表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/120

プロローグ

 月夜の下、色とりどりの花を咲かせる庭園の中、俺は少女と手を取り合っていた。

 この世界には俺と彼女、二人しかいないと錯覚するほど、静かな空間だった。


 俺はこの光景が信じられない。今でも夢じゃないかと疑っている。


 元々オタクとして過ごしてきて、青春らしいイベントなんて何も起きなかった。

 少なくとも、異性と手を取り合うなんてありえなかったのだ。

 だが、今こうして目の前にはルビィがいる。俺よりも少し年下の、小さくて可愛らしいお姫様だ。


 彼女は震える手で俺の手をぎゅっと握り、潤んだ瞳で見つめてくる。月明かりに照らされて、瞳は宝石のように輝いている。


 人形のようだ―――そう感じてしまう。


「あのね、とおくん……」


 鈴の音のような優しい声。ルビィが俺の名前を口ずさむだけで、多幸感に包まれる。

 彼女の顔は、いつも自慢する絹のように透き通る茜色の髪と同じくらい赤く染まっている。

 緊張しているのは彼女も同じらしい。


「私の……私の騎士になってください!」


 このミズガルズ王国の王女である彼女に、俺はそう告白された。


「ルビィの騎士……」


 少女の口から出た言葉を、噛みしめるように繰り返す。


 俺みたいなゲーマーが、ルビィのような美少女と親密な仲になるなんて、半年前には想像も出来なかった。

 異世界に来る前、そう、あの時だ。

 もしあのゲームをやっていなかったら、俺はきっと、彼女と出会うことさえ出来なかった。


 すべての始まりは、半年前まで遡る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ