闇
気管支炎になって咳が止まらぬ…
エメラ視点でふ
「精霊さんっ!!」
ジェスチャーで合図を送り、強力な光で目くらまし。
一瞬怯んだ獣の悪魔の眼球に鎌を突き刺す。
ユウキは無事だろうか。
彼は私のせいで目の前で噛み砕かれた。
普通の生物なら死んでるかもしれないけど、なんせ神の体だ。
何かが気に食わなかったのか、どこかに吐き出されてたし、魂が呪いに溶かされる前にネム様の所に連れていったらまだ助かるかもしれない…
だから…!!
「早く、死んでよおおお!!」
突き刺した鎌をさらに奥深くへ押し込む。
『オオオオオオォォォ!!!』
「はあああっ!!」
鎌を引き抜き、顔を真っ二つに割る。
しかし、油断はしない。
「精霊さん!やっちゃって!!」
発光する精霊の束が潰れた目に突き刺さり、頭の内部で爆発を起こした。
頭が消失し、動きが止まった。
「はぁっ、はぁっ!!」
まだ、まだ死んでいない。
精霊さんが小さな鼓動を確認している。
「おー!もう終わったのか?」
「やるじゃないか、エメラ」
やってきたのは、アンソルスとヘイル。
2人とも小型の獣に手間取っていたのか、服の所々が破けていたりする。
「2人とも、こいつは死んだフリとかで油断を誘ってから、一瞬の隙をついて攻撃してくるの。そしてまだ死んでない。心臓が動いてるから」
「ふむ…獣らしく狡猾であるな」
「…ところで、ユウキはどうした?」
「…わかんない。死んじゃったかも、しれないけど…っ!!」
横から飛び込んできた小型の悪魔を切り裂き、残骸を蹴飛ばす。
「とにかく!確認するにしてもまずは倒さなきゃ!」
私がそう言うと、獣の悪魔の破壊したはずの頭部が煙を発しながら復活し始めた。
もう!いつになったら倒せるの!
『ォォォオオオオオオン!!』
叫びながらその大きな腕を振り下ろした。
私は大鎌を構えて防御を…
「おらぁああっ!!」
『グギッ!?』
復活しかけている頭に振り下ろされたのは見覚えのある大槌。
「ディードっ!」
「おう!今度は油断しねえからな!」
「エメラ様!自分が全力でフォローするから、大暴れして下さいであります!」
「それじゃあ私達は周りの小型に専念しよう。行くぞ、アンソルス」
「うむ。こっちは任せておけ」
「皆…うん、行くよ!」
ディードと2人で獣の悪魔へと武器を振り下ろした。
「はぁっ…はぁっ…まだ、死なないの?」
「畜生、そろそろ腕が痺れてきたぜ」
「こっちもキリがないぞ!」
「自分もそろそろ魔力が…」
遠くの空は明るくなり始めており、日が登ろうとしている。
早く仕留めないと、朝が来てしまう。
朝が来たらきっと、次の夜までどこかに行ってしまうかもしれない。
今日中に仕留めないと、被害が増えてしまうだろう。
「え…は?」
「どうしたの!?…え?」
なにかに気がついたディードの目線を追うと、路地裏の方にひとつの人影。
暗くてよく見えないが、小さな背丈に長く伸ばした髪。
見覚えのあるその姿は…
「ユウキ、殿…!?」
「よかった、生きてた!!ごめんねユウキっち…ちょっ、何すんのディード!」
駆け寄ろうとした私の肩を掴み、強引に止められた。
「よく見ろ。様子がおかしい」
「…赤くなってる、であります」
「え、えっ…赤くなってる?」
…本当だ。
綺麗な琥珀色の目が、今は赤く光っている。
ふらふらと揺れながら、じーっとこちらを見つめるその姿は、確かに普通ではない。
そういえば、獣の悪魔が全く動かない。
ユウキ(?)を睨んだまま、動きを止めている。
『ーーーー!!ーーーー!!!』
『…ーーー…ーーー』
獣の悪魔が何かを叫ぶとユウキ(?)はそちらを向き、嘲笑を浮かべながらそれに応えた。
「え、なに、何?」
「何か言ってる、のか…?」
「なんと…ユウキは悪魔の言葉を使えるのか?」
声を聞いていたアンソルスが冷や汗を垂らしながらそう呟いた。
悪魔の言葉…?
『ーーー!!』
『…ーーー。ーーー!!!』
ユウキ(?)が何かを叫ぶと、街頭の光や朝日すらも隠す、大きな闇が私たちを飲み込んだ。




