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第111話 4人の半魔のひぐらし

「グルルルルァァァァ!!!!」


「おージャイアントワイバーン……竜種の中でも凶暴な種」


「こんなところにジャイアントワイバーンが出るなんて珍しいわね。普通は渓谷を住処にしてるはずだけど」


「そんなことどーでもいいじゃない! ねぇ、あいつを仕留めるの私にやらせてよ! 久々に手ごたえのありそうなモンスターが出てうずうずするわ!」


「ヒータ、熱くならないで。ジャイアントワイバーンは竜種の中では下等種だけど、パワーだけならドラゴンにも劣らないわ。舐めてかかると痛い目見るんだから」


「へん! びびりなフーちゃんはそこでおとなしく見てな! いくぜオラー!」


「ああ、もうっ!」


ヒータは私の忠告を聞かずに飛び出していった。

空中に飛んでいるジャイアントワイバーン相手だと、自分の方が不利だって分かってるのかしら。

まぁ、ヒータは不利な状況を楽しむタイプだからこの状況は好ましいのかもね。全く、バトルジャンキーの考えることって理解できないわ。


「オラオラオラァ! あたしの拳が真っ赤に燃えるゥ!」


「グシャアアア!」


「うおっと! へへ、尻尾を叩きつけただけで地面が割れるとかすこいパワーね。確かに力だけはドラゴン並みかも。でも……!」


ヒータは拳に纏った炎を増大させる。轟々と燃える炎は次第に勢いを増す。

そして、


「いっくわよーー!」


両手の炎を後方へ向けることで、ヒータの体は前方へと吹き飛んだ。

そして、吹き飛ばされたヒータは手の向きを調整して姿勢を制御していく。


無茶苦茶だわ……あんなので空を飛ぶだなんて……。

あれじゃあ、風魔法を微細にコントロールすることで竜巻を制御し、そうしてやっと飛ぶことが出来る私がバカみたいじゃない。

……ごり押しなんてみっともない。

私の浮遊の方が優雅だわ、うん。


「くらえーーーー!」


「グギャアア!」


勢いを付けた状態でのアッパーカットが、ジャイアントワイバーンのあごに突き刺さる。

それは脳震盪を狙うなんて生易しいものではなく、確実に殺すための一撃だった。


なにせ、攻撃を受けた直後にジャイアントワイバーンの顔は吹き飛んだのだから。


「っしゃー楽勝!」


「ヒータすごい」


「やりますね。ですが新技は隙が大きすぎて魔物相手でもないと通用しないでしょう。それに、攻撃の際にああも大声を出しては、せっかく相手との体格差を活かした死角からの攻撃に意味が……」


「固いこと言わないでよリン。ほら、こうして肉も手に入ったんだしお小言はなしよ。じゃないと、あんたの晩飯、肉抜きだから」


「……わかりました。指摘するのはまたの機会にしましょう」


「へへへ、なんだかんだあんたも肉好きなのね」


「もちろんです。お肉は体力を回復するのにうってつけですから」


コホン、と恥ずかしそうにリンは咳払いをした。


「とか言いつつ、リンは肉が出る日に限ってはしゃいでる」


「さ、サン! 嘘をつかないでください! べ、別にそんなことないですから!」


「へー、じゃあリンの肉は少なくてもいいんだー」


「そんなわけないでしょう!!!!」


リンは完全にヒータとサンにからかわれている。

真面目なリンだけど、どこかズレてて、そこを面白おかしく二人がいじる。

この光景を何度も見た。


「今日は丸焼きにして食おうぜー」


「いいえダメです。ワイバーンのお肉と言えば臭みが強いことで有名です。ここは薬草をすりつぶしてからお肉に練りこんで……」


「わたしはハンバーグー」


「丸焼き!」


「香草焼き!」


「ハンバーグー」


はぁ…………。


「「「フー!!!」」」


「何ですか三人して」


「「「おあんた(フー)はどう食べる!?」」」


リン、ヒータ、サン。三人とも凄い形相で私を見てくる。

そんな顔、ミズガルズ団の隊長たちと戦った時でさえ見せたことないんじゃない?


これがかつて、四魔将ロキ様の忠臣と恐れられたシャドウズの姿か……。


悲しいを通り越して、笑っちゃうわね。


「「「フー!!!」」」


「分かったわよ……。じゃあ、ステーキで」


丸焼き、香草焼き、ハンバーグとまるで違う要望の折衷案としてはステーキは妥当なところだろう。

これなら多少文句はあっても三人とも納得してくれるはずよ。

こんなくだらないことで言い争いするなんて馬鹿らしいって気付いてほしいものだわ。


私の意見を聞いて三人は顔を見合わせる。

そして、三人は満面の笑みを浮かべる。


分かってくれたみたいね。


「「「ステーキはないわ」」」


「あんた退全員そこに座れぇ!!!!」


こいつらに噛み応えのあるステーキの素晴らしさを拳で叩きこんでやる!!


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