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第110話 5章プロローグ

「ぐへへへへ、おいお前有り金全部置いてきな。金目のもんも全て出せ。隠してたりすると痛い目みるぜ」


「ひっ……だ、誰か……誰か助けてーー!」


「無駄無駄、この通りは森のど真ん中だ。誰も助けになんて来ねえよ」


 盗賊たちが馬車に襲い掛かり、乗客の女を脅していた。

 御者は首をはねて倒れている。切断面から、安物の剣を力任せに振るったものだと分かる。

 剣の技量はお世辞にも褒められたものではなかった。


 しかし、女にはそんなことは関係ない。

 目の前で人が殺された。そして次は自分が狙われている。

 命の危険を前にして、恐怖でどうにかなってしまいそうだった。


 森の中の人気のない通り道で、罪のない人間の命が奪われようとしている――その時だった。


「待てい!」


「む、誰だ!」


「俺か? 聞いて驚け、俺こそはミズガルズ王国に仕える百戦錬磨の勇士、雷神様だぜ!」


「な、なんだと!? お前が帝国の四魔将を倒したっていうあの!?」


「アニキ! あんなのハッタリっすよ! 本物ならこんな場所にいるはずがねぇ! やっちまいましょうぜ!」


「お、おう! どうせこんなやつ偽物なんだ。おいお前ら、かかれー!」




「ふう、終わった終わった。大丈夫ですかお嬢さん」


「ありがとうございます! 本当に助かりました!」


「いえいえ。困っている人を助けるのは当然のことですから」


「あの……これは少しばかりのお礼なのですが……」


 女は金の入った袋を取り出し、男に渡そうとした。

 しかし、男は断った。善意で行ったことだから謝礼はいらないと。

 だが、女は無理やり押し付けて男に袋を受け取らせた。


「では、私は村に戻ります。馬車がなくなって心もとないけど、今から歩いて昼には着くはずなので」


「それはいけない。どうでしょうお嬢さん。私が村まであなたをお守りしましょう」


「まあ、本当? とても心強いわ。ではお願いしようかしら。お礼に村に着いたら盛大にもてなして差し上げますわ」


「それは楽しみだ。では参りましょう」



 神樹暦七七七年、水無月のある日。

 とある小国の北西の森で、盗賊の出現が相次いだ。

 そして、盗賊に狙われた人を助ける雷神と名乗る男が現れたのも同時期だった。


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