オーク
「あら?お嬢ちゃんがアタシの相手をしてくれるのかしら?子供を手にかけるのは気が引けるけど、敵とあらば容赦しないわよお!」
その体の大きさ通りの巨大な拳による地面を削るようなアッパー。
それを懐に潜り込んで回避をしながら、脇腹に鉄棒で連撃を与える。
「ふん、その程度かしら」
もちろん効くとは思ってない。
体格、筋力共に格上である相手に対しては馬鹿みたいに殴るだけでは勝てるはずが無い。
「ほらほら、逃げてるだけじゃ倒せないわよ!」
避ける、避ける、ただひたすらに避け、その合間に微小ながらダメージを与える。
すると次第にオーク女の額には青筋が浮き出てきて、その顔も怒ったような顔に変わっていく。
早く仕留めようと躍起になって、数でゴリ押そうとスタミナを多く消費し始める。
「ブフーッ!ブフーッ!舐めんじゃないわよ!ぶっ殺してやるわ!」
予想通り、短時間で息を切らし、鼻息荒くこちらを睨んでいる。
オーク女は俺を捕まえようと無防備に突進してきた。
チャンスだ。
俺は闘牛士のようにオーク女を飛び越え、その首に捕まった。
鉄棒で気道を絞め上げる。
「カッ…!ぶ、ぐ!」
オーク族の首は筋肉で太くなっていて相当硬い。
そのため、気道を潰すのも一筋縄では行かない。
全身の力を鉄棒に込めてがっちりと固定する。
しかし、暴れ牛のように走り回るオーク女は、背後の俺を落とそうと背中を壁に叩きつける。
クソ痛いが、もう少し耐えれば…!
締め始めて1分が経過。
フラフラと壁にぶつかり、そのまま膝から崩れた。
「ふぅ…」
トドメに息をしていないオークの動脈に鉄棒を刺した。
これでしばらくしたら大量出血で死ぬ。
よし…俺の勝ちだ。
ーーーーミーナ視点ーーーー
「…ん、下が騒がしいですね」
「ですにゃ。窓が割れた音にゃ?」
「それだけじゃなさそうです。隣の部屋のディードと見てきます。先輩を頼みますよ、ミーナちゃん」
「…了解にゃ、お気を付けてにゃ」
魔王様が部屋から出た。
1階からガシャガシャと割れる音や、何かが暴れているような物音。
そして緊急事態のブザーが鳴り響いている。
万が一ディード様の筋肉だけではどうにもできない相手でも、魔王様の権能を使えば何であろうと命令を聞かせることが出来るから安心だ…なのに、何故か嫌な予感がする。
コルネちゃんも1階の食堂に行ってるから心配だし…
ガシャアン!
「ひっ!?」
この部屋の外、廊下の窓が割れた。
ドンドンドン!
ドンドンドンドン!
鍵を閉めていたドアがミシミシと揺れる。
拳で叩く音と言うより、何かが衝突するような音。
「だ、誰か…!」
ベッドの隣に備え付けてある緊急事態用の装置を作動し、護身用のナイフを取り出した。
装置のおかげで直ぐに誰かが駆けつけてくれるはず。
「ふぅ…落ち着いて…」
深呼吸、そしてユウキ様との訓練を思い出そう。
何が相手でも数分間なら耐えてみせる。
扉の耐久力もそろそろ限界みたいだ。
私は立ち上がり、ナイフを構えた。
バリ、バリ、と木製の扉が破壊され、入ってきたのは1匹の獣だった。




