痣
「………」
「先輩、お疲れ様でした。それと、ごめんなさい…」
「…大丈夫だ。ああ、大丈夫…大丈夫だ…」
無事にヒューズ国への護衛を済ませ、馬車から転がり落ちた。
幸いにも行き帰りどちらともトラブルはなく、平和に帰ってくることが出来た…体調以外は。
ヒューズとの、同盟?なんだっけ…そういうのを結び…えっと…くそっ、頭が回らねえ…
「先輩、流石に馬車酔いでここまでなるのはおかしいと思うのですが…」
「奇遇だな…俺も、そう思ってたとこだ…」
酔い止めが無くなって気がついたが、馬車酔いが始まったコラル国の帰りに比べて、明らかに数段悪化している。
視界が歪んで、まともに歩けない。
壁に寄りかかり、息を整えようとしても、まともに息が出来ない。
「…い!せん……!」
ツムギが何かを叫んでいる。
あれ、足に力が入らねえ。
あ…これ、やばいやつだ。
「先輩!先輩っ!しっかりしてください!」
突然膝から崩れ落ちた先輩を抱き上げ、声をかけてみるが反応は無い。
「衛兵!医務室に行ってメレスを連れてきてください!」
「わ、分かりました!!」
先輩のおでこは触ってわかる程の高熱を発していて、息も荒い。
やはりこれはただの馬車酔いではない。
他にも原因があるのだろう。
「魔王様!ユウキ君をここに!」
担架を持ってきたメレスとその部下。
私は先輩を担架に乗せ、医務室へと向かった。
「…高熱以外に異常が見つからない。魔力の乱れも無し…本当にどうしちゃったんだい、ユウキ君」
命に関わるような高熱でも無いため、ひとまず安心ではあるが…問題は目を覚まさないことだ。
ベッドで寝かせているユウキ君の汗を拭いた。
魔王様には命の危険は無い、と伝えて仕事に戻ってもらったが、あの様子だと仕事に手をつけても集中とかできないだろうなぁ…
「メレス様ー、お着替え持ってきたにゃー」
未だに外出用の服を着ているユウキ君の為にミーナちゃんにパジャマを持ってくるように頼んでいたのだ。
「…やっぱり起きないにゃ?」
「うん…気付け薬とか嗅がせてみたけど効果は無し。静かに眠ってるよ」
「心配だけど、とりあえずお着替えにゃ」
「そうだね、僕も手伝うよ」
ユウキ君の上着のボタンを外し、一旦起き上がらせてから上着を脱がせた。
下着も脱がせ、いつ見ても惚れ惚れするような白い肌に流れている汗を濡れタオルで拭き……ん?
「あれ?ユウキ君の首元…こんな所に痣なんてあったっけ?」
「どれにゃ?…うーん、少なくともミーは見たことないにゃ…」
戦場から帰ってきたユウキ君を診た時は確かに無かった奇妙な形の痣。
護衛任務も特に戦闘があったとは聞いてないし…
というかこの痣の形、どこかで見たような…
「…まさかっ!お母様!来てください!」
汗を拭くのをミーナちゃんに頼んで、僕は本棚に向かった。
確かこの辺に…あった!
僕が手に取った本は、悪魔関連の本である。
「どうかしたのか?」
「これを見てください!」
手に取った本のとあるページには、ユウキ君の首元にある痣にそっくりな紋章が載っていた。
これは悪魔が自身を証明する時に使う紋章であり、この紋章が表す悪魔は…
「月の悪魔…」




