ピカリと光る。


 その瞬間。

 白雷が天から落ちる。

 それは一瞬で黒い巨体に直撃した。

 白雷が発生し、ファフニールに当たった瞬間、同じ雷がもう一発落ちてくる。

 そして、ファフニールの足元に赤い魔法陣が展開され、そこから巨大な爆発が巨体を飲み込んだ。

 破壊力としてはファフニールの【イービルブレス】よりも遥かに上。

 およそ人が生み出せる力としては限界を超えていた。


 だが、この破壊の一撃こそ俺が放ったものだった。


「【雷神】発動状態で強化して放った極大魔法だ! 闇ザコでさえ一撃で倒せるだろう一撃だ! ざまあみろハハハ……っ!」


 唱えた魔法が全て発動をし終えると、全身の力がゴソリと抜け落ちる。

 ああ、魔力がもう殆ど無い。

 それに極大魔法を撃った後遺症が。


「こりゃ……はやくフレイに、極魔法薬……あと万能薬を飲ませてもらわなきゃな。男から飲ませてもあるのは、正直趣味じゃないんだけど……。もっとも、今のでファフニールが死んでれば急いで飲む必要はないんだけどさ……」


 そして、爆発が収まり土煙が消える。

 そこにいたのは、

 邪竜の死体、


 ではなく。


 わずかに血は出ているが、戦闘に支障は無い様子のファフニールがそこにいた。


「嘘……だろ……」


 あれほどの一撃を受けて、ただの負傷で済んだだと?

 闇ザコにとどめを刺した時と比べて、圧倒的な破壊力があったはずだ。

 少なくとも【自己魔法・ものまね】で二発目を撃ったし、【連鎖魔撃・追爆破壊】で追加攻撃もした。

 強化魔法だって、あの時よりも入念にしておいた。最低でも二倍、三倍のダメージはあった。


 なのに、軽傷。

 極大魔法の効果により邪竜も麻痺しているが、すぐに効果が切れるだろう。

 攻撃した側の俺が、魔力切れと極大魔法の副作用である強制麻痺(スタン)で地面に倒れている始末。


「ふ……フレイっ! はやく魔法薬を……極魔法薬をくれっ……! やばい……っ」


「わ、わかった!」


 フレイは急いで駆けつけて、俺の口に極魔法薬を注いでくれた。

 う、マズい。ケミカルジャスミン茶こと万能薬が美味しく感じるレベルだ。


 続いて万能薬を口にする。

 体の痺れは多少軽くなった。しかし、元々この麻痺状態はエタドラでは【クリア】系魔法で解除できなかったように、この世界でも麻痺の効果は強かった。

 なんとか自分の足で立てる程度には立ち直ったが、全身に疲労と痺れが残る。とても万全とは言えない。


「うっ……ふう。よし、魔力がかなり回復した。痺れが残っちゃってるが……なんとかする。しかし厄介だな。俺の考えられる限りの全力の一撃を、あの程度で済ませるなんて」


「ああ、俺が見てもあれは神と名乗るのに相応しい一撃だった。だのに、多少血を流す程度ってヤバイな」


「フレイ、お前の風魔法でどうにかならないか? 正直、俺にはこれ以上の策は思いつかない」


 フレイは思案する。

 単純な魔法攻撃ではダメだった。ならば、何が有効なのか。

 俺に分からないことでも、フレイなら分かるかも知れない。なんてったって、豊穣神なんだから。こう、いいアイディアが訪れたりしないもんか。


「そもそも、あれは魔法防御力が高いのか。それとも他の要因があるのか気になるな」


「他の要因って?」


「あの鱗だ」


「あの、黒くて刺々しい鱗が? 何か特別なものだったり?」


 俺の疑問に、フレイは首を横に振る。否定、というよりは分からない故のものだった。


「思いついたことを言っただけだ。ひょっとしたら、他の何かがあるのかも知れない。それこそ【スキル】とかな」


「スキル……。魔法のダメージを半減するとかいう敵はエタドラにもいたな、そう言えば。それなら、強化魔法をかけまくっても思ったよりダメージが伸びないのも頷ける。でも、極大魔法はそういった耐性を無視できるはずだが……」


「その極大魔法の効果よりも、更に強力なスキルがあるかもしれない。例えば、極神スキルのような特別なスキルがな」


 そうか、あの防御力は何なのか分からなかったが、フレイの言うスキルというのは盲点だった。

 今まで戦ったモンスター……魔物はスキルなんて持ってないやつらが主だったし、そもそも魔物がスキルを使うっていうのが頭から抜けていた。

 だが強力な魔物はスキルを持っていることが多い。ボスなら尚更だ。それはエタドラでもこの世界でも同じというわけか。


 じゃあ、エタドラのボス戦でたまにある“解除不能バフ”のようなものがある可能性が高い。

 プレイヤーの使う汎用スキル・魔法じゃどうにも出来ないものが。


 では、この考えが正しいとするとファフニールはなんらかのユニークスキルで魔法攻撃が効きにくい状態になっているってことだ。

 それは少しずるくないか? こっちは魔力を使い切ってまで、あの一撃に賭けたのに。


 まぁ、ゲームでも初見だと攻略情報を知らずに詰むボスなんかもいるわけだが。この世界はゲームじゃないし、その詰んだ状況が来たらそれは死を意味するわけで。

 だからこそ、さっきの俺の行動は軽率だったと言えるかも知れない。


 闇ザコ戦で極大魔法を出し惜しみして状況が悪くなったことを反省し、今回は初手で全力を放った。

 しかし、結果は今の状況である。相手の手札も読まずに、こちらの手の内を明かしてピンチに陥るなんて勝負の駆け引きとしては最低もいいとこだ。


 俺の手札は使い尽くした。ここからは、フレイに任せたほうがいいだろう。


「フレイ、俺はさっきの魔法の影響で不調だ。こっからはお前の支援に回る。頼めるか?」


「お前、俺にあの邪竜を相手にしろって言うのか? 無茶言うなよ」


 当然だろう。

 俺だって頼まれたら首を横に振る。誰が好き好んであんなバケモン相手にするか。そんなやつがいたら自殺志願者かマゾに違いない。

 当然、フレイも断るだろう…………、と思っていたが。


「分かったよ、引き受けてやる」


「……えっ?」


「あれを放っておけば首都に行くんだろう? 俺たちの、父さんと母さんの家のある街に。だったら止めてやる。ここで倒してやるさ、俺の手で」


「ま、まじかよ。言っとくけど、あいつかなり強力だぞ。魔力量だけで俺たちを合わせた倍はある。持久戦に持ち込めもしないし、やるなら真正面から勝つしか無いんだぞ」


「分かってる。それでもやるさ」


「フレイ……」


「そのかわり、しっかりサポートしてくれよ。まだミズガルズ王国のレディ達を拝めてないんだからな」


「はは……そんな軽口がきけるなら大丈夫そうだな。よし、やってやるぜ! この俺雷門透様の超絶サポート能力を見せてやる!」


 回復した魔力を全身に走らせる。

 一方フレイは手を突き出し、邪竜に対し魔法の準備を整える。

【豊穣神】フレイの本領発揮の時が来た。

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